石頭
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第三章
「その道理はおかしいぞ」
「そんな道理知るか、おい」
男は周りの三十人程のならず者達と先導をした先程の者達に声をかけた。
「相手は一人だ、やっちまえ」
「そうしてやります」
「所詮相手は一人」
「何でもないですよ」
ならず者達は男に応えてそのうえで吟次を囲み一斉に襲い掛かった、だが吟次は素手のままで彼等を瞬く間に全員倒し最後に苦し紛れに襲い掛かってきた男もだった。
頭突きで一撃で吹き飛ばした、そうして街の者達に言った。
「これでいいよな」
「いや、有り難うございます」
「後はこの連中を縛って奉行所に突き出します」
「奉行所の方も中々手を出せませんでしたが」
「縛って突き出せばいいですし」
「これでこの連中は全員島流しか」
そうなるとだ、吟次は言った。
「よかったよ、じゃああっしはこれで」
「いえ、働いてくれましたから」
「お陰で助かりました」
「ここはお礼をさせて下さい」
「どうか」
「そんなのはいいよ」
吟次は街の者達に笑って返した。
「あっしは嫌々やっただけだしな」
「そう言わずに」
「折角助けてくれたんですから」
「もてなして下さい」
「わしのうどんでも」
先程の年寄りも言ってきた、孫娘も一緒だ。
「ですから」
「どうしてもかい」
「はい、どうしても」
「そうかい、そこまで言うなら」
嫌々したから後ろめたい気持ちはあったがそれでもだった。
街の者達がどうしてもというので吟次も受けた、そのうえでうどんだけでなく他の食いものも酒もしこたま楽しんだが。
二日酔いになって思いきり身体がだるく頭が痛かった、それで街の者達に申し訳のなさそうな顔で言った。
「この辺りに風呂屋はあるか」
「はい、ありますよ」
「案内しますね」
「よし、じゃあな」
吟次は案内されてその風呂屋に入ってそこで酒を抜いて気持ちもすっきりしようとした、だが二日酔いの苦しみで周りがよく見えておらず。
最初間違えて女湯ののれんを潜ってしまいいらぬ騒ぎを起こしてしまった、こうしたことも常だったが吟次はいつも通りの旅をこの街でもして次の場所に向かうのだった。
石頭 完
2018・9・18
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