戦国異伝供書
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第十話 朝倉攻めその三
「全力でじゃ」
「その家を降しますか」
「相手の家を個々に降すぞ」
これが信長の考えだった。
「一度に幾つもの家を相手にはせぬ」
「それはしませぬな」
「決してな」
香宗我部に対して言い切った。
「そうしては厄介なことになるからのう」
「相手の家を一つ一つ降し」
「そうして天下統一を進めていくのじゃ」
「だからこそ、ですな」
稲葉も言ってきた。
「朝倉家も」
「そうじゃ、これを機にじゃ」
「一気に降しますか」
「例え宗滴殿がおられようとも」
天下の名将と謳われる彼がいてもというのだ。
「それでもじゃ」
「時をかけずですか」
「朝倉家を降しますか」
「何があろうともな」
氏家と安藤にも答えた。
「そうするぞ」
「はい、では」
「すぐに兵を向ける用意を」
二人も応えてだった、織田家は朝倉家との交渉を進める中で戦の用意をはじめた。そしてであった。
用意が整ったところでだ、平手が信長に言った。
「先程朝倉家のことが伝わりましたが」
「うむ、わしの文をじゃな」
「封も切らずです」
つまり読むこともせずだ。
「そのままです」
「突き返してきたか」
「左様です」
「わかった」
これが信長の返事だった。
「ではな」
「はい、これよりですな」
「戦じゃ、して竹千代にもじゃ」
家康、彼にもというのだ。
「このことを伝えよ」
「わかり申した」
「一旦都に十万の兵を集めてじゃ」
「そこで徳川殿と合流し」
「そうしてじゃ」
「出陣ですな」
「越前にな、そしてこのことをじゃ」
この出陣のことをとだ、信長はさらに言った。
「天下におおっぴらにじゃ」
「喧伝しますな」
「朝倉家の過ちと当家の戦の正しさ、そしてじゃ」
「兵の数も」
「全て喧伝する、十万の兵と徳川家の軍勢も攻める」
まさにこのことをというのだ。
「このことを大いに天下に知らしめてな」
「そしてそのうえで、ですな」
「当家の力も言うのじゃ」
「十万の兵を出せて自在に動かせる」
「このことをな」
まさにと言うのだった。
「よいな」
「わかり申した」
平手は信長にこう応えた。
「では」
「そしてな」
「さらにですな」
「爺、お主は先に話したが」
「これまで通りですな」
「この岐阜に残ってじゃ」
そうしてというのだ。
「留守を頼むぞ」
「わかり申した」
平手は信長の命に確かな声で応えた。
「それではその様に」
「さて、問題はやはりな」
「宗滴殿ですな」
「あの御仁とどう戦うか、しかし金ヶ崎の城を攻め落とし」
そうしてと言うのだった。
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