魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第百三十四話
翌午後二時 直江津駅
「うん…取り敢えずナニがあったのかわかったよ」
千冬を見た束が最初に行ったセリフがソレだった。
「うるさいぞたばね…」
千冬が気だるそうに言う。
「見た目きつそうなのにお肌艶々だからね、そりゃぁわかるよ」
「だまれ…」
束の後ろには、箒、円香が居る。
「千冬さん。どれくらいヤったんですか?」
箒が尋ねた理由は、千冬の歩き方が可笑しかったからだ。
「あー…覚えてない」
「昨日は6~9時は寝たりご飯食べてたけどソレ以外はずっとヤッてたじゃん。
今日だってさっき家出る寸前までヤッてたくせに」
「橙!」
千冬の横にたっている橙(有機素体:猫耳無しモード)がバラした。
「流石千冬さんだ」
「ナニが流石なんだ…」
「いやぁ、ほんとだねぇ。丸一日とか私達なら途中でバテちゃうよ」
「喧しい」
「ねーねー。何のはなしー?」
「んーとねー。ちーちゃんといっ君が仲良しって話だよ」
円香がキョロキョロと辺りを探す。
「お兄ちゃんは?」
「コンビニに行ったぞ」
千冬が構内のコンビニを指差すと、ぴょこんとした猫耳が見えた。
とてとて、とコンビニからでて来た一夏が駆け寄ってくる。
「姉さん、お茶でよかった?」
「ああ、それでいい」
千冬が一夏の頭を撫でるとふにゃっと笑った。
「うみゅ」
尻尾がゆらゆらと揺れる。
「むぅ…お兄ちゃん私にはあんな顔見せてくれない…」
「いっ君が唯家族として一甘えられるのはちーちゃんだけだからね。
まーちゃんは『甘える対象』じゃなくて『守る対象』だからね」
円香がギュッと拳を握り締めた。
「箒お姉ちゃん。明日から剣術本気で教えて」
「ああ、構わんぞ」
箒は円香の気持ちがよくわかった。
未だに一夏は箒を守り続けているからだ。
千冬が、円香を抱き締める。
「円香。お前とはあまり過ごしてやれなかった。
すまないな、こんな姉で」
「大丈夫。お姉ちゃんはお姉ちゃんだから」
「ありがとう円香。あんまり一夏を困らせてやるなよ」
「うん。わかってるよお姉ちゃん」
「私の居ない間、一夏を頼んだぞ」
「言われなくっても、そうするよ」
構内放送が、電車が間もなく到着すると伝えた。
「そろそろ、行くぞ」
千冬が抱擁を解き、改札へ向かう。
「あ、待って、姉さん」
一夏が千冬を引き留めた。
「これ、プレゼント」
一夏の手の上に、光が集う。
「お守り、だよ」
ソレは指環だった。
銀のフレームの中央を薄紫の結晶が走っている。
フォールド・リングだ。
それに使われるクォーツは純度100%。
然るべき時に然るべき方法を用いれば奇跡を起こせる程の物だ。
一夏の小さな手が、千冬の左手を取る。
そっと指環を通したのは、薬指だ。
「左手の薬指。絆の指。守護の指。
そして、誓約の指」
「一夏…お前……これ……」
「ちゃんと、帰って来て欲しいから。
帰って来るって、約束して」
「ああ誓おう。帰って来よう。お前の所に。私の居場所にな」
千冬は身をかがめ、一夏に口付けを落とした。
「姉さん、長期休みは必ずそっちに行くから」
「ああ、待っている」
千冬は振り返る事無く、改札を通って行った。
「いっ君。寂しい?」
「寂しくはないさ。仮想空間でなら何時でも会えるし、量子通信ならノータイムで会話できる」
束は、一夏を後ろからだきしめた。
「強がらなくってもいいのに」
「つよがってなんかないよ」
「そう?」
「大丈夫だよ。おうちには私がいるから寂しくないよ」
「だから、寂しくないよ。そうだ、シルバーウィークにはドイツに行こう」
一夏は、束の腕を抜け出してすたすたと歩いて行った。
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