ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第十二幕その八
「縁が出来ているのね」
「今はそうなんだ」
「そうなのね」
「それで今はね」
さらにお話する先生でした。
「もう一つあるよ」
「もう一つっていうと」
「うん、最近皆僕の心に薔薇があるって言うんだ」
「兄さんの心に」
「そうなんだ。けれどどの薔薇かっていうと」
それはというのです。
「はっきりわからないんだ、薔薇園に行ってもね」
「兄さんの心にある薔薇はどの薔薇かは」
「赤薔薇か白薔薇かね」
「薔薇といっても色々よね」
「それでね」
その為にというのです。
「果たして僕の心にある薔薇はどんな薔薇かってなっているんだ」
「兄さん自身はどう思ってるの?」
サラは先生ご自身に尋ねました。
「どの薔薇が自分に一番相応しいとか似合ってるとか思ってるのかしら」
「それは考えていないよ」
先生はサラにこう答えました。
「僕自身はね」
「そうなの」
「うん、実はどの薔薇でもね」
「兄さんはいいっていうのね」
「赤薔薇でも白薔薇でもね」
「どんな薔薇でもいいのね」
「そう思ってるよ」
先生もお煎餅を食べています、そうしつつサラにまた答えるのでした。
「僕としてはね、それでね」
「私はどう思うかなのね」
「うん、サラはどう思うかな」
妹さんのお顔をじっと見て尋ねました。
「僕はどの薔薇なのかな」
「薔薇園じゃないの?」
サラはお兄さんの質問に即座に答えました。
「兄さんは」
「薔薇園って?」
「だから。薔薇園なのよ」
こう言うのでした。
「兄さんは」
「それはどういうことかな」
「どういうことかって。兄さんはいい面が沢山あるし」
まずは先生のこうしたことをお話するのでした。
「温厚で公平で寛容で気長でね。礼儀正しい紳士だし」
「そうした長所があるからなんだ」
「真面目で努力家でね。まあ鈍感過ぎてスポーツは全然駄目で自信はないけれど」
「その三つは僕の欠点だね」
「あと博愛主義でもあるから」
このことも先生の長所だというのです。
「絶対に怒らない人だしね」
「それは気長と似ているけれどね」
「もっといいでしょ。とにかくね」
「僕は長所が一杯あるからなんだ」
「そして寛容さでね」
この長所でもというのです。
「誰でも何でも受け入れてるわね」
「動物の皆もかな」
「ええ。昔から人種や宗教や職業、そして階級にも捉われていないわね」
欧州では難しいことみたいです、宗教対立や階級対立が長い間続いてきた地域であっただけにです。
「何でも受け入れる寛容さもあるから」
「僕は薔薇園なんだ」
「ええ、広くてあらゆる薔薇が咲き誇っているね」
「そう言われるとは思っていなかったよ」
先生も驚くことでした、サラのそのお言葉には。
「薔薇園なんてね」
「私はそう思うわ。兄さんはとても素晴らしいものを一杯持っていてね」
「いいものなら何でも受け入れるからなんだ」
「薔薇なら薔薇園よ。後はね」
「後は?」
「薔薇園を愛してくれる女の人だけね」
このことはくすりと笑って言うサラでした。
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