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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚

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インテグラル・ファクター編
  聖なる嵐

俺が正式に黒猫団に入ってから一ヶ月がたった。サチもリズベットから免許皆伝し終えて今ではリズベットが居ない日でもリズベット武具店を任せてもらえるぐらいになった。

「来たぜサチ」
「アヤト!いらっしゃい。今日もメンテナンス?」
「ああ頼む」

リズベット武具店に来た俺は現在の愛剣《アンブレイク》をサチに渡した。

「もう一人でメンテナンスできるようになったんだな」
「うん。リズベットさんに色々教えてもらって、最近ようやく一人でも出来るようになったんだ」

そういうと、サチは工房の中に入っていった。
俺は飾ってある武器をとりあえず見ることにするが、程なくしてサチが顔を出した。

「おまたせアヤト」
「おうサンキュー!そうだ。もうすぐギルドホームが買えるようになるよ」
「本当!?」
「ああ!みんなの部屋付きで、お風呂も完備だ!」
「お風呂も!?やったー!ようやくちゃんとお風呂に入れる…….」

サチはハッと俺の方を見ると、

「覗きはダメだからね」
「覗かねーよ!」

とこんなやり取りをしているが、サチの笑った顔を見るのは久しぶりだなと考えていた。はじまりの街以来か?

「どうしたの?私の顔じっと見て」
「へ?ああ……サチの笑った顔久しぶりに見たなーってさ」
「え……そ、そうかな……」

サチは顔を赤く染めて目を逸らした。

「そ、そういえば!ア、アヤトの誕生日ってもうすぐだよね?何か欲しいものはある?」
「欲しいもの?今はSAOの世界だし武器かな……なんて」
「武器ね!わかった!楽しみに待っててね!」













「みんなそういう訳だから手伝って欲しいな……」

アヤトが外出しているある日。サチは黒猫団のメンバーを集めてアヤトの誕生日プレゼントについて話し合った。

「なるほど、アヤトの誕生日プレゼントのために武器のインゴットをゲットしに行くってことか」
「おいおいサチ、そんなの……」

サチは俯いてしまう。しかし、

「やるに決まってんだろ?凄い武器プレゼントして驚かせてやろうぜ!」
「よし!そうと決まれば早速インゴットの取れるエリアに行こうぜ!」
「でもよ?ケイタはどうする?あいつ今、俺たちのギルドホーム買う手続きしに行ってるし、インゴットは最前線近くだしケイタが揃うの待ったほうがいいんじゃね?」
「大丈夫だって!俺たち強くなったし、ケイタにも色々やってもらってばっかだし俺たちだけで行くぞ!」

現在の最前線である45層の二つ下の層43層にある洞窟。そこはスケルトン系のMobの住処で、そこのフィールドボスの《スケルトン・ビシャス・レックス》から取れるインゴットは強い武器が出来るという噂が鍛冶屋業界で噂されていたらしい。

「サチは、キリトに掴まってな。この中だったらキリトが一番センスあるから」
「よろしくねキリト」
「お、おう。了解」
「しっかし、インゴットを手に入れるには鍛治スキル持ってる奴がいないといけなかったなんてな」
「よっし着いたぞ!みんな、準備はいいか?」

ダッカーの一言で皆気を引き締める。

「行くぞ!」
「「「「おう!」」」」

黒猫団みんなで洞窟の中に入っていった。洞窟内は然程暗くはなく、出てくるスケルトン系のモンスターは大した強さではないため2人いれば十分なぐらいだった。

「やっぱり俺たちの敵じゃなかったな!」
「ああ!この調子でちゃっちゃとボス倒してインゴットを手に入れようぜ!……お!」

気がつくとかなり広い広間に出た。

「どうやらここがボスの間みたいだな」
「オラ早く出てこいよ!どうせ大したことないんだろ!」
「ちょっとダッカー」

サチがダッカーを嗜める。それから30分近く待ってみるがなかなか出てこない。

「出てこないな」
「うん。ここじゃなかったのかな?」
「でも、他に出てきそうな場所はなかったしなー」
「とりあえず出直すか?」
「そうすっk『◾️◾️◾️◾️ーー!!!』」

