レーヴァティン
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第七十二話 大商人その三
「かなり凄い選手が多かったそうでござる」
「サチェル=ペイジとかな」
その黒人リーグを代表するピッチャーだ、十九歳から六十歳近くまで投げていたとも二千勝したとも言われている。
「いたらしいな」
「本来ならでござる」
「黒人差別、偏見がなかったらな」
「このリーグもなかったでござる」
「野球の上手下手関係なかったんだな」
「当時のアメリカでは」
差別という壁が存在していてだ。
「そうだったでござるから」
「それで、だよな」
「はい、この世界でもでござる」
「そうした偏見があってか」
「それで、でござろう」
まさにというのだ。
「女性商人は商人ギルドからよく思われていないでござる」
「そうなるか」
「はい、そしてでござる」
「そいつは偏見の壁を乗り越えてか」
「セビーリャ一の商人になったでござるから」
「余計に凄いな」
「そうなるでござるな」
「だったら余計にな」
まさにとだ、久志は全身から汗を滝の様に流しつつ言った。サウナの温度はかなり高く入って暫くでそうなっているのだ。
「会いたいな」
「そしてその商才をでござるな」
「色々役立てたいぜ」
「政に」
「ああ、旗揚げしてからな」
それからのことを考えてというのだ。
「そうしたいからな」
「是非にでござるな」
「ああ、そいつも仲間にしたいぜ」
「何があろうとも」
「そう思ってるさ、じゃあまだもう少し入ってな」
サウナ、それにというのだ。
「そうしてな」
「行くでござるな」
「そうしような、しかし皆随分とな」
ここで久志は仲間達を見回してこんなことも言った。
「引き締まった身体をしているな」
「そのことでござるか」
「ああ、何ていうかな」
久志は自分が知っている言葉を選びつつ話した。
「ヘラクレスとかそんな感じになっているな」
「ヘラクレスでござるか」
「逞しくなってな」
ヘラクレスはその逞しい身体の例えだった。
「それでな」
「引き締まっているとでござるか」
「思ったぜ、かく言う俺もな」
久志は自分の身体も見た、彼のその身体はというと。
「かなりのものか?」
「ダビデの如きでござるな」
「俺はそっちか」
「ミケランジェロの像の」
あのあまりにも有名な像の様だというのだ。
「そうした感じでござるよ」
「そうは思わないけれどな」
「見たらでござる」
「そっちか、俺は」
「引き締まったいい体格でござるよ」
「だといいけれどな」
「旅で歩き馬に乗っていてでござる」
「いつも戦っていてだな」
久志はこのことについても話した。
「だからか」
「自然と身体が鍛えられてでござる」
「皆逞しくなってるんだな」
「ヘラクレス、ダビデの様にでござる」
「そうなんだな、しかしな」
「しかし?」
「いや、体重はかえって増えただろうな」
こちらの世界にはじめて来た時と比べてとだ、久志は言った。
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