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空に星が輝く様に

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63部分:第六話 次第にその一


第六話 次第にその一

                   第六話  次第に
 四月が終わりゴールデンウィークも終わった。陽太郎は自分の教室で今は自分の席でへばった感じで寝そべっていた。その彼に椎名が声をかけてきた。
「疲れた?」
「休み終わったからな」 
 そのへばったままの様子で彼女に返したのだった。
「だからなあ。もうな」
「ゴールデンウィークの間何してたの?」
「部活」
 やはり姿勢は寝そべったままだ。
「それ以外には何もな」
「部活だけ?」
「ああ。部活行って家帰って勉強してパソコンやって」
「他は?」
「本読んで。それだけだよ」
「太宰?」
 具体的にはどの作家のものなのかを尋ねる椎名だった。
「まだ読んでるの?」
「太宰はあらから読んだから」
「そうなの」
「ああ。今読んでるのは三島由紀夫」
 その作家だというのだ。尚三島は太宰を終生嫌っていたことで知られている。学生時代に本人に向かってその文学は嫌いだと言ったこともある。そしてかなり辛辣な、いささか感情的とも取れる批判した文章も残している。
「それなんだよ」
「そう。三島なの」
「西堀の薦めでな」
 具体的には彼女からの薦めであった。
「それなんだ」
「三島も薦めたから」
「やっぱり椎名が薦めたのかよ」
「うん。そうなの」
 やはり彼女だった。
「三島由紀夫もいいでしょ」
「まあな。文章奇麗だしな」
「それでどの本読んでるの?今は」
「潮騒」
 三島の代表作の一つである。海を舞台にした若者達の純愛ものである。三島はそうした恋愛ものを好んだ作家であるのだ。
「それだけれどな」
「そう。潮騒なの」
「ああいう恋愛もいいよな」
 そしてこんなことを言うのだった。
「いや、実際そうした恋愛ってそうそうないけれどな」
「ないと思えばない」
 陽太郎の今の言葉への突っ込みだった。
「あると思えばある」
「あるんだ」
「そう、ある」
 また言う椎名だった。
「それでだけれど」
「ああ。何?」
「起きる」
 こう彼に告げた。その寝そべったままの彼にだ。顔は彼女の方に向けているが目だけを動かしている。そのうえでの会話であるのだ。
「そんな状況じゃだらしない」
「何か元気出ないんだよ」
「だからか」
「そう、駄目だから」
 また言う椎名だった。
「早く起きる。だらしないのは駄目」
「別にいいじゃないか。まだ授業じゃないしさ」
「授業になったら起きる?」
「起きる。とりあえず今はゆっくりさせてくれ」
「わかった。じゃあいい」
 そこまで聞いての言葉だった。
「そのまま寝ていればいい」
「悪いな」
「これを使えばもっとぐっすりと寝られる」
 そしてここで懐から何かを出してきた。見ればそれは。
「おい、何だよそれ」
「トンカチ」
 金鎚を手にの言葉だ。左手に持っている。
 
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