| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

06.そうだ、刑務所に逝こう。
  第14回

 
前書き
「簡単に説明すると、此の世界には不思議な力、能力がある。で、その能力を持っているのが能力者。上級構成員となれば、大体持っているよ。因みに、私は幹部ね。フランさんが首領で、白い方のレンは上級構成員で、此の組織の作戦立案担当。細かい説明は面倒くさいから、まぁ雰囲気で察してね。分からなければ私の執務室まで質問に来るように。私の執務室の場所は、その辺を歩いてる構成員とか、私の部下とか、金色の眼をした黒猫に聞くと良いよ。あ、君達は取り敢えず私の客人として扱うことになってるから、フランさん以外だったら命令も可。帽子被ってるヤツが上の方の人間又は人外ねー。下手して死にたくなければ、此の棟から出ないこと。此の棟は私が管理してるから、人間の構成員が殆どだよ。書類を提出しに来た構成員も居るから、人間以外が居ることも或る。見分けようなんて思わない方が良いよ? 出来ないから。喧嘩を売るのは避けて、大人しく部屋で遊ぶか、庭に出てボール遊びでもするか、私の執務室に来て遊ぶか、寝るか。する事と言ったらそれ位。吸血は部屋を汚さなければ幾らでもどうぞ。拘束したい場合には、私の部屋に拘束具が置いてあるので、それを使ってもよし。止血や輸血が必要な場合は医務室に行くこと。死んじゃった場合には、三十分以内に私を連れてくること。まぁ、何時もより激しい吸血行為が可能って事。周りを汚しそうな時や、人が気になるときは、私の執務室をお薦めする。私が留守の時は、幹部補佐の水城と七星に伝えること。他の理由で執務室を利用する時も、必ず私か幹部補佐に伝えること。あと(以下省略」 

 
「説明が……長かった…………」
 説教の様な琴葉の説明を聞き終え、ぐでっとソファに座るレン。他七人も、ソファや椅子に腰を掛け、休憩をする。聖月も含めて、だ。



「失礼しまーす! コトが言ってたお客様って、貴方達ね!!」
「わー! リサ、駄目だよ!」
「良いのよ、ユリ! 此処は人間ばかりで、人外なんて特にいないの! 折角なんだし、いいでしょう?」
「でも~………」
「あ、リサちゃん、ユリちゃん! お客様に迷惑掛けちゃ駄目でしょ! 済みません、お客様………」

「うわぁああああああ!!?」
「お、オイっ、引っ張るなっ………げほっ、ごほっ」
「おぉぉいいい!? ちょっと待てぇええ!?」
「うわ、煙の量可笑しいでしょ……げほっ」
「琴葉ァアアアア!! 輝と紫苑が遊んでたら爆発したァアアアア!! さっさと来いやァァアア!!」

「涙さぁぁああん!! 琴葉さん、優雅に寝てるんですけどー!!?」
「叩き起こせレンんんんん!!! ………ごほっ、おえっ」
「僕に出来るわけ無いじゃ無いですかぁあああ!! 琴葉さぁぁん、書類も見て下さいよぅぅううう!!」
「じゃあお姉ちゃん呼んでよ! ………げほっ」
「宙さんんんんん! 何処ですかぁぁああ!?」

「って、騒がしいわ!! 人の睡眠を邪魔するな!!!」
「何勝手に寝てやがる変人社会不適合者! さっさと来やがれ!!」
「幹部補佐が何て口聞いてんだボケェ!! しばくぞ!!」
「何でも良いから来いやぁあああ!!」
「客が居るのに五月蝿くないか…………ごほっ」

「爆発!? そっちの方が楽しそうじゃない!! ユリ、行くわよ!」
「ええ!? ………せめてコトを連れて行こうよ~」
「早く行くわよ!」
「ええ~!?」

「ちょ、此れ絶対燃えてんだろ!!」
「否、燃えては無いけど。ただ、琴葉の部屋にあった薬品を全部混ぜただけだし」
「もっと危ねぇだろうが!!」
「危険では無いと思ったから、危険では無い」
「危険すぎるわ!!」

「こーとーはーさぁああん!! 早く書類を見て下さいよぉお!」
「私はー、忙しいのだー」
「寝てるだけじゃ無いですか!!」
「忙しいのだー」
「書類見るか、爆発現場に行くか選んでくだだい!!」

