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永遠の謎

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173部分:第十一話 企み深い昼その十五


第十一話 企み深い昼その十五

「バイエルンの者達はそれに踊らされているのだ」
「踊らされてそうして騒ぎ」
「そのうえで、ですか」
「あの芸術家を追い出した」
「そうだと」
「そしてそれがだ」
 ビスマルクの目がだ。ふと悲しいものになった。そのうえでの言葉だった。
「あの方をいたく傷つけてしまった」
「バイエルン王をですか」
「あの方といいますと」
「そうだ。あの方はあまりにも純粋だ」
 ここでだ。ビスマルクは王について親身になって話をはじめた。ここでも彼の王に対する深い敬慕の念は変わらない。それはなのだった。
「そして繊細なのだ」
「純粋で繊細」
「そうした方ですか」
「それだけにこれまでの一連の動きがあの方を傷つけてしまっていた」
 その一連の騒動だけでもだというのだ。
「そしてだ」
「そしてですか」
「今回の追放ですね」
「それが決定打になってしまった」
「そうだと」
「その通りだ。あの方にはあの芸術家が必要なのだ」
 言葉は現在形だった。今もだというのだ。
「だが。それが適わなくなった」
「あの方の御心は傷つけられ」
「そしてそれは癒されない」
「そうした状況なのですか」
「最悪の結果だ」
 ビスマルクは苦々しい声で言った。
「あの方にとって」
「一体どうなるのでしょうか、それで」
「あの方は」
「そしてバイエルンは」
「どうなってしまうでしょうか」
「わからない。だが」
 ビスマルクは顔をあげた。そのうえで遠くを見る目でだ。こう言うのだった。
「私ならああなってしまえばだ」
「ああなってしまえばですか」
「どうなりますか」
「閣下ならば」
「世が嫌になる」
 そうだというのであった。
「全てな。嫌になる」
「嫌にですか」
「なりますか」
「あの方なら余計にだ」
 ビスマルクは王に感情を移入させた。そうして王の立場としてだ。あらためて話すのだった。
「全てが嫌になりそれでもあの芸術家を求められるだろう」
「傍にいなくともですか」
「それでもですか」
「そうだ、世に悲しみを感じそのうえであの芸術家を求める」
 それが王だというのだ。
「最悪の結果だ。バイエルンはあの方をわかっていない」
「バイエルンの者達がですか」
「誰もなのですか」
「あの方を」
「それがどうなるかだ」
 問題はそれだというのだ。
「私にもわからない。だが祈る」
「あの方に対して」
「祈られますか」
「そうだ、願わくばあの方の憂いが少しでも消えることをだ」
 祈り願うのはそのことだった。
「そして私はその為にはできる限りのことをしたい」
「それはプロイセンとしてですか?」
「プロイセン首相としてのお言葉でしょうか」
「今のお言葉は」
「そう捉えてもらっても結構だ」
 いいとだ。ビスマルクは返した。
「あの方は。今だけでなく」
「今だけでなくですか」
「そうだ。未来においてもドイツの宝になられる方だ」
 そこまでの人物だというのだ。バイエルン王はだ。
 
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