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猫舌娘

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第一章

               猫舌娘
 リリィは今はある資産家の養女となって施設から引き取られて暮らしている、だがその資産家はいつも彼女に尋ねていた。
「リリィはどうして熱いものが駄目なんだい?」
「それは」
「わからないか」
「物心ついた頃からなんだ」
 共に夕食を食べる資産家にだ、リリィは答えた。資産家は妻に先立たれもう子供達も孫達も家を出て広い屋敷に使用人達と共に暮らしていたがそこでリリィのことを聞いて彼女のことを気にかけて引き取り養女として育てているのだ。
 リリィを学校に通わせ大事に育てている、食事も彼女が学校にいる時以外は共に摂っていて今もそうしているのだ。
 そこでスープに何度も息を吹きかけるリリィにだ、彼は尋ねるとリリィはこうしたことを言ったのだった。
「ずっとね」
「そうか、猫舌か」
「それで目と運動神経もね」
 そちらもというのだ。
「昔からね」
「いいんだな」
「目なんか十・〇あるし」
 そこまで高いというのだ。
「私もわからないんだ」
「そうか、リリィは不思議な娘だな」
 資産家はリリィにしんみりとした口調で述べた。
「何かと」
「そうなの」
「そう思うよ」
「私不思議なんだ、だったら」
 資産家の言葉にだ、リリィはこう言った。
「普通と違うんだね」
「そうなるかな」
「じゃあ私は変なのかな」
 こう言うのだった。
「普通と違うから」
「違うさ、それは個性だよ」
「個性?」
「その人それぞれが持っているね」
 それだとだ、資産家はリリィに穏やかな声で話した。
「そうしたものなんだよ」
「じゃあ私の猫舌や目や運動神経は」
「全部だよ」
 まさにというのだ。
「リリィの個性だよ」
「そうなんだ」
「だからわしはリリィの猫舌は見ているが」
 そして言うがというのだ。
「止めはしないね」
「じゃあ私は猫舌でいいのね」
「それで誰が困ったかい?」
 リリィに優しい声で尋ねた。
「一体」
「そう言われると」
「リリィだけのことだね」
「うん、熱いものが食べられないことは」
「だからね」
 それでと言うのだった。 
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