「ギャアァァアアア!! マジで燃えてるじゃねぇか!!」
「ほら、さっさと火、消してよ」
「消せるか!!」
「さっさとしないと死ぬぞ」
「テメェ等もだよ!!」

「ほら、コトっ! 行くわよー!!」
「ギャァァアアア!! 止めでぇぇえええ!? 引っ張るなぁあああ!!」
「ほら、琴葉さん! 行きますよ!!」
「消火器が可哀想じゃん!! 私じゃ無くて消火器を使えよ!!」
「消火器で消せるわけ無いよ……」

「おわぁぁああああ!? 早くしろ、燃え移る!!」
「だから消火器を使えぇえええええ!!」
「勿体ないんだよ!!」
「何が勿体ないだぁぁああああ!! こう言う時以外に使い道ねぇだろうがぁああああ!!」
「兎に角働いて貰いたいんだよ!!」



「済みません、お客様。本当に済みません」



 ―――此処で一ヶ月は無理だろ。


 八人が揃って思った―――


  ◇ ◆ ◇


 騒ぎが静まり、静かになった廊下。

 聖月達八人は、それぞれに与えられた部屋で寛いでいた。
 琴葉達八人も、それぞれの部屋で寛いでいた。

「ねぇ、琴葉」
「何でしょう、フランさん?」

 ―――一人を除いて。

「如何為て君は、私に全てを教えてくれないの?」
「はい?」

 ベッドに寝転がりながら、ソファに座るフランと会話をする琴葉。一ヶ月経っても未だに巻いたままの包帯を撫でながら、琴葉は小さく溜息を吐く。

「君は能力について、未だ隠していることがあるだろう?」フランはソファから立ち上がり、ベッドに腰を掛ける。枠がギシリと音を立てる。「君は新しい能力を複製したら、私に報告すると約束為てくれた筈だよ? でも、今回の『人と人を結ぶ糸』? を見ることが出来る能力何て、聞いたことが無い。ねぇ、如何為て隠してたの?」

 フランは琴葉の肩を掴み、力を込める。痛みで琴葉が顔を歪め、唇を噛み締める。

「………此の能力は、此の組織には必要無いモノです。糸が見えたところで、何も出来ませんから」フランから目を逸らし、言葉を吐き捨てる様に言う琴葉。
「それは分かってる。けど………本当に出来ることはそれだけ?」そして、フランは更に力を込めて問う。「未だ隠しているでしょう? ねぇ、全て教えて」

「…………糸を切ったり、糸繋がった相手を手繰り寄せる事が出来ます」
 だが、フランは未だ満足為ていないような表情をして、琴葉を見ている。「君の能力を遣えば、どんな能力でも複製する事は可能だ。だけど、それは複製為ようとする能力の仕組みや、効果を全て理解しなければならない。此の能力は、其処まで為て手に入れる程、重要な能力では無いだろう? なのに何故、起句の様な言葉が存在しない、見付けることさえ困難な能力を手に入れようと思ったのかい? 何か、目的があるのかい?」

 光の無い、冷たい瞳が琴葉に向けられる。フランは琴葉の肩から手を離し、琴葉と指を絡める。覆い被さるような態勢をとり、恐怖と痛みで歪んだ顔を覗き込む。

「………無いです……隠し事なんて。ある訳無いじゃ無いですか!」
「本当?」
「何を、如何為て隠す必要があるのですか!?」
「君は沢山の能力を集める、本当の理由を隠しているのでは無い?」
「私が能力を集めるのは、黑猫の強化の為だけで、他に理由なんてありません!!」
「本当に? 本当にそうなの?」

 手に力を入れて、琴葉の手を握るフラン。琴葉の上に四つん這いになり、逃がさない、と言わんばかりの威圧を掛ける。

「…………止めて! 離して!!」
「早く本当の事を話せ。何か他にも理由があるのだろう?」
「無い! 無いから、退いて……ッ!!」


「じゃあ如何為て逃げようとする。別に、隠し事の一つや二つ、誰にだって或る物だ。琴葉にだってね。けど、その隠し事の内容では、それを探らないといけないんだ。今回は、それに当て嵌まっている。拷問班に受け渡すことになる前に、早く言った方が楽だと思うけど?」


「痛ッ……やだ、退いて………」涙を浮かべる琴葉。
「ねぇ、早く為てくれるかい? 私にも仕事が在るんだ」感情の消えた表情で琴葉を見下ろすフラン。
「隠してなんか無いから! もう止めて、退いて!!」力の限りで叫ぶ琴葉だが、それがフランに届くことは無