真田十勇士
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巻ノ百五十三 戦の終わりその八
「武士道を究めたいと思っております」
「武士道の果てに辿り着かれることを目指されますか」
「是非」
「そうですか、ではこの薩摩で」
「文武の修行を続けていきます」
鍛錬と学問の両方をというのだ。
「そいて仏門や神道にも触れます」
「左様でござるか、では」
「その様にして宜しいですか」
「どうぞ」
家久は幸村に笑みで答えた。
「そうされて下さい」
「それではその様に」
「ただ、実は薩摩の海から南に出られまして」
ここでこんなことも話した家久だった。
「そしてです」
「そこから日の本以外の国にもですか」
「行くことが出来ますが」
「他の国々も回って、ですな」
「見聞も修行も出来ると思いますが」
「そうですか、そのことは」
「これからですか」
「いえ、右大臣様をお護りします」
これが幸村の返事だった、秀頼を見つつの言葉だ。
「そうさせて頂きます」
「そうですか」
「はい、しかし」
「それでもですか」
「そのこともお考えを」
「余のことは気にせずともよい」
秀頼は微笑み幸村に述べた。
「そなた達がそうしたいならな」
「日の本から出てですが」
「旅をしつつな」
日本の他の国々をというのだ。
「そうしてじゃ」
「己を鍛えても」
「よいぞ」
「そう言って頂けますか」
「そこは好きにせよ」
秀頼は微笑み幸村に話した。
「そなた達がな」
「それでは、しかし」
「それでもか」
「はい、それがし達はあくまで」
「余を守ってくれるか」
「我等は豊臣の家臣になりました」
大坂の陣からというのだ。
「そうなりましたので」
「だからか」
「はい、右大臣様をお守り致します」
「余のことは叔父上に頼まれてであったな」
秀頼は幸村のその目を見て彼に問うた。
「そうであったな」
「はい、確かに」
「それはもう果たしたのではないのか」
こう幸村に問うた。
「余を薩摩まで逃してくれて」
「それはそうですが」
「それでもか」
「豊臣の家臣になったのも事実。そして」
「そのうえでか」
「もう幕府の追手は来ませぬが」
このことはわかっている、他ならぬ家康が己の誇りにかけて約束したことだ。
「ですが」
「一度仕えたからにはか」
「お仕えするのも武士」
それ故にというのだ。
「このままです」
「仕えてくれるか」
「そうさせて頂きます」
「では薩摩でか」
「薩摩にいても武士の道は歩めます」
幸村は秀頼に笑みで答えた。
「ですから」
「それもか」
「充分とです」
「考えておるか」
「はい」
その通りだというのだ。
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