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勇者番長ダイバンチョウ

作者:sibugaki
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第23話 激突、星雲組!? 男とは、時に敢えて道を踏み外す事もある(後編)

 
前書き
今回とある作者さんのところのキャラクターが登場しています。わかる人居るかなぁ? 

 
 それは、まだ星雲組の実権が若き22代目の手にあった頃の事だったーーー

 先代組長の突然の死を受け、若き息子がその座を引き継ぐ事となった。
 しかし、年若く修羅場の経験も浅い若者に仁義を貫く星雲組の舵をまともにとれる筈などなく、組の力は著しく減退してしまったのは誰の目にも明らかな事であった。
 それでも、今は亡き父が残した誇りと組を守り抜く為に、若者は粉骨砕身の思いで頑張り続けた。
 しかし、この世は弱肉強食の時代。
 少しでも力が弱まったと知れ渡れば瞬く間に食い尽くされるのがこの時代の常であった。
 長年の宿敵でもあった星雲組が弱まったのを知り、極悪組がその好機を逃す筈がなく、直ちに行動を開始した。
 まず、若い組長の元へ多額の金を密かに送り付けてきた。
 
 当時の額からして生命の生存が可能な惑星を一つ購入できるほどの額でもあった。(地球換算で言えば大陸一つ買える位の額)
 無論、若き組長はその受け取りを固辞した。
 その金の意味を知っていたからだ。
 若き組長は送られてきた金を全てゴクアク組へと送り返し、複縦への否定の意思を伝えた。
 するとゴクアク組は更に非道な策を講じてきた。
 それは、どの派閥にも属さない無関係な星々を次々に攻撃し始めだした。

『この無慈悲な行為を終わらせられるのは若いあんたの判断一つだ。懸命な判断を期待する』

 次々と破壊される文明と緑。そして殺されていく罪なき命。
 若き組長にそれを静観出来る度量はなく、止む無くゴクアク組への全面降伏を受け入れる事となった。





     ***




『この後、古参の幹部はばらばらに幽閉され、若い組員は皆ゴクアク組の使い捨てとして組み込まれる形となった。こんな結果を招いてしまったのは一重に私の力のなさが招いた事。父の代から仕えて来た者たち、並びに入って間もない若者たちには辛い思いをさせてしまい申し訳ない。最後に、レッド兄さん・・・もし、この手紙を読むことができたのなら、私の事は死んだと思い、星雲組を貴方の手で蘇らせて下さい。こんな事を文面で言うのは誠に心苦しい限りなのですが・・・兄さんの期待に応える事が出来ず申し訳ありませんでした』

 渡された遺書を読み終え、レッドは湧き上がる感情を抑えきれず、手元の書状をくしゃくしゃに握り絞めてその手を震わせた。

『俺たちも、初めは組長を恨んだりもしました。ですけど、この書状を読み、組長の真意を知った時、自分たちの配慮の無さを恥やした』
『その後、あっしらはゴクアク組に従う素振りを見せながら、レッドの兄貴を探し続けたんです。そして、ようやく見つける事が出来やした』

 そう告げるとこれまた盛大に涙を流す子分二人。

『許せねぇ・・・今度ばかりは心底頭に来るぜ! ゴクアク組の野郎共め』
『俺もだぜ。人の弱みに付け込むなんざ極道の風上にも置けねぇ奴らだ!』

 隣で聞いていた番とドリルの怒りのボルテージは正に限界突破寸前にまで達していた。

『だけどまぁ、その古参の幹部ってのは守が助けに行ってるから問題はなさそうだけどさぁ、後はあんたらみたいな下の子分達がどこに居るかが問題じゃないのかぃ?』
『茜さんの言う通りですよ。何か方法はないんですか?』
『その点でしたらあっしらにお任せ下さい』

 茜やレスキューの疑問にハジが胸を叩いて名乗り出てきた。相当な自信があるのだと伺えられる。

『あっしら星雲組の者は皆、こう言う時に備えて秘密の暗号電波を出し合ってるんです。まだゴクアク組の連中にも探知されてないトップシークレットな奴ですよ』
『そげな凄いもん一体どうやって手に入れたんじゃ? ゴクアク組に使いッ走りにされてる身分じゃ到底手に入れられんじゃろうが』
『前にあっしらに接触してきた確か・・・宇宙警備隊とか言う組織の若いお偉いさんが渡してくれたんでさぁよ』
『宇宙警備隊じゃと?』

 何故ゴクアク組の、それも雑用同然の扱いをされているハジやサブに宇宙警備隊が接触を図ったのだろうか。
 
『何故かは知りやせんが、そん時にこんな事も言ってやした。【君たちの探し求めている者はきっと地球と言う星にいる筈だよ】って』
『わしの事を知っとったっちゅう事かぁ? 益々謎じゃのぉ。そもそもわし、宇宙警備隊なんぞと言う組織と関わりなんぞ持っとらんのじゃが』

