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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生

作者:ノーマン
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33話:腹黒とザイ坊の婚約

 
前書き
shikashikaさんのご意見を基に一部改訂しました。2018/10/11 

 
宇宙歴766年 帝国歴457年 8月下旬
首都星オーディン ルントシュテット邸
ニクラウス・フォン・ルントシュテット

本来ならのんびり領地経営に勤しむ予定だったが、母上を踏まえて話しあわねばならない問題が先送りできないほど大事になりつつあったため、ルントシュテット家の年配組で急きょオーディンの屋敷に集まった。

次期当主として長男ローベルトも同席させるか迷ったが、自分の嫡男の誕生が引き金になった部分もあり、変にまじめな所があるローベルトが無駄に気にする事を考えて、母上と私たち夫婦でまず話しあうことにした。特に3男のザイトリッツについては母上に養育してもらったようなものだ。結婚の話を黙って進める訳にもいかなかった。

次男のコルネリアスは今年27歳。本来なら既に婚約どころか結婚している年齢だが、第二次ティアマト会戦の影響で適齢期の軍人系貴族の子女が少なかったことと、本人が門閥貴族や資金援助を目的とした話は断ってほしいと強く主張したため、良い話がなかなかまとまらなかった。
現在は中佐として尊敬するシュタイエルマルク上級大将の指揮の元、イゼルローン回廊を抜けて最前線の哨戒任務に出ている。功績をあげられればやっと長兄ローベルトの歩みに追いつけるなどと嬉し気に出陣していった。まさに親の心、子知らずだ。

三男のザイトリッツは今年20歳。こちらもすでに婚約者がいていい年齢だが、良い話がまとまらなかった。というのも、幼年から領地経営に関わり、RC社を設立して企業経営に関わり、士官学校に在籍しながらイゼルローン要塞の資材調達を取り仕切った。幼年学校から士官学校卒業まで10年首席。士官学校に行ったのは入学試験の時ぐらいだろうか。在籍中に要塞建設の功績を評価されて少佐任官。正直できすぎだし、それだけでも軍部系貴族の数少ない子女たちから恐れ多いと遠慮されていたのに、親しくしていたフリードリヒ殿下が、ご兄弟の自滅により帝位に就かれた。優良物件で由来もいいが正直遠慮したい物件になってしまった。
門閥貴族からすれば欲しい物件だろうが、3男は乳母を門閥貴族に殺められているし、事あるごとに門閥貴族とは一線を画す行動をしてきた。そんな話を持っていったらそれこそフェザーンに亡命でもしかねない。フェザーン?まさか婚約話から逃れるためにやけにごねてフェザーンに赴任したのだろうか?フェザーンに出発するときはとても楽しそうにしていた。こちらも親の心、子知らずだ。

そんな状況の次男・三男の婚約者探しだが、長男に男子が誕生したことで、嫁入りだけではなく婿入りという可能性が出たように思われたらしい。ザイトリッツが提案した施策により、領地は右肩上がりで発展しているし、イゼルローン要塞の資材調達を取り仕切った事で莫大な利益を上げたRC社も、アムリッツァ星域の第51補給基地を2個艦隊規模の駐留基地に改築する案件を単独受注して相変わらず好調。ザイトリッツの個人資産から最新型の造船所を、アムリッツァ星域とシャンタウ星域に新設する案件もかさなり、利益を上げ続けている。

つまり、男子がいない貴族家にとっても、優秀な当主候補がえられ、それなりに資金援助も期待できるという見逃せない物件になったのだ。結果として山のような婚約話が来ているし、ザイトリッツに至っては政府系の門閥貴族からも話が来ている。だが、ルントシュテット家は武門の家柄だし、家名に恥じぬように教育してきた。そんな彼らが婿入りを承諾するのか......。良い話でも婿入りは渋ると思う。

そんなこんなで切羽詰まった私は、母上の意見も踏まえて話を決める事にしたわけだ。特に3男のザイトリッツにとってずっと養育してくれた母上は絶対だろう。母上も承諾したとなれば無茶な事もしないはずだ。そしていまから家族会議が始まる。

「母上、いささか困ったことになりましたゆえ、私たちだけでは判断に迷うことも多く、本人たちに話す前に事前にご相談させて頂きたいのです。母上も了承しているとなれば、あの二人も従うでしょうし。」

「ニクラウス、ザイトリッツはともかく、コルネリアスは私の意向はあまり関係ないように思うけど。それにしても大量ねえ。喜ぶべきなのだろうけど、見合い写真が山積みというのは、貴族にとっては厄介でしかないものねえ。それでニクラウスはどういう考えなのかしら?」

「はい。この際、領地開発の支援は、むしろしない方が不自然でしょうから考慮するとして、門閥貴族からの話はお断りしようかと思っています。その上で軍部系貴族と辺境領主貴族のお話から選ぼうかと。当初は当家が持っている男爵株をコルネリアスかザイトリッツに継いでもらい、ルントシュテット家の血を太くすることも考えましたが、それはローベルトの世代に判断してもらおうかと。」