突然の巨大な咆哮が広間内に響く。振り向くと巨大な骨のティラノサウルスを連想させるモンスターがポップしていた。


《Skeleton vicious rex》


「出てきたな!みんな!陣形を作れ!」
「「「「おう!」」」」

敵は一体だけのため、サチを下がらせて四方に分かれて攻撃する。ダッカーの槍がボスの肋骨の先を破壊した。

「よし!部位破壊!」
「やったなダッカー!」
「このままやるぞ!」

すると、破壊した肋骨の破片が変形しはじめた。

「な、なんだ!?これ!?」

変形した骨は人型のMobになり、ダッカーに斬りかかってきた。

「くそ!なんなんだよコイツ!」

人型のMobはこれまで出てきたスケルトン系のMobよりも強く、ダッカーは耐えるのがやっとだった。

「みんな気をつけろ!部位破壊するとそれが敵になるみたいだ!」
「そんなのどうすればいいんだよ!……しまった!!」

テツオの両手斧がボスの部位破壊をしてしまった。その砕け散った骨はみるみるうちに変形し、多くの人型のMobに変わった。

「クソ!こんなの倒せるわけないだろ!ぐわぁ!」
「テツオ!!」

Mobの一撃がテツオの背中に炸裂した。そのままテツオは倒れてしまう。

「この難易度。スケルトン・ビシャス・レックスは50層クラスの敵か!?」
「そんな!?50層なんて……うわぁ!」
「ササマル!!」

ササマルはボスの尻尾のなぎ払いを受けて飛ばされてしまう。

「とりあえず今の俺たちの敵う相手じゃない!一旦退くぞ!」

メンバーは立ち上がると、広間の出口に向かって走り出した。しかしスケルトン系のMobに邪魔されて上手く進めない。

(俺一人ならボスもMobも倒せるかもしれない!だけど……みんなを庇いながらではそれも出来ない!!)

キリトは唇を噛み退路を確保しようとMobを倒していく。

「うわぁ!助けてくれぇ!!……ぎゃ!!」
「ササマル!!」

ササマルはMobの持つ骨の剣に串刺しにされ、ガラス片になって砕け散った。

「そんな……ササマルが……」
「くそ!この野郎!!」
「やめろテツオ!敵に背中を見せるな!!」
「ぐぁ!」

テツオがササマルを殺したMobの方を向いた時、それまで対峙していたMobの剣に切られた。そしてテツオもHPがゼロになり、そのまま……砕け散った。

「テツオ!」
「くっそぉ!!」
「待てダッカー!今は戻るのが先だ!サチを安全圏に連れて行く。それが最優先だ!」
「くっ!」

サチは武器を持っておらず、持っていたとしてもそれは低層用の武器しか使えなかった。
キリトとダッカーの間に挟まれたサチは自分の手を祈るようにして握る。

(お願い神さま!あの人を、アヤトをここに連れてきて!私たちを助けて!)

「アヤト!!!!」

サチは持てる限りの大声で叫んだ。サチの声が洞窟内に響く。しかし何も現れる感じはしない。

「ぐぁ!」
「ダッカー!」
「腕が……!俺の腕が!?」

ダッカーの腕が骨の剣によってスッパリと切られてしまった。それにより、持っていた槍も落としてしまう。
そしてMobはサチに向けて剣を上げた。

「きゃああ!」

サチは頭を手で抑え目を瞑る。剣は振り下ろされ、切られるエフェクトが起きr

キィン!!

