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アルマロスinゼロの使い魔

作者:蜜柑ブタ
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第二十一話  屍のウェールズ

 
前書き
原作とオリジナル入り乱れ。

アルマロスがネザー化します。 

 

 アルマロスは、外へ出るなり、半透明の翼を出して空へ舞い上がった。
 ルイズは、タバサに頼みシルフィードに乗せてもらって追いかけた。
 たまたまタバサと一緒にいたキュルケもなぜか一緒に来た。
「アルマロス! 待って!」
「ねえねえ、何? 今度は何が起こってるわけ?」
「姫殿下に危機が迫ってるのよ!」
「ええ?」
 キュルケは、信じられないと声を上げた。
 アルマロスは、後ろを気にせず飛んでいた。
 ズキズキと胸が痛むがそれどころじゃない。
 夢の中で見たウェールズの訴え。
 間違いなく、彼は…。
 やがてラ・ローシェルへ向かい走る馬の一団を見つけた。
 その中に、黒いローブでくるまれたアンリエッタを見つけた。
「フォォォォォォォオオオオオオン!」
 アルマロスは上空から降下しながら叫び声を上げた、その叫び声に馬の一団が顔をアルマロスの方に向けた。
 弓矢や魔法が飛んで来るよりも早く、アルマロスは、ガーレを飛ばし、馬の一団を射抜いていった。
 先頭を、アンリエッタを抱えて走る者がいる。そいつを狙って、アルマロスは、宙を舞いながら迫った。
 そいつがくるりと顔を向けた。
 その顔を見てアルマロスは、目を見開いた。
 次の瞬間、凄まじい竜巻がアルマロスを襲い、風にあおられたアルマロスは、翼を消されて吹き飛ばされた。
 しかし、吹き飛ばされながらガーレを飛ばし、馬を射抜いた。
 馬から放り出されたその者は、アンリエッタを草原に転がし、自身は体制を整えた。
 頭につけていたローブが外れ、顔があらわになる。
「フォォォオオン!」
 アルマロスは、叫んだ。

 ウェールズ!っと。

 そう、その人物は、死んだはずのウェールズその人だった。





***





「うそ…、あれは、皇子…、ウェールズ皇子!?」
「えっ、あの凛々しい皇子様? でもその皇子様って…。」
「あの人は、アルビオンで…!」
 ルイズの目の前でワルドに殺されたのだ。
 それなのになぜここにいる?
 ルイズは、ふいに先日の水の精霊の件のことを思い出した。
 アンドバリの指輪。死んだ者を蘇らせる力を持つマジックアイテム。
「うそ……、そんな…そんなことって…。」
 ルイズは、わなわなと唇を震わせた。
「見て!」
 キュルケが叫んだ。
 アルマロスのガーレで撃たれ、倒れていた兵達が起き上がり、アルマロスを囲んだ。
「まさか!」
 あの兵達の傷では動けるはずがない。なのに平然と動いている。
 それはまるで…。
「人形。」
 タバサが呟いた。


 アルマロスは、ガーレを構えたまま、ウェールズと対峙していた。
「やあ、堕天使君。僕を止めに来たのかい?」
「フォオオン…。」
「相変わらずまともに声を出せないようだね。難儀なことだ。」
 ウェールズは、微笑んでいる。その微笑みに邪悪な気配を感じるのは気のせいじゃい。
 周りにいる屍の兵士達とは違う。ウェールズだけは、何かが違う。まさかあの氷の堕天使が?っとアルマロスが考えていると、屍兵士達が飛び掛かてきた。
 アルマロスは、歯を食いしばり素早くアーチに持ち帰ると、屍の兵士達を切り裂いた。
 身体を半分にされても動いている彼らを完全に“破壊”し、偽りの命から解き放った。
「フォォォォン!」
「ふふふ…。さすがだ。だが辛そうだ。ずいぶんと君の命は削れてしまったんだね?」
「…フォォォン。」
「関係ない、だって? 君が死んだら、君の主人が悲しむだろう。そうは思わないかい?」
「……。」
 そう言われるとなんとも言えず、アルマロスは押し黙った。
 その時、アルマロスに向けて、水の波が襲って来た。
 いつの間にか起き上がっていたアンリエッタがアルマロスに杖を向けていた。
「フォオン!?」
「とまりなさい、堕天使!」
「!」
「ウェールズ様を殺そうとしておいて、よくも顔を見せることができましたね!」
 アンリエッタは、怒りと悲しみの表情を浮かべていた。
 アルマロスは、ウェールズを睨んだ。
 どうやら屍のウェールズがアンリエッタに嘘を吹き込んだのだろう。だが堕天使だという事実はあえて隠していたことだ。指摘されても何も言い返せない。
「お待ちください、姫様!」
 ルイズがシルフィードから飛び降りて叫んだ。
「ルイズ・フランソワーズ! なぜ彼が堕天使だということを黙っていたのです!」
「ちが…それは……、アルマロスは、確かに堕天使です。ですが、違います! 彼は、私利欲望のために堕天したのでありません!」
「おだまりなさい! ウェールズ様には指一本触れさせません!」
「姫様! その皇子は偽物です! あの方は死んだのです、そこにいるのは、本物ではありません!」
「僕は確かにウェールズさ。」
「えっ…。」
「この通り。胸の傷はない。」
 そう言ってウェールズは、あの時ワルドに貫かれた箇所。胸の部分を見せた。そこには傷はない。
「あの時死んだのは、僕の影武者さ。」
「でも…。」
「騙すならまずは味方から。そう習わなかったかい?」
「それは…。」
「フォォオオン!」
 アルマロスが、騙されるなと叫んだ。
「ふふふ…、君じゃ僕を倒せない。」
「フォオオン!」
 アルマロスは、ウェールズに斬りかかった。
 アンリエッタが唱えて張った水の壁を無効化し、ウェールズの体を切った。
 しかしウェールズは倒れず、アーチがあっという間に穢れた。
「!!」
「どうやら思っていたより、君の力は弱っているようだね。」
「フォ…。」
「限界が近いんじゃないのかい?」
「っ……、フォオオオン!」
 指摘され、唇をかんだアルマロスだが、すぐに叫び、アーチを浄化した。
 しかし浄化しきれなかった。
「っ!?」
「はは、本当に限界なんだね?」
「引きなさい、ルイズ! 私達を行かせて!」
「いいえ! 姫様こそお目を覚ましてください!」
「あなたを殺したくないの!」
「引きません! 私は…、アルマロスは、引きません!」
 ルイズが杖を構え、アルマロスの横に立った。
 ルイズを見たアルマロスに、ルイズが目を合わせ、微笑んだ。
 その時、雨が降り出した。
「見なさいこの雨を! 雨の中で水に敵うと思っているの!? この雨で私達の勝利は確実なものとなります!」
「アルマロス、水のあなたの得意分野でしょ?」
「……。」
「やっぱり限界なの?」
『なあ、娘っ子。祈祷書は持ってっか?』
「何よこんな時に?」
『いやなぁ…。今思い出したんだわ。なあ、相棒、時間稼ぎぐらいならなんとかなるだろ?』
「…フォオン。」
『相棒のためだ。娘っ子。おめぇも死力を尽くしな! 相棒もな!』
「フォン!」
「ええっ!」
 ルイズは、始祖の祈祷書をめくった。
 そこに書かれたルーン。『ディスペルマジック』を見つけた。
 屍のウェールズが風の詠唱を始めると、アンリエッタがそれに合わせて水の詠唱を始めた。
 やがて二つの魔法は、巨大な水の竜巻となった。
 王家の血のみが可能にする、王家のみに許された、ヘクサゴン・スペルが完成したのだ。
 謳うようにルイズがルーンを唱える。
 アルマロスがそれを守るように水の竜巻を前にして立ちふさがる。
 限界の身体。もう水をまともに操れない。
 ならばと、アルマロスは、腕を降ろし、目をつむった。
『待て、相棒、それは!』
「フォォォン…。」
 アルマロスは、微笑み。腰にあったデルフリンガーをルイズの横に落した。
 ゴボリッとアルマロスの体から闇が溢れ出た。
 それは、アルマロスの体を包み込み、巨大化させた。

『フオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』

 人間の体を捨て、怪物の姿と成り果てる。
 かつていた世界で、アルマロスを始めとした堕天使たちが持っていた最後の技。
 ネザー化。
 鯨に似た、上顎と下顎と尾を持つ、ロボットのような黒い巨体が現れた。それは、アルマロスが召喚された時に見た、アルマロスの最初の姿だった。ただ違うのはボロボロではないということだ。
 その姿と、アルマロスの絶叫に、ルイズは、詠唱を止めかけた。
 だがアルマロスがすべてを賭けているのを感じて、詠唱を再開した。
 涙がにじむ。心が痛い。だがやめるわけにはいかない。
 アルマロスが命を懸けているのだ、自分がそれに応えなくてどうするのだと自分に言い聞かせる。
 弾ける水の波を、そして迫って来る水の城のような巨大な水の竜巻から、ダーク・アルマロスがルイズを守る。
 ダーク・アルマロスを中心に、水は左右に割れ、ルイズには当たらない。
 先に詠唱が完成したウェールズとアンリエッタが、水の城のような巨大な水の竜巻をこちらに向けて来た。
 ダーク・アルマロスの巨体が水の竜巻を受け止めた。
『フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!』
 押し返す様な体制で、耐える。
 ガリガリと嫌な音が鳴るが、ダーク・アルマロスの体は削れない。
 ずりずりと、巨体が後ろに後退しそうになる。
 ダーク・アルマロスの巨体がルイズの眼前まで迫った時、ルイズの呪文が完成した。
 水の竜巻が、バシャーンと滝のように落ち、竜巻が消えた。
 次の瞬間、ダーク・アルマロスがウェールズに迫り、巨大な顎で捕えた。
「う、ウェールズ様!」
『フォォオオオオオオオオオン!』
 ウェールズを顎で捕えたまま、ダーク・アルマロスが上を仰ぎ見るように仰け反った。
「……ありがとう。」
 ウェールズは、微笑み、そう言った。
 ああ、彼は…、間違いなくウェールズだと、アルマロスは思った。
 次の瞬間、凄まじく鋭い水のエネルギーがウェールズを貫き、粉々に砕いた。
 まるで氷が砕けるように弾けたウェールズの体は、チリとなって消えた。
 アンリエッタの悲痛な悲鳴が木霊した。
「姫様…。」
「ウェールズ様、ウェールズ様ぁぁぁぁぁ!!」
 泣き叫ぶアンリエッタに、ルイズが近づいた。
『フォオオオン…。』
「よくも…よくも、ウェールズ様を!! 堕天使、あなたを許しません、絶対に許さない!」
 アンリエッタは、ダーク・アルマロスを睨んで罵倒した。

「大丈夫だよ。アンリエッタ。」

「え?」
 そんなアンリエッタの肩に、ポンっと手を置く人物がいた。ルイズは目を見開いた。
「ボクハ…ダイジョウブサ…。」
「ヒッ!」
「オヤ? ドウシタンダイ?」
「い…いやああああああ!」
 アンリエッタは、打って変わって、濡れた草原の上を四つん這いで逃げた。
 その人物は、自分の手を見た。
「アア…、イケナイ。直しきれなかったか。』
 途中からウェールズの声から、あの氷の堕天使の声に変った。
『いやー、驚いたよ。そんな力がまだあったなんてね。』
 不完全なウェールズの姿から、氷の堕天使の姿へと変じ、堕天使はダーク・アルマロスを見て言った。
「あんた!」
『やあ、虚無の使い手。まさかこんな逸材がいるなんて、思わなかったよ。』
「黙りなさい! よくもウェールズ皇子を!」
『そうだね…。せっかく王家を家畜にする絶好のタイミングだったのに、残念だ。」
「家畜ですって!?」
『王家の血…、とりわけ濃いメイジの血筋は、我にとって極上の供物。逃すにはあまりに惜しい。ウェールズの遺体を使って、メスを確保しようと思ったのだが…。邪魔をされてしまった。』
「あんた…人間をなんだと…。」
『魔を使えない平民と呼ばれる者達を家畜のように使っているお前たちが言うことか? それなのにメイジを王家の者を家畜として何が悪い?』
「ふざけんじゃないわよ!」
『フォオオオオオン!』
 ダーク・アルマロスが、氷の堕天使に迫った。
 氷の堕天使は宙に浮き、逃げた。
『だが残念だ。もう君は限界だろう。』
『フォ……。』
「アルマロス!?」
 ダーク・アルマロスが膝をついた。
 そして前に倒れた。
 ブスブスと闇が溢れ、周りに闇の煙をまき散らし始めた。
 アンリエッタが咳き込んだ。ルイズも咳き込んだ。
『フォオ…ォオォォオン…。』
「あ、アルマロス…、アルマロス!!」
『このままトリスティン一帯を闇で汚すといい。そうなればむこう百数年はまともにペンペン草も育つまい。』
「アルマロスーーー!!」
 ルイズが、闇の煙の中に駆け込もうとした。
 近づけば近づくほど闇は濃くなり、肺を穢した。
 膝を折りそうになるが、堪え、闇の中心に入った。
 闇でまったく見えない中、ルイズは、アルマロスを探った。
 やがて何かに触れた。
 アルマロス!っと、ルイズは思った。
 触れた指が焼けるように冷たい。
 このままここにいたら、触り続けていたら、無事じゃあ済まないだろう。
 それでもルイズは、アルマロスに顔を近づけた。
「アルマロス…。ああ、神様…。どうか…。私のすべてを捧げてもいい…、だから、だから…どうか…、アルマロスを…。」
 ルイズは、ハルケギニアの神に祈りながら、アルマロスに口付けた。


 凄まじい光が、闇を払い、光の中心に、白い翼と黒い翼が羽ばたいた。 
 

 
後書き
次回で最終回。 
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