ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第十二幕その九
「トミーや王子、動物の皆に私が世話はするけれど」
「ははは、女の人だね」
「結婚してくれてね」
「それだけはないね」
ここでも笑って言う先生でした。
「僕の場合はね」
「またそう言うんだから」
「このことは自信がないんじゃなくてね」
「はっきりわかっているっていうのね」
「そうだよ。僕はもてたことはないし」
「今もそうで」
「これからもだからね」
女性とは全く縁がないというのです。
「それはないよ」
「やれやれね。けれどね」
「けれど?」
「兄さんの短所の一つね」
「自信がないことかな、けれどね」
「違うわよ」
これは事実だと言おうとしたお兄さんに先に言いました。
「あることについての事実誤認よ」
「あることについて?」
「ここまでのお話で結構ヒント出してるわよ」
「そうかな」
「そうよ。薔薇園を愛さない人はいないわよ」
このことを言うサラでした。
「そして女の人なら余計によ」
「そんなものかな」
「言っておくわよ。私学生時代数えきれない程兄さんに紹介してって言われたのよ」
「女の人から?」
「そんなことがどれだけあったか」
先生のお心の素晴らしさに参ってしまってです、そうした人が実は昔からかなり多かったみたいです。
「わからない位だったのよ」
「それは作り話だね」
「やれやれ、そこでそう言うのがね」
「そう言うのが?」
「兄さんの事実誤認よ」
「そうなのかな」
「そうよ。そんなのだったら」
それこそというのです。
「私もまだまだ気苦労が必要みたいね」
「だから結婚とかは僕には縁がないからね」
まだこう言う先生でした、ですが。
サラはそれでも先生に言うのでした、事実誤認だと。そうしたお話もしながら先生と楽しい時間を過ごしてから帰国したのでした。
その翌日先生はこの日も薔薇園に皆と一緒に行きました、そしてそこにある薔薇達を観ながら皆に言いました。
「僕は薔薇園なのかな」
「言われてみればそう?」
「そうよね」
「先生のお心にある薔薇は何かっていうと」
「これと言って一つに言えなくて」
「だったらね」
「先生は薔薇園だね」
「色々な薔薇が咲き誇っている」
「広いそこだよ」
それが先生だというのです。
「本当にね」
「そうなるわね」
「サラさんの言う通りだよ」
「いいものを一杯持っていてしかも凄く心が広いから」
「先生は薔薇園だよ」
「いや、考えてみたらね」
トートーが言ってきました。
「先生みたいな器の大きい人が一つの薔薇で言い表せるか」
「無理なお話だったね」
ジップも言います。
「いいものも一杯持っているから」
「そう考えていくと」
ガブガブが続きました。
「先生は薔薇園になるね」
「赤薔薇とか白薔薇とか決められないね」
「先生みたいな人は」
チープサイドの家族も言うのでした。
「もう薔薇っていうと」
「とても広くて沢山の種類の薔薇がある薔薇園だよ」
「そしていつも咲き誇っている」
ポリネシアは先生を見て言いました。
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