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戦国異伝供書

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第十一話 退く中でその一

                第十一話  退く中で
 朝倉家との戦は状況が一変した、信長は家臣達を集めて話した。
「猿夜叉が裏切った」
「えっ、まさか」
「あの猿夜叉殿が裏切られるなぞ」
「それは幾ら何でも」
「間違いない、先程市から知らせが来た」
 信長は自分の言葉に驚きを隠せない家臣達に真剣そのものの顔で語った。
「猿夜叉が裏切り我等に兵を向けている」
「では今すぐですか」
「これからどうするか」
「そのことをお話しますか」
「それはもう決めておる、退く」
 信長は軍議を開こうという家臣達にこう告げた。
「都までな、そのうえで軍議じゃ」
「一旦都まで軍勢を退けさせてからですか」
「そのうえで、ですか」
「これからどうするか話をする」
「左様ですか」
「そうじゃ、わしはすぐに退く」
 信長はまず自分がと言った。
「そしてお主達もすぐにじゃ」
「ここから退く」
「そうせよというのですか」
「皆それぞれの兵を率いて退け、軍勢全体の采配は権六がせよ」
 柴田と佐久間を見て告げた。
「そして新五郎と五郎左は権六を助けよ、そして殿軍じゃが」
「はい、それは一体」
「誰がするのでしょうか」
「それはな」
「ではそれがしが」
 信長が言うより先にだ、羽柴が申し出た。
「お任せ下さい」
「お主が務めるか」
「はい、そうさせて頂きます」
「よいか、わしは牛助か久助を考えておった」
 佐久間か滝川をというのだ、二人共織田家において退きも得手とする者達だ。特に佐久間はその上手さはよく知られている。
「それでと思ったが」
「そこをです」
「務めるか」
「はい、必ず」
「猿夜叉はもう動いておる、しかもあ奴だけでなく朝倉家の軍勢も来る」
 信長は羽柴にこのことを話した。
「尋常な戦ではないぞ」
「それは承知しています」
「そのうえでか」
「はい、是非です」
「この度の殿軍を務めるか」
「そして殿は」
 羽柴は信長に対してさらに言った。
「これより」
「うむ、すぐにな」
「都へ」
「わかった、では皆の者これより退くぞ」
 信長は諸将にあらためて告げた。
「そして都で態勢を立て直すぞ」
「わかり申した」
「ではこれよりです」
「都に向けて退きます」
「そう致します」
「急ぐのじゃ、敵はすぐにでも来る」
 攻めて来るとだ、信長は話した。
「だからじゃ」
「はい、すぐに」
「退きます」
「軍を連れて」
「そうせよ、兵糧や武具もじゃ」
 こうしたものもというのだ。
「出来るだけ持って行くのじゃ」
「敵に渡さぬ様にですな」
「その様に」
「そうじゃ、今からなら間に合う」
 兵糧や武具を持ったうえで退くことはというのだ。 
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