母上は少し考えていたが、了承の意味だろううなずいた。そしてこの辺のは除外ね。などと言いながら、山積みのお見合い写真の半分近くをより分けて処分箱に突っ込んだ。もう細かい事は気にせずに進める。

「コルネリアスについては、本人も喜びそうな話が1件だけ来ています。シュタイエルマルク提督にはRC社の造船の方でも何かとご意見を頂いている様子。本人もシュタイエルマルク提督の事は敬愛している様子ですし、領地もフレイヤ星域です。帝都との航路上なので、開発支援もたやすいでしょう。シュタイエルマルク提督は結婚されなかったので遠縁のレオノーラ嬢を養女にして婿入りする形になりますが。」

「第一候補ね。先に私とカタリーナで一度お茶会をしましょう。シュタイエルマルク提督の遠縁なら問題はないでしょうが、その方のご実家にも支援するつもりでいたほうがいいでしょうね。」

続いて3男ザイトリッツの件だ。こっちは母上が溺愛しているだけに婿入りの話はしにくいが、一番良い話に思えるものから判断したい。

「ザイトリッツに関しては辺境領主で年ごろが合いそうな子女がいる家からはほとんど話が来ていますが、良き話だと思うのはリューデリッツ伯のご孫女ゾフィー嬢とのお話です。唯一残った直系ですし、イゼルローン要塞の資材調達を取り仕切った件でリューデリッツ伯もザイトリッツをかなり見込んでいるところがあります。自分の後任にした手前もございますが、リューデリッツ伯は理論立てが成立する分野では優秀な男ですし、良い話だと思うのですが......。」

母上は少し不機嫌な様子で考え込んだ。

「RC社の利権の半分はザイトリッツの物です。その辺りはどう考えているのかしら?能力含め、外にだすには惜しすぎるように思えるけど。」

「はい。内々に男子が複数生まれた場合、当家の男爵株を渡す代わりにRC社の利権はそちらに相続させるなどの事前の相談は必要かと存じますが、リューデリッツ伯爵家はキフォイザー星域全体を領地として持っております。当家の領地とも接しておりますしザイトリッツも腕の振るいどころがあると思ってくれるのではと。また、内々ではございますが、同じく領地が接しているブラウンシュヴァイク公爵家から一門を婿として受け入れるように圧力をかけられているとか。キフォイザー星域は辺境星域では重要な航路でもあります。RC社の事業を考えても、横槍を防ぐ意味で、婿入りさせる価値はあるかと思います。」」

「分かりました。そこまで言うなら婿入りには反対しませんが、リューデリッツ伯は領地経営を担うために領地に引っ込むはずですね?その際はオーディンのリューデリッツ邸に私は移ります。こちらはビルギットがしっかり差配できるでしょうし、問題ないでしょう。」

「母上それは......。」

「この条件を含めないのならザイトリッツの説得は致しません。レオンハルト様の生まれ変わりと厳しく養育したのは私ですし、それに応えて、領地の経営案を出したりRC社を設立したのです。私がついて行かなくてはルントシュテット家にこれだけ尽くしたにもかかわらずいらないと思われたと誤解するやもしれませぬ。そんなことになるなら、この話は無しにした方が良いでしょう。」

「母上、我が子を脅迫するなど、帝国貴族の淑女にふさわしい行いとは思えませぬ。」

「あらそう?残念だわ。ならザイトリッツに『私は止めましたが貴方の父が勝手に話を進めました。この上はルントシュテット家の事は忘れて好きに生きなさい!』と言うだけです。」

そんな事を母上が言えば、ザイトリッツの事だ、どんな無茶をするか分からない。本来なら軍人ではなくビジネスで身を立てたかった節もある。フェザーンに亡命してルントシュテット家を別に立てるなどと言いかねない。

「分かりました。母上の要望は先方にお伝えしますし、婿入りにあたっての必須条件として交渉いたします。ですからそのようなことはおやめください。」

私がそういうと母上は嬉しそうにうなづいた。まさか母上がこんな無茶を言うとは。ザイトリッツに感化されておるのやもしれぬ。急に湧き出た難事に私は頭が痛くなる思いだった。 
 

 
後書き
貴族株については当主のみが知っている設定にしています。背景としては次男・三男が所持している貴族株をもらえる物と考えて研鑽を怠らない様にという配慮です。門閥貴族ではこのような厳格な対応はしていないと思います。
※追記 ご指摘いただいた事もあり「......」への表記統一を行いましたが、特に初期の物は原稿で執筆した後に投稿してから修正したりしていたので、誤字や改行に不備があるかもしれません。もしお気づきの点がありましたら、感想欄や誤字脱字報告フォームを通じて、教えて頂ければ幸いです。2018/10/08
 
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