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レーヴァティン

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第七十一話 南の港町その六

「お水はあっという間に凍って」
「冬は冗談抜きに湖が凍るからな」
「船の行き来も出来なくなるんだよね」
「氷の上を歩いての行き来になるからな」
「そう思うと」
「ああ、こっちは天国だな」
 芳直はこうも言った。
「本当に」
「同じ島でも随分気候が違うからね、この島」
 源三も言ってきた。
「こっちは実際に冬も暖かいみたいだよ」
「そうだね」
「普通にオレンジとかバナナとかパイナップルとか売ってるし」
 市場の店を見れば鮮やかな色合いの果物達は多く置かれている。
「ここは暖かいみたいだよ」
「それは何よりだね」
「寒いと本当にね」
「それだけで辛いから」
「僕達もあの寒さは堪えたよ」
 源三も北の大地を思い出した、彼等にとっては旅をしただけであったがその度が過酷なものだったのは確かだ。
「吹雪が凄かったね」
「あれね、普通にあるからね」
 剛は源三が言ったその吹雪に微笑みつつ答えた。
「北では」
「そう聞いてたけれどね」
「一週間位外に出られなかったんだよね」
「馬もね」
 当然馬もこのセビーリアまで連れて来ている、だが今は港の入り口にあった馬を預かってくれる店に金を払って預けている。
「進めなかったし」
「あそこはそうなんだよね」
「それでここはだね」
「天国みたいだよ」
 そこまで感じるというのだ。
「本当に」
「ああ、ここは商売もしやすいだろうな」
 芳直は十一人目が商人だという情報からこのことを言った。
「それも随分と」
「そうだろうね、じゃあお店を中心に探していこうか」
「そうしような」
 こうしたことを話してだった、久志を入れた四人はセビーリアの街の一つを見て回った。それは他の面々も同じで。
 一行は集合場所に決めていた居酒屋に戻った時にそれぞれ情報交換をした、久志は順一達が持って来た情報に怪訝な顔になった。
「娼館?」
「ああ、このセビーリアにもあってな」
 正が答えた。
「最近出来たばかりでもな」
「随分繁盛してるっていうんだな」
「そうらしいな」
「おい、流石にな」
 娼館と聞いてもだ、久志はまさかという顔で正に言った。
「そっちの商売をな」
「外の世界から来た奴がか」
「やってはいないだろ」
「そうだろうな」
 正もこう返した。
「だから俺達もな」
「この話はか」
「ないと思ってるさ」
 正は久志に冷静な声で答えた。
「実際な」
「やっぱりそうだよな」
「実は他にも手がかり得ているんだよ」
「今度はどんな商売だ」
「金貸しだよ」
 こちらの商売だというのだ。
「やっぱり最近どんどんでかくなっているな」
「金貸しか」
「どうもそいつがな」
「怪しいか」
「金貸しで元手を得てな」
 つまり資金となる金そのものをだ、何につけてもそうであるが商売はまず金がないとどうしようもないことは紛れもない事実だ。 
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