| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ最後 訪れるものその二

「それはな」
「はい、言い訳になりますが」
「あの様なことをしなくて済んだ筈だがな」
「それがしもそう思っていましたが」
「無念であった」
 家康にとってもというのだ。
「こう言うとあれじゃが茶々殿がな」
「政がおわかりおなら」
「そしてあそこまで頑迷であらなければ」
「大坂を譲ってくれて」
「他の国に移られていました」
「大坂さえ手に入ればよかったのじゃ」
 家康にしてもというのだ。
「まことにな」
「左様でしたな」
「右大臣殿も聞いて頂ける感じでしたし」
「それならば」
「戦もせずともよかった」
 大坂でのそれもというのだ。
「そこはしくじったわ」
「ですがあれは」
 正純がここで家康に述べた。
「茶々殿のご気質では」
「致し方ないか」
「ああした方ではです」
 最早と言うのだ。
「ああなるしかです」
「諦めるしかないか」
「そうかと」
 こう家康に述べるのだった。
「致し方ないです」
「そうか、ではな」
「はい、それでは」
「大坂のことはあれでか」
「よしとすべきでしょう」
 内密であるが秀頼は助かった、それでというのだ。
「太閤様との約束を果たした」
「それでか」
「大御所様は律儀を貫かれたと」
「わし自身約束を違えるのは嫌いじゃしな」
「公儀ならば」
「約束を違えて政は成らぬ」
 そうなってしまうというのだ。
「諸大名も民達も納得せぬわ」
「約束を違える様な幕府では」
「だからじゃ、これからもな」
「幕府はですな」
「約束を違えぬままじゃ」
「政をしていくべきですな」
「うむ」
 そうせよと言うのだった。
「ではな」
「はい、それでは」
「そのことも伝える、幕府の政には邪道は無用じゃ」
「王道、正道でですな」
「進めていくのじゃ、何があってもな」
 天下万民と向かい合ってとだ、家康は幕臣達に告げ江戸の秀忠にも伝えさせた。その言葉を聞いてだった。
 秀忠もだ、江戸城でこう言った。
「その通り、幕府はな」
「律儀をですか」
「まさにそれを」
「貫いていく」
 江戸にいる幕臣達に答えた。
「当然余もな」
「律儀であられますか」
「これからも」
「そうして天下万民を治めていく、正道を歩んでいくぞ」
 家康が言う政のそれをというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「天下泰平を守っていきますか」
「そうしていくぞ」
 こう言ってだ、秀忠は天下をその律儀で守ることを誓った、だが大奥ではお江は今も暗い顔でいた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