永遠の謎
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100部分:第七話 聖堂への行進その七
第七話 聖堂への行進その七
「私もまたな」
「しかし陛下」
「お言葉ですが」
「あの方が」
「わかっている。シシィはオーストリア皇后だ」
このこともだ。忘れたことは一度もなかった。
「安心するのだ。私はあの方にはそうした感情は抱いてはいない」
「そうですね。陛下に限って」
「それはありません」
「決して」
何故ないか、王は女性を傍に寄せない。常に整った姿形の青年達を傍に置いている。それが王の嗜好であるのを。彼等は知っているのだ。
「だからです。それは」
「言われてみれば我等もです」
「それにつきましては」
「そうだな。ならばいい」
王もだ。彼等の言葉に今は安心していた。
そのうえでだ。彼はこうも言うのだった。
「私とあの方はだ」
「はい」
「それでも好意をですね」
「心だ」
王は言った。
「心でつながっているのだ」
「心でといいますと」
「どういうことですか、それは」
「一体」
「私達は共に翼を持っている」
またこう話すのだった。彼等にもだ。
「そういうことだ」
「?それは一体」
「お言葉ですが陛下」
「それは」
「わからなければそれでいい」
王はここでは多くを求めなかった。
「それでな」
「左様ですか」
「そうなのですか」
「そうだ。いい」
また言う王であった。
「それはな」
「わかりました。それでは」
「今はですね」
「とにかく舞踏会の用意だ」
そちらを優先させるというのである。
「わかったな」
「はい、わかっています」
「ですから今より」
「そういうことだ。頼んだぞ」
こうして舞踏会の為の準備をさせる王だった。そうしてだった。
華やかなその舞踏会に出る。するとだ。
みらびやかなドレスに身を包んだ貴婦人達がだ。王の姿を見て感嘆の声を漏らした。
「お話には聞いてましたけれど」
「ええ、そうですね」
「あれだけお奇麗な方だとは」
「思いませんでした」
王をはじめて見る貴婦人達はこう言った。そして見たことのある彼女達は。
「普段よりもさらに」
「礼服姿もお美しい」
「まるで絵の如くですね」
「そうですね。そこまでの方ですね」
彼女達もまたその美貌を褒めるのだった。それは紳士達も同じであった。
「ううむ、見事です」
「やはり絵になる方です」
「ただ整っているだけでなく」
それだけではないというのである。
「気品もありますね」
「王に相応しい方です」
「それだけのものがあります」
誰もが口々に王を賞賛する。そしてそれは。
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