 一体誰が、そして何の目的でこんな事をしたのか。謎は深まるばかり。

『ま、分かんねぇもんは仕方ねぇや。それよりこれからどうすっかだよ』
『まずも何も、今は守の連絡待ちね。下手に動いてこっちの動きを奴らに悟られるのは面倒だからねぇ』
『何だよ。結局また何時もと同じ待ちの一手かよ』
『ぼやいたってしょうがないじゃないか。それより、そろそろ引き上げるよ。これ以上此処に至って目立つだけだしねぇ』

 茜の号令に半ば不満ながらも番は納得した。一応形だけでもと言う感じでハジとサブには緩めに縄を掛けた。
 こうする事でゴクアク組に属する手下二人を捕縛したと言う口実が出来上がるからだ。

『すまんのうおまんら。わしもこげな事はしたくはないのじゃが』
『気にしないで下さい兄貴。これも俺たち星雲組復活の為です』
『そうでさぁ! 兄貴が生きてて、そんでもって星雲組が復活出来るってんなら、俺ぁ地獄の果てでも突っ走って行けまさぁ』
『はいはい、お喋りは其処まで。捕虜は捕虜らしく大人しくしな』

 そんな訳でハジとサブの二人を捕虜としてバンチョウベースへ連れて行く事となった。
 これが切欠となってゴクアク組の連中が星雲組の構成員を差し向けてくれれば御の字。
 そうでなくても守の連絡を皮切りに宇宙全土に二人が持っていた特殊電波で通信を送る手筈になっている。
 事の成否は時間次第となった。




     ***




 宇宙へと飛び出したウラバンチョウは、ハジとサブから渡された星雲組幹部のデータを元に彼らの幽閉されている小惑星に次々と襲撃を行っていた。
 警備をしていたのはどれもチンピラクラスの下っ端ばかりであった為に難なく救助をする事が出来た。

『あんたは、宇宙警察じゃないのか?』
『今は訳あって、貴方がたの味方です。安心して下さい』

 突如自分たちを助けに来たのが本来敵同士でもある宇宙警察の者だったので激しく面を食らう幹部達であったが、守の説得により現状を理解し、同行してくれる事になった。
 救出出来た幹部は全部で約10名ほど。本来はもっと大勢居たのだろうが、ゴクアク組の拷問を受け続けたが故に死亡し、宇宙へと廃棄されてしまったのだと言う。

『それは・・・さぞ、お辛いんでしょうね』
『嫌、俺たちの痛みなんぞ大した事じゃない。それよりも頼む。組長を助けてくれ! 組長が死んだらそれこそ星雲組はおしまいだ』
『組長? まだ人質が居たのか』

 直後だった。突如として守達の居た地面が揺れだし、地上に巨大な何かが姿を現した。
 全長約100mはあるだろうか。八本の足を持つ大型無人兵器が姿を現した。
 外見は蜘蛛を模した姿となっており、顔を表す場所にはレンズ式のレーザー発射装置に加え大型バルカン砲まで取り付けられている。
 更に体の各所には多種多様な武器が搭載された正に動く要塞と呼べる代物だった。
 しかも、その無人兵器の上には傷ついた一人の男が拘束されているのが見えた。
 全身につけられた拷問の後が痛々しく映る。

『く、組長!!』
『組長? あの人がそうなのか』

 厄介な事に一番助けなければならない者を盾にされてしまった。
 その事に守は歯噛みする。

『グハハハ! ご苦労だったな宇宙警察の裏切り者め。貴様がこうして星雲組の幹部を助け出したのは驚いたが逆に考えればこれは好都合。これを皮切りに星雲組の幹部を皆殺しにしてくれるわ!』

 無人兵器から発せられたのはチンピラ看守の声だった。恐らくウラバンチョウに襲われ、おめおめと星雲組の幹部達を逃がしたとあっては一大事。
 こうなれば背に腹は代えられぬと隠しおいていた大型兵器を起動させたのだろう。
 更に言えば、今大型兵器に拘束されているのは星雲組の心臓部とも言える組長を人質として捕らえてしまえば連中は手も足も出せなくなる。
 そうすれば始末に困っていた星雲組の幹部を始末する事が出来る。
 そうすれば今回の失態も有耶無耶にして貰えるだろう。
 そう考えた末の奇策なのだろう。

『良いか、一歩でも動いてみろ。てめぇらの大事な組長さんは蜂の巣になるぜぇ!』

 大型起動兵器上部の銃座が一斉に拘束されていた組長へと向けられる。
 少しでも動けば組長を蜂の巣にする為だ。

『く、組長!!』
(どうする、僕一人のエネルギーじゃジャスティスキャノンは使えない。何より、あれは威力が高すぎて幹部の人たちや組長にまで被害が出てしまう。だけど、このままじゃ何も出来ずにただやられるのを待つだけだ。一体どうすればーーー)

 組長を人質に取られてしまい一歩も動く事が出来ない幹部達とウラバンチョウ。
 其処へ大型起動兵器からの一斉砲撃が浴びせられる。
 バルカン砲が、ミサイルが、レーザーが、大砲が、ありとあらゆる攻撃がウラバンチョウ達に襲い掛かる。

