レーヴァティン
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第七十二話 大商人その五
「それだな」
「当店では旦那様ではなくです」
「マッダレーナって呼ぶんだな」
「女性の方ですのね」
だからマッダレーナと呼ぶというのだ。
「そうなっています」
「そうなんだな」
「はい、それでなのですが」
「ああ、それでマッダレーナのところに俺達を案内してくれるかい?」
微笑んでだ、久志は男に頼んだ。
「そうしてくれるかい?」
「はい、それでは」
「今からな」
「案内させて頂きます」
「それでマッダレーナは何処にいるのかしら」
清音も男に聞いた。
「それで」
「今は当店の最上階のご自身のお部屋におられます」
「そこになの」
「はい」
そうだというのだ。
「そちらに」
「それではね」
「今から案内させて頂きます」
「店にいてよかったな」
久志は案内してもらえると聞いて安心した様に言った。
「本当に」
「そうよね、若し外に出ていたら」
「待つとかそっちに行くとかな」
「そうしたことになってたでしょうから」
「手間もかかったかも知れないしな」
「ええ、だからね」
「この店にいてよかったな」
「本当にね」
清音も頷いた、そしてだった。
一行は店の主の部屋に案内された、するとそこには。
黒い収まりの悪いショートヘアにはっきりとした大きな目の小柄な少女が卓に座っていた。そこにいてだった。
女はここでだ、久志達を見て言った。
「只のお客さんじゃないわね」
「はい、当店に来られてすぐにです」
店の者もその女に話した。
「マッダレーナとお話がしたいよ」
「私に直接ね」
「左様です」
「わかったわ」
女は店の者の言葉にまずは頷いた。
「そのことは」
「はい」
「それではね」
「どうされますか」
「お話をさせてもらうわ」
女は久志達を見て答えた、久志はここで女の言葉に関西弁のニュアンスがかなり入っていることに気付いた。
「そうさせてもらうわ」
「それでは」
「ええ、貴方はお店に戻って」
「それでは」
店の者も頷いてだ、そしてだった。
彼は去りそうして部屋の中にいるのは女と久志達だけとなった。合わせて十二人になるとすぐにだった。
女は久志達に対して笑顔で言った。
「よおこそって言うべきやろか」
「ああ、実はな」
「うちに商売で話をしに来たんちゃうやろ」
女はここで立ち上がった、そして久志達にこうも言った。
「ほなまず座って座って」
「座ってか」
「そしてゆっくり話しよか」
「ああ、それじゃあな」
「コーヒーとお茶どれがええ?」
女は今度はこう言ってきた。
「それで」
「別にいらないぜ」
久志は女に明るく笑って返した。
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