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レーヴァティン

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第六十八話 女枢機卿その七

「八条大学だよ」
「学生さんですか」
「そうなんだよ」
「そうですか。何か不思議ですね」
「こっちの世界に来る奴が全員八条大学の学生さんってな」
「そこに何かありそうですね」
「そうだよな、それでな」
「はい、これからですね」
 夕子の方から久志に話した。
「他の枢機卿の方々とお話をして」
「そうしてな」
「決めます。ただ」
「断られてもか」
「私は無理を通してです」
 その二人の枢機卿達にというのだ。
「そうしてです」
「俺達と一緒に来るのかよ」
「そのつもりです」
 久志にはっきりとした口調で話した。
「私は」
「この島、そして世界を救う為にか」
「そうです」
 久志にはっきりと答え続けるのだった。
「その為にこの世界に来ていますから」
「いい考えだな。何かな」
「枢機卿にまでなっていると聞いてですね」
「そりゃ全員が全員そうでもないけれどな」
 前置きも置いてだ、久志は夕子に話した。
「また言うけれど教会、カトリックはな」
「どうしても陰謀が付き纏いますね」
「ああ、そのイメージが強くてな」
「この世界も人間の世界です」
 夕子は久志にこのことから話した。
「ですから」
「ああ、陰謀もな」
「存在します、とりわけ権力と権威と富が集まる場所には」
「この世界のバチカンもやっぱりそうだよな」
 即ちローマ=カトリック教会はというのだ。
「陰謀渦巻く世界だよな、けれどか」
「はい、無縁の人もいまして」
「あんたもか」
「はい、私は本当にです」
「ローマを護ってか」
「枢機卿にして頂いたのですから」
 だからだというのだ。
「私は違います。また純粋に学識と信仰により枢機卿に成られた方も多いです」
「それは俺達の世界でもだよな」
「はい、人は聖俗を併せ持っています」
 その両者を完全に切り離すことは出来ない、人間とはどうしてもそれが出来ない不安定かつ多面的な存在であるのだ。
 それがわかっているからだ、夕子も言うのだった。
「ですからこの世界の教会も」
「やっぱりそうだよな」
「はい、それでは」
「これからな」
「冒険の旅に出ましょう」
 枢機卿達を説得してだ、そしてと言ってだった。
 夕子はすぐに二人の枢機卿達の前に出た、そうして久志達が来たことと自分の考えを話した。するとだった。
 二人の年老いた枢機卿達はまずはそれぞれの思索に入った、それからお互いに話をした。そのうえで夕子に話した。
「わかりました、時が来たのです」
「貴女がこの世界を救う時が」
「それではです」
「このローマから旅立つのです」
「そうさせて頂いた宜しいのですね」
 夕子は枢機卿達に畏まって尋ねた、自分より上位にある彼等に。
「私は」
「はい、貴女は元々外の世界から来られています」
「私達もそのことは知っていました」
「この時が来ることはもうわかっていました」
「ですがローマの護りを考え留まって欲しいとも考えていましたが」
「ローマは私達が護ります」
 夕子がいなくなろうともというのだ。 
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