能面
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第一章
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その高校の文化祭には一つ面白い伝統行事がある、それは一体どういった行事であるかというと。
仮装ダンスパーティーだ、文化祭の最後の最後にキャンプファイアーを開いて行われるのだ。これがこの高校の文化祭の伝統行事であり最大のイベントになっているのだ。
それで多くの者がその時の衣装に凝っていた、学校側も演劇部やそういったところが衣装を出して積極的に支援している。その中で三年B組の槙野かぐらは自分のクラスで友人達にこんなことを言った。
「私も今年は仮装ダンスパーティーに参加してね」
「そうしてっていうのね」
「あんたも踊るの」
「そうするの」
「ええ、そうするわ」
黒い長い髪の毛で切れ長の落ち着いた目と小さな唇に整った鼻立ちだ、高校ではもうすっかり少数派になったセーラー服の制服を丁寧に着こなしている。スカートの丈も長く赤いスカーフも清潔である。
「私もね」
「そういえばあんた去年もその前もよね」
「パーティーには参加してなかったわね」
「部活の書道部の方に熱心で」
「それでよね」
「ええ、けれど今年は最後の記念でね」
高校最後の文化祭だからというのだ。
「三年だし、それでね」
「仮装するの」
「そうして出るの」
「そのつもりなの」
「そうなの、ただどんな格好で参加するか」
それはだった。
「まだね」
「考えてないのね」
「そこまでは」
「まだなのね」
「そうなの、どんな服がいいかしら」
こう友人達に相談するのだった。
「一体」
「そうね、かぐらちゃんだとね」
友人の一人がかぐらに答えた。
「和風の外見だしね」
「純和風よね」
「和風美人よね、かぐらちゃんって」
「顔立ちも髪型もね」
「部活もそうだし」
「おうどんとかお刺身とか和食好きだし」
「やっぱり和風よね」
こちらの仮装でどうかとだ、他の友人達も話した。
「それじゃあね」
「着物とか?」
「巫女とかもいいかも」
「あっ、かぐらちゃんの巫女姿似合いそう」
「町娘もいいかもね」
「とにかく和風よね」
「かぐらちゃんだとね」
「そうなの、私は和風がいいのね」
かぐらは友人達が自分の目の前で話したその言葉を聞いてまずはこう言った。
「そうなのね」
「雰囲気的にもね」
「外見にしてもね」
「もうね」
「やっぱりそっちでしょ」
「西洋とか中華よりも」
「ゲームや漫画のキャラでいくにもね」
実際にパーティーにはそうした格好で出る生徒も多い、ただし学校の行事なので露出の多いものは禁じられている。
「かぐらちゃんだと和風よ」
「何とか箒ちゃんもいいかもね」
「あのキャラ巫女服にもなるしね」
それでというのだ。
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