アルマロスinゼロの使い魔
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第十一話 堕天使の怒り
前書き
ワルドとの対決。
一番書きたかった話だったと記憶している。
始祖ブリミルの像がある礼拝堂。
そこにワルドとルイズが入場した。
ルイズの頭には、永遠に枯れぬという新婦の冠、新婦にしか許されないマントが羽織らされていた。
アルマロスは、礼拝堂の端でその様子を見ていた。結構離れている。
ルイズは、ちらりとアルマロスを見る。
アルマロスはその視線に気が付いていなかった。
「では、式を始める。」
正装したウェールズが式の開始を告げた。
「新郎、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか。」
「誓います。」
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……。」
ウェールズが朗々と詔を読み上げる。
ルイズは、そんな中でも、またちらりとアルマロスを見た。
アルマロスは、嬉しそうにルイズ達を見ている。
彼は祝福しているのだ。純粋に。
ルイズは、考えた。
なぜ自分は、ラ・ローシェルの宿でアルマロスに言葉を求めたのか。
それは……。
「新婦?」
ウェールズの言葉で、ルイズは、ハッとした。
「緊張しているのかい?」
ワルドが言った。
違うっと、ルイズは思った。
「まあこれは、儀礼にすぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。では、繰り返そう。汝は、始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……。」
「誓えません。」
「ルイズ?」
ここにきて、やっとアルマロスは、ルイズの異変に気付いた。
「どうしたんだい、ルイズ。気分が悪いのかい?」
「違うの…。ごめんなさい。ワルド…、私…あなたと結婚できない…。」
ルイズは、フルフルと首を振った。
「新婦はこの結婚を望まぬか?」
「そのとおりでございます。御二方には大変失礼をいたすことになりますが、、わたくしは結婚を望みません。」
ウェールズは困ったように首を傾げ、ワルドを見た。
「子爵、誠に気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ。」
「……緊張しているんだ。そうだろルイズ。君が僕との結婚を拒むわけない。」
「ごめんなんさい。ワルド。憧れだったのよ。もしかしたら、恋だったのかもしれない。でも今は違うわ。」
するとワルドがルイズの肩を掴んだ。
「世界だ、ルイズ。」
ワルドの口調が、表情が変わった。
「僕は世界を手に入れる。そのためには君が必要なんだ!」
「ワルド?」
遠目に見ていたアルマロスは、ワルドの様子もおかしいことに気付いた。嫌がるルイズに無理やり詰め寄っている。
「君の能力が! 君の力が、必要なんだ! ルイズ、いつか言ったことを忘れたか! 君は始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう! 君は自分で気づいていないだけだ、その才能を!」
「ワルド…!?」
「この旅で、君の気持ちを掴むために、随分と努力したんだが…。」
ワルドがルイズから手を離し、首を振った。
ルイズが視線をアルマロスに向けた。
アルマロスは駆けだしていた。
「僕の目的は、ひとつ、ルイズ、君だ。二つ、君が持っている手紙。そして、三つ目…。」
ウェールズがハッとして杖を出して詠唱しようとした。
だがそれよりも早く、魔法を完成させたワルドの青白く輝く杖が、ウェールズの胸を貫いた。
ルイズが悲鳴を上げた。
眼前だった。
アルマロスは、目を見開いた。
鮮血を散らし、倒れるウェールズ。
「フ……。」
アルマロスの唇が震えた。
「フォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
アルマロスの絶叫が礼拝堂に響き渡りビリビリと震わせた。
アルマロスは瞬時にベイルを装着すると、その先をワルドに振るった。
ワルドは、とんでもないスピードでそれを避け、ベイルは、ブリミルの像を破壊した。
崩れ落ちるブリミルの像、その中から湾曲した薄黒い刃のようなものが出てきたが、アルマロスは、それどころじゃなかった。
ベイルを振るい続け、ワルドに襲い掛かる。だがすべての攻撃を避けられてしまう。
「最初の手合わせの時は加減したが、本気で相手をさせてもらうぞ!」
魔法によって強化されたスピードでベイルを避けていく。
杖の切っ先がベイルを握るアルマロスの手に当たり、ベイルの片方が弾き飛ばされた。
「その武器は威力はあるが、鈍いな!」
「フォオオオオオオオン!!」
アルマロスはベイルを捨てて、素手でワルドに殴りかかった。
ワルドは、輝かせた杖でその拳を受け止め、瞬時に魔法を完成させて放った。
だがアルマロスに命中した魔法は、消えた。
「チッ、やはり魔法は効き目がないか。ならば!」
ワルドは、杖で応戦しながら術を唱えた。
「ユビキタス・デル・ウィンデ…。」
するとワルドの姿が本体と合わせて五人に増えた。
ギトーとは比べ物にならない力の現れるである。
「あの時、貴様に我が偏在を消された時は、正直焦ったよ。」
そう言ってワルドの分身の一人が、白い仮面を出した。
あの時現れた白い仮面の男はワルドだったのだ。いや、正確にはワルドの偏在、分身だったのだ。
魔法を無効化するアルマロスが触れた途端消えたのはそのせいだったのだ。
「だがすべての魔法を無効化できるわけであるまい!」
五人のワルドがそれぞれ杖で攻撃、または魔法を使いだした。
凄まじい稲妻。ライトニング・クラウドがさく裂したが、煙の中からすぐに無傷のアルマロスが飛び出した。
四方八方から杖の攻撃がきたが、アルマロスはすべてを受け流す。
「くっ、さすが堕天使か!」
やがて偏在のひとりがアルマロスの拳を喰らって消えた。
「だがこれはどうかな!?」
「キャアアア!」
「フォオオン!?」
ハッとして振り向いた時、ワルドの偏在の一人がルイズを捕えていた。
「動くな、堕天使!」
「っ!」
ワルドの杖の切っ先が、アルマロスの首に刺さった。
さらに、三人のワルドからライトニング・クラウドが放たれ、吹き飛ばされたアルマロスは、崩れたブリミル像の上に倒れた。
「アルマロス!」
「ルイズ、今からでも遅くはない。僕と来てはくれないかい?」
「! い、いや!」
「そうかそれならば、仕方がない…。」
ワルドの放った風の魔法で、ルイズの体が吹き飛ばされ床に転がった。
「う……。」
「残念だよ。ルイズ…。」
「……アルマロス…。」
ワルドの杖の切っ先がルイズに振り下ろされようとした。
だがならなかった。
ワルドの杖が半分に斬れた。
「なっ…。」
ワルドが横を見た時、アルマロスがそこに立っていた。
湾曲した、弓矢のような形状の、ギザギザの刃を持つ巨大な刃を持っていた。
アルマロスは、薄黒いその刃に手を触れ、撫でるように手を動かした。
すると刃が光り輝き、目をつむるほどの光によって白く輝きだしたその刃のギザギザがひとりでに回転のこぎりの刃のように動き出した。
「それは…!?」
「フォオオオオオオオオオオオオオン!」
アルマロスが刃…、神の叡智・アーチを振るった。
ワルドが飛びのいた途端、他のワルドが斬られ、消えた。そしてワルドの横腹が切れて出血した。
「ぐ……! その武器はいったい…。」
ベイルとは比べ物にならない速度で振るわれたそれをワルドは、避けきれなかった。
「フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
アルマロスがワルドに迫った。
ワルドは、代わりの杖を出して応戦しようとした。
アーチの、巨大な刃の、凄まじい速度で繰り出される斬撃の雨は、ワルドの左腕を斬り落とした。
「がああああああ! こ、この疾風のワルドが…遅れを取るとは…。」
その時、凄まじい轟音と共に、天井が崩れた。
「間もなく我がレコン・キスタの大群が押し寄せる! ほら! 馬の蹄と竜の羽音が聞こえるだろう!」
確かに外から爆発音や地響きが聞こえてくる。
「愚かな主人と共に灰になるがいい!」
捨て台詞を残し、ワルドは、宙に浮き、空いた天井から逃げて行った。
ワルドを見送ったアルマロスは、すぐにルイズに駆け寄った。
「フオオオン!」
「アルマロス……。」
『相棒、どうするよ? いくらおまえさんでも、5万の敵を相手にするにゃ分が悪いぜ?』
アルマロスは、歯を食いしばった。
その時、床がモコモコと動き出した。
はっ?っと思っていると、そこからどこかで見た覚えがある大きなモグラが顔を出した。
モグラ…、ヴェルダンデは、ルイズを見つけると、その右手の薬指に鼻をこすりつけだした。
まさか水のルビーの匂いを嗅ぎつけて、ここまできたのかこのモグラ…っと、アルマロスが呆気に取られていると、穴から更に。
ギーシュ、キュルケが顔を出した。
「ダーリン!」
キュルケが土で汚れた顔を輝かせた。
「どうしてここに…?」
「いやなに、土くれのフーケとの一戦に勝利した僕らは、寝る間を惜しんで君達を追いかけたのだ。なにせこの任務は、姫殿下の名誉がかかっているからね。」
「フォォン…。」
ここは空の上のはずだが…っと言いたげにアルマロスが声を漏らした。
「タバサのシルフィードよ。」
なるほどあの竜によってここまで来たのかっと納得した。
「なるほど水のルビーの匂いを追いかけたのか。僕のヴェルダンデは、とびっきりの宝石好きだからね、ラ・ローシェルまで、穴を掘ってやってきたのさ。」
そりゃすごい。すごい執念だ。っとアルマロスは思わず拍手した。
「ところでダーリン、こんなところで何をしてたの?」
「! フオオオン!」
ハッと我に返ったアルマロスは、慌てて床に字を書きだした。
「ええ! 反乱軍がもうすぐそこまできてるですって!? それも5万!」
「ワルド子爵は!?」
「……。」
あいつは、裏切り者だった。っと、床に書いた。
「子爵が裏切り者ってどういうことだい?」
「フオオオン!」
「今それどころじゃないわよ! 早く脱出しなきゃ、ダーリン、来て! この穴から逃げられるわ!」
アルマロスは、傷ついたルイズを抱きかかえて穴に入ろうとしてふと止まった。
ルイズを床に置き、倒れているウェールズに駆け寄った。
ウェールズの体を探り、やがて彼の薬指にはまった風のルビーに目が留まり、それを外した。
「フォオン…。」
アルマロスは、ウェールズの冥福を祈り、ルイズを抱えて穴に飛び込んだ。
***
ヴェルダンデが掘った穴から飛び降りた先は、雲の上だった。
落ちて来た四人と一匹をシルフィードが受け止めた。ヴェルダンデは、口にくわえられた。
ルイズは、アルマロスの腕の中で気を失っていた。
アルマロスは念のため、ルイズの心音を確認した。ちゃんと鼓動はあった。
アルマロスがホッとしているとキュルケがアルマロスの首を指さして喚いた。
「ダーリン! 首! どうしたの!?」
「フォオン?」
そういえばっとアルマロスは、自分の首を触った。
ワルドに開けられた穴からブスブスと小さな黒い煙が出ている。
アルマロスは、首を指で撫でると、ウォッチャースーツにより首の傷が塞がれた。
するとシルフィードが暴れだした。
「うわー!」
「キャー! ちょっとタバサ!」
「落ち着いて。」
タバサがシルフィードの首を撫でて落ち着かせた。
シルフィードは、警戒する目でアルマロスを見た。
アルマロスは、ごめんねっと頭を下げた。
シルフィードは、力強く羽を羽ばたかせ、魔法学院へ向かった。
後書き
なぜここにアーチがあったのか…。それは、ある胡散臭い大天使の工作です。
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