繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
03.過去語
ー双子と王様ー
過去語ー双子と王様ー 三
「此れ、私の方が圧倒的に不利じゃ無いですかやだー」
琴葉は構成員達の攻撃を避けながら言う。
黑猫構成員達の武器は大体が直剣。後衛部隊は銃を持っていたりするが、前衛は剣だ。フランも当然の様に剣を構えている。
鬼は棍棒や、棘のついた鉄球を振り回している。アリサとユリアが後者の武器で戦っている。
対して、琴葉は短剣一本。主婦が使う様な包丁と、余り大差ないほどの大きさ。
「君、そろそろ本気出したら? 本気出す前に其の喉笛を搔き切られたら、後悔するんじゃ無い?」
フランが言う間にも、琴葉に降り注ぐ斬激は止まない。四方八方から繰り出される斬激は、確実に琴葉を追い詰めていく。
「あー、そうですねぇ。じゃあ、そんなに本気で掛かってきて欲しいのなら、先ず一割本気から」琴葉は大きく後ろに跳んで、段々と狭まってきた斬激を避ける空間から抜け出す。確認すると、数十の死体が其処に転がっていた。
「見せてあげますよ、私の能力。【重力操作】」
次の瞬間、先程まで琴葉の周りを囲み、剣を振っていた構成員達がふわりと宙に浮かぶ。狼狽える構成員達は、其のまま地面に落下するだけでは有り得ない速度で地面に叩き付けられる。花弁が舞い、地面にクレーターが出来る。
「うふふふ。如何為ます? 二割本気、見たいですか?」目を見開いて硬直するフランに、琴葉は笑みを向ける。「じゃあ二割本気………」
「能力!!」
琴葉が能力を発動しようとしたところに、ユリアが能力を発動する。其のまま能力を発動することも出来たが、琴葉は発動を止める。何故なら―――
「ぅぐ……」
琴葉の胸に、黒い布の様な物が突き刺さっていたからだ。
「能力!!」ユリアにつられ、他の構成員達も能力を発動し、琴葉を拘束していく。
氷で脚を固め、地面から伸びる蔓で腕を縛る。
血を吐きながら、琴葉は俯いて動かなくなる。
「………矢っ張り人間だね。終わりだ」其の姿を見て、フランは琴葉の耳元で囁く。
そして、フランは構成員達を引き連れ、白猫拠点へ向かおうと、脚を出した時だった。
「能力」
構成員達の胸を、琴葉から湧き出た黒い影が貫通する。
「能力」
構成員達の脚を、氷が固める。
「能力」
構成員達を腕を、蔓が絡め取る。
「ばーぁん」
琴葉は右手で銃の様な形を作り、呟いた。
すると、構成員達は、銃弾を受けたかの様に後ろに仰け反り、地面に倒れ込んだ。
「二割本気、如何ですか?」
口や、ユリアが生み出した影が貫通した所から血を流しながら、琴葉は言う。何時の間にか、影も、氷も、蔓も消えていた。
「三割本気、【能力無効化】です。そして、四割本気、【治癒】です」琴葉の傷は癒え、血が止まる。口に付いた血を拭い、高らかに笑った。「あははは! 終わりですか?」
たかが八歳の此の言葉を聞いて、頭にこない大人は居ないらしい。
挑発に乗った吸血鬼の貴族が、身体強化の能力を発動しつつ、琴葉に接近して剣を振る。だが、琴葉は短剣で剣を弾いて軌道を変え、空いた胴体に短剣を突き刺す。
「五割本気、【身体強化】」
次は貴族が周りを囲んで、一斉に斬り掛かる。幻術を遣い、琴葉を惑わせるが。
「六割本気、【能力消去】」
呆気なく幻術は解け、貴族達は重力に因って大きく吹き飛ばされる。風を操る能力を発動しようとする貴族の一人だが、能力が発動する事は無かった。
「七割本気、【精神操作】」
琴葉がパチンと指を鳴らすと、残った構成員達は一斉に呻きだし、血の涙を流す。自身の爪で自分に傷を付けたり、剣を腹部に刺す。中には、白い花の花弁を口一杯に詰め込む者も居た。
「八割本気、【空間操作】」
琴葉の背後に、黒い箱が現れる。そして、死体や、精神操作で苦しむ構成員達が其の箱の中に吸い込まれる。琴葉がぎゅうと手を握ると、彼等は悲鳴をあげながら、空間と共に此の世界から消された。
「九割本気、【能力具体化】」
残った人外の王族、そして貴族の躰から、飴玉の様な小さな球体が湧き出てくる。琴葉が手をパチンと叩くと、其れ等は硝子の様に割れ、消えていった。
「十割本気、【消滅】」
琴葉の手に禍々しい球体が生成される。一年前、鬼の街を消滅させた、彼の膜と同じ物。
其れを複数生成し、其れを全て投げ付ける―――
「筈ですが、止めましょう」球体は消滅し、琴葉の顔に貼り付けた様な笑みが戻る。「気にせずにやっていたら、残ったのは王族、貴族と……良いところの御嬢様ですか。良いです、見逃してあげますので、帰って良いですよ? あ、でも、後三十秒後、此処に残っている人を消しますので、注意して下さいねー! 行きますよ-。いーち、にー、さーん………」
残った者達は、短く舌打ちを為て、其の場を去って行った。
次は容赦しない。そう言い残して。
ページ上へ戻る