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空に星が輝く様に

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59部分:第五話 部活でその八


第五話 部活でその八

「それはどうかしら」
「いいんじゃないかしら」
 月美は目を少ししばたかせてから椎名の問いに答えた。
「それで」
「じゃあ何食べよう」
「パン?」
 月美はふとした感じで述べた。
「それとかは」
「そうね。おやつみたいな感じね」
「ほら、今食べてるの食べ終わったら」
「わかった。じゃあそうする」
 月美の言葉を受け入れたものだった。
「それ食べるから」
「じゃあ早く御飯食べてね」
「そうね。ところでつきぴー」
「何?」
「斉宮どう?」
 今度は彼のことを問うたのだった。
「斉宮はどうなの」
「斉宮君が?」
「一緒の電車での行き帰りだよね」
「ええ、そうだけれど」
 月美も素直に答える。カレーを食べながらだ。
「その時のことよね」
「うん。どう?斉宮」
「優しい人だと思うわ」
 まずはこう答えた月美だった。
「それに素直な人で」
「素直なのは確かよ」
 それはその通りだという椎名だった。
「馬鹿正直とも言うけれど」
「馬鹿正直って」
「実際そうだから」
 やはり椎名の言葉には毒がある。しかも意識してしている。
「あいつそういう奴」
「けれど嫌いじゃないのね」
「うん、私嫌いな奴とは話もしない」
 自分のその主張も言うのだった。
「というか近寄りもしない」
「そうよね。愛ちゃんって好き嫌いはっきりしてるから。というよりは」
「いうよりは?」
「嫌な奴にはそれなりのことをするから」
 これが椎名のポリシーだった。彼女は黙っているだけで終わらせる人間ではない。相手にはそれなりの態度で返す人間であるのだ。
「斉宮はいい奴」
「愛ちゃんはそう思うのね」
「つきぴーと一緒にいていいから」
 そうも言うのだった。
「けれど何かあったら私もいるから」
「有り難う」
「それじゃあこれを食べたら」
 話はそこに戻った。食べ物についてだ。
「それからだけれど」
「パンね」
「食べる」
 やはりそうするというのである。
「ちゃんとね」
「わかったわ。じゃあ私も」
「うん。ところでつきぴー」
 椎名はまだうどんを食べている。そのうえでの言葉だ。
「今困ってない?」
「困ってるって?」
「私は何時でもつきぴーの味方だから」
 こう言うのである。
「困ったことがあったら何時でも何でも言って」
「ええ、それじゃあ」
「いじめられていたら絶対に許さないから」
「私を?」
「そんな訳ない」
 月美自身ではないというのだ。その言葉は揺れ動かない言葉だ。
 
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