『皆、僕の後ろに!』
『し、しかし! それではあんたが!?』
『僕のウラバンチョウなら少しは耐えられる。今此処で貴方たちを失う訳にはいかないんだ!』

 幹部達を庇う為に、自分を盾にして全ての攻撃を受け止める。
 それは、如何にウラバンチョウと言えどもかなりきつい事だ。
 その証拠に爆煙が止んだ後には、片膝をつき、傷ついたウラバンチョウが其処には居た。

『ふん、憎きダイバンチョウの仲間を一人討ち取ったりだ! 覚悟しやがれ!』

 全ての銃口が皆ウラバンチョウへと向けられる。だが、その刹那、全ての銃口が一瞬の内に切断されてしまった。

『だ、誰だ!?』
『今のは・・・』

 突然の襲撃にウラバンチョウは勿論の事、チンピラですら驚きの声をあげる中、その中心に一体のロボットが降り立った。
 
『誰だてめぇは!』
『お前たちのような悪党を許さない正義の使者、とでも言っておこうか』
『生意気な事言いやがって!』
『おいおい、三下でももう少し台詞を考えるべきじゃないのか? 使い回し一辺倒じゃ飽きられるだけだぞ』
『うるせぇ若造が! そんなに死にてぇんならてめぇが先に死ね!』

 搭載している武器がなくなってしまったので仕方なく八本の足で攻撃を仕掛けようとするが、そんな程度の攻撃など涼しい顔で避ける謎のロボット。

『其処の君、まだ動けるかい?』
『は、はい・・・大丈夫です』
『だったら、私があの無人兵器を倒す。君は組長を救い出すんだ』
『分かりました!』

 謎のロボットの支持を受け、ウラバンチョウは立ち上がる。
 そして無人兵器の頭上へと飛翔し、拘束されていた組長を無人兵器から取り外し、幹部達の元へと降り立つ。

『組長!』
『後は頼みます。僕はあの人と共に無人兵器を倒します』

 幹部達に後を託し、ウラバンチョウは謎のロボットの隣に並び立つ。

『お待たせしました!』
『嫌、それほど待ってないから安心したまえ』
『一つお伺いしても良いですか。何故、貴方が僕たちに助太刀してくれたんですか?』
『話はまず、あのでかぶつを倒してからにしよう』
『分かりました!』

 両者が並び立つ。武器を失い、やたらめったらに足を振り回すだけの木偶の坊など、ウラバンチョウ達の敵ではなかった。

『これで決めるぞ。ソウルブレード!』
『ならばこちらも、ジャスティスソード!』

 二体揃って両刃の大剣を取り出し、目前の敵めがけて一直線に突進した。
 ウラバンチョウは右から、謎のロボットは左から敵ロボットへと切り掛かる。

『そ、そんなぁ・・・やっぱ俺って三下のままで終わんのかよぉ』
『ふっ、次からはもう少し台詞のパターンを増やす事だな』
『こんちくしょう! 化けて出てやるからなぁ! 覚えてろーーー』

 台詞を言い終わる前に爆発してしまい、結局言えず仕舞いに終わってしまった。
 哀れと言えば哀れに見えなくもない。

『やれやれ、やられる時まで筋書き通りとは、恐れ入るよ』
『有難うございます。お陰で助かりました』
『気にしなくて良いよ。と言うのも、これも私個人のお節介みたいなものだからね』
『と、言いますと?』

 守の問いに、謎のロボットはシニカルな笑みを浮かべて見せた。

『本来、君たちの戦いに我々は介入するつもりはなかった。元を辿れば君たち星雲組とゴクアク組。どちらも悪でしかない組織。私たち宇宙警備隊がその戦いに介入する事は、宇宙の秩序を乱しかねない危険な行為なんだ』
『じゃぁ、なぜ今回は僕たちの手助けを?』
『君の献身的な振る舞いと、どんな窮地でも諦めないその勇気に感動したからだよ』
『僕の?』
『君は身を挺して彼らを庇った。そして、どれほど傷ついても決して諦めようとはしなかった。その姿勢に私は心を打たれたんだ』
『貴方は・・・一体誰なんです?』

 守の問いに、謎のロボットは暫し考えた後に、さわやかな笑みを浮かべた。

『そうだな、私の事は炎の騎士、〈フレイムナイト〉とでも呼んでくれ』
『炎の騎士・・・フレイムナイト』
『さぁ、それよりも急いで地球へ向かうとしよう。こんな事をしている間にもゴクアク組は残った星雲組の構成員を総動員して地球へと攻め込んでくる筈だ。その時こそ・・・彼ら星雲組が再びこの宇宙に蘇る時だよ』




     つづく 
 

 
後書き
次回予告


「ゴクアク組の奴ら、今度は星雲組の構成員を総動員して攻め込んできやがった。いい加減にしやがれ! お前らの悪事もこれまでだぜ! 今日から星雲組は復活するんだ!」

次回、勇者番長ダイバンチョウ

「復活、星雲組!! 立ち上がれ、熱き仁義の極道たちよ」

次回も、宜しくぅ!! 
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