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NARUTO日向ネジ短篇

作者:風亜
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【お前の物語】

 
前書き
 ネジ生存ルートの、中忍試験とナルト奪還後の話で、ネジは中忍試験の試験官ではなかった設定です。映画とアニメの展開が混同しています。

生存していて優秀な白眼を持つネジが試験官をしていないのは寧ろおかしいくらいですが、ネジが早々にボルトの不正を見抜いていると話の筋が色々違ってくるので(生存させている時点で相当違いますが)、大戦時に身体的後遺症を負っていて既に忍を引退しているか日向当主をしているかもしれないネジ、という事にしておきます。 

 
「ボルト……、お前は本当に反省しているのか?」

 モモシキ、キンシキからナルトが奪還されて一週間近く経ち、色々落ち着いてきた頃合に従甥を家に招いたネジは、そう問わずにはいられなかった。

「してるってばさ! シンキには直接頭下げたし、同じ班のサラダとミツキには謝っといたし、もちろんシカダイにも……他の班のみんなにもさ。オレが不正して勝っちまって、二次試験と三次試験で負けたことになって早々に里に帰っちまってた霧隠れの三兄弟とか、雲隠れのユルイとかには謝罪文送っといたし……」

 その割には反省の色が余り見られず、不貞腐れているように見えるのは気のせいだろうかとネジは思う。

「科学忍具だって元々オレに勧めてきたのはカタスケのおっちゃんだし……、まぁ使うって決めたのはオレだけどさ」

 試験官の目を掻い潜って科学忍具を使用していたのは、ある意味優れた技量ともいえる。ボルトは器用な方ではあるが、如何せん自分から努力するという意識が足りていない。サスケに修業をつけてもらっていてすら中忍試験で科学忍具に頼ってしまったのだ。

「自分で強くなるよりも先に、父ちゃんにオレを見てもらいたくて焦っちまって……。二次試験から科学忍具使って不正勝ちしちまってたけど、父ちゃんからメールでおめでとうとか言われたり、直接部屋に来て応援されたりして……複雑な気持ちもあったけど、それよりも父ちゃんに気にかけてもらえてたのが嬉しくてさ……。三次試験じゃ直接見てくれてたし、かっこ悪ぃとこ見せたくなかったから──」


「……お前のそういう所は、ヒナタに似ているな」

 どこか苦笑気味の微笑を浮かべたネジに、ボルトは怪訝な表情になる。

「へ? オレが、母ちゃんに?? どういうことだってばさ、おじさん」

「ナルトに見てもらいたいという、その気持ちがだよ。……俺と対戦した中忍試験でも、ヒナタにはそういう傾向があったんだ」

「ネジおじさん、中忍試験で母ちゃんと対戦したことあんのッ?」

「本戦の前の、予選試合でな。……ナルトから激励の声を掛けられたヒナタの目付きが変わり、自信を持って攻めの姿勢で俺に立ち向かってきた。何度俺に倒されても、立ち上がってきてな」

「あぁ……やっぱ母ちゃん、ネジおじさんには敵わねぇよなぁ」

「いや、気持ちの上では負けていたかもしれない」

「え? よく分かんねぇけど……やっぱ母ちゃんとオレは違うよ。母ちゃんはオレみたいに別に不正したわけじゃないだろ?」

「それはそうだが、さっきも言ったようにナルトに見てもらいたいという一心で、後先を考えず無茶をする所がな」


「あぁ、オレ……チームメイトのサラダとミツキより自分のこと優先しちまったから……。母ちゃんはいつだって父ちゃんの味方だし、オレに味方してくれた試しなんてねぇけどさ。まぁ父ちゃんの火影の立場も忍の在り方ってのも大体分かったし、前よりは父ちゃんの味方くれぇはしてやれるかなぁ。……けどオレは火影目指すよりもサスケのおっちゃんみたいに、里や火影を裏で支えていけるようになりてぇと思ってるし、それに火影はサラダが目指してるから、サラダが火影になったら全力で守って支えてやろうと思ってるんだ」

 そこでボルトはナルトのようにニカッと笑った。

「そうか……。自分がこうしたいと思える事が明確に見つかったんなら、それでいいんじゃないか?」

「おう、これはオレの物語だからな!」

「フ……、そうか」


「そういやオレさ、父ちゃんとサスケのおっちゃんが手助けしてくれたおかげでモモシキの奴にトドメ食らわせられたんだけど……そん時父ちゃんが大きくしてくれた螺旋丸、すっごく重く感じたんだ。色んな意味でさ」

 ボルトはその時の事を鮮明に思い出すように天井を仰ぐ。

「何かこう……色んなもんが伝わってきたっつうか……、はっきりとは分からねぇんだけど、父ちゃんが今までどれだけの経験してきて螺旋丸をあんなに大きく出来るようになったのかって考えたら、胸の辺りが熱くなって泣けてきちまってさ。……オレってば父ちゃんのこと、イタズラや不正なんかで気を引こうとしてただけでちゃんと知ろうとしてこなかったんだなって」

 ネジはじっと黙って静かにボルトの言葉に耳を傾けている。


「これからは、時間ある時に少しずつでも父ちゃんが経験してきたすっげぇ長い話をちゃんと聞こうと思うんだ。母ちゃんとか、周りからは父ちゃんの話それとなく聞いてきたけど……真に受けなかったし、やっぱ直接父ちゃんから聞いて知りたいからさ」

「あぁ……、その方がいい」

「えっと、あとさ……これ言っていいのか分かんないけど──」

 ボルトは躊躇うように下向き、片手で軽く頭をかく。

「……何だ?」

「いや、その……ひとつだけ、はっきり見えちまったことがあって……それが今でも、忘れらんなくてさ」

「何をだ」

 案じるようにボルトを見つめるネジ。


「オレの小さな螺旋丸を、父ちゃんが大きくしてくれた時に……ネジおじさん、に似た人が、死んじまってる、みたいな──。身体に、二つの大きな穴が、空いちまってて……血の跡が、あって。それを、写真で見たことのある若い頃の父ちゃんと母ちゃんが、すごく悲しそうに見つめてる、ような──」

 あまり思い出したくなさそうにたどたどしく話すボルトは、首に掛けているペンダントを無意識の内にギュッと片手で握って俯いている。


「──⋯一命を取り留めはしたが、その可能性も十分有り得たかもしれない」


「ネジおじさん……」

 苦しげな表情をしている従甥に、ネジは安心させるようにヘタのような癖毛のあるボルトの頭にぽんっと優しく片手を置く。

「そんな顔をするな、ボルト。俺が生きていようと死んでいようと、お前はお前だ。……ボルトはボルトの物語を生きればいい。その先に何が待っていようとも、な」



《終》


 
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