| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九話 天守その十二

「贅沢出来るわ、ねねもお主の女房もな」
「皆ですな」
「贅沢が出来るぞ、そしてやがてはな」
「我等の子達もですな」
「その跡を継いで大名となっていく」
「夢の様ですな」
「全くじゃ、しかし子じゃが」
 これの話になるとだ、羽柴の顔は少し暗くなった。そうして秀長に対してこんなことを言ったのだった。
「わしもお主もな」
「はい、どうしても」
「出来ぬのう」
「左様ですな」
「二人共種なしではあるまい」
「まさか。それは」
「ないな」
 こう弟に問うた。
「流石に」
「そう思いまするが」
「子を授かる湯に行くか、そして神社や寺に参ってな」
「祈願もしますか」
「そして精のつくものも食ってな」
「兎角ですな」
「何でもしてじゃ」
 出来ること全てをというのだ。
「子を授かるか」
「そうしていきまするか」
「二人共な」
「子が出来ぬでは」
「折角大名になってもな」
「家が続きまえぬ」
「それでは何にもならぬ」 
 家としてとだ、羽柴も言うのだった。
「だからな」
「何としてもですな」
「子が欲しい、又左殿なぞじゃ」
「はい、お松殿との間に」
「次から次に子をもうけておるぞ」
「よいことですな」
「殿も子沢山じゃ」
 信長もというのだ。
「明智殿なぞ見よ」
「たま殿ですな」
「あの奇麗なこと」
「まさに珠の如きですな」
「子がおることはよいのう」
 羽柴はしみじみと思うのだった。
「やはり」
「全くですな」
「そう思うからな」
「我等はただ家の禄を上げるだけでなく」
「母上達に贅沢をしてもらうだけでもないぞ」
「はい、我等も子をなし」
「子孫に大名として残ってもらおう」
 こう言ってだ、羽柴は秀長と共に子も授かる様に願いそちらにも努力していた。だがこればかりはどうにならないままであった。


第九話   完


                   2018・7・8 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