金属がぶつかるような音が響く。目を開くとそこには

「なんで何も持たずにこんな洞窟に来るかな?」

アヤトが攻撃を受け止めていた。アヤトはそのままMobを切り倒す。

「アヤト!」
「どうしてここに!?」
「説明は後だ。キリト!またせたな」
「お前はいつも遅いんだよ!」

アヤトはキリトと対峙しているMobも倒す。

「あのデカイ奴が親玉だ。親玉の体を部位破壊するとそこからコイツらが生まれてくる。親玉を倒すには部位破壊せずにHPだけを削り切るしかない。おそらく、親玉を倒せば他のMobも自動的に倒されるはずだ。いけるかアヤト」
「わかった。ところで他の連中は?」
「それは……」

キリトが俯く。なるほど、これは絶対負けられないわけだ。アヤトは納得すると目を吊り上げていう。

「おっし!まずはこの雑魚共をぶっ倒して退路を確保する!いくぞキリト!」
「おう!」

俺たちは走った。Mobを迅速に一気にぶっ倒す。サチやダッカーには近づけさせないように。円を描くように倒していく。雑魚Mobはあと十数体になる。

「キリトいけるぞ!サチ達は出口を目指せ!」
「でもアヤト達が……」
「大丈夫だよ。俺もアヤトも絶対戻って来るからさ」
「そうそう。だからさ、先にホームで待っててくれ」
「……わかった」

サチとダッカーは出口を目指して走り出した。ダッカーは腕を切られているためか、バランスが悪いらしく上手く走れないようだった。
雑魚Mobはサチ達の方に走り出すが、アヤトが背中を切り込んだ。

「お前らの敵は俺たちだ。勘違いすんなよ」

もう少しで全ての雑魚Mobが倒される。その時、一体のMobがこれまでにない動きをしはじめた。手に持つものはまるで弓のようで、

「まずい!!」

弓持ちのMobは骨の矢をサチに向けて引き、離した。

「サチ!しゃがめ!!」
「え!?」

サチは振り向くと同時にサチの体は突き飛ばされた。サチは倒れ、顔を上げると

「ダッカー!!」

ダッカーの胸に骨の矢が刺さっていた。

「そんな!ダッカー!」
「サチ、お前は生きろよ。後、ケイタにゴメン……ってーーーー」

ダッカーはガラス片になって砕け散った。

「そんな……ダッカー……私のために……」

サチは泣く。自分の為に助けてくれたダッカーへの罪悪感で。

「泣くなサチ!今は逃げることが最優先だ!ダッカーの為にも!!」

サチはハッと顔を上げると出口に向かって走った。

「キリト、すまない。サチの方に行っててくれないか?」
「何言って……!?」

キリトはアヤトの手を見た。拳は握られプルプル震えている。

「頼む」
「……わかった。ただし約束しろ。絶対戻ってこい!」
「わかった」

キリトはサチの後を追っていった。見えなくなるまで見届けると、俺はスケルトン・ビシャス・レックスと雑魚Mobを睨みつける。

「◾️◾️◾️◾️ーー!」

ボスは咆哮を上げる。

「うるせぇよ……」

ダッカーを殺したMobが今度は俺に弓を引いてきた。
放たれた矢を俺は切り落とす。

「テメェら覚悟出来てんだろうな?」

再びMobが弓を構えた時、俺はソードスキル《レイジスパイク》を使い突進。そして切り上げて真っ二つにした。
残りのMob達は一気にかかってきたのを《クロス・アーク》で一掃した。

「残るはお前だけだぜ大将」
「◾️◾️◾️ーー!」

俺はなるべく壊れやすい肋骨ではなく、股間部分を切り刻んだ。
ボスの体力は残りわずか。ボスは俺を食おうと口を開けて顔から突っ込んできた。

「ホーリィ…………テンペスト!!!」

俺の片手直剣が光る。雪のようなエフェクトと共に俺の片手直剣からなる10連撃をボスの顔に浴びせることによって《スケルトン・ビシャス・レックス》はガラス片になって消滅した。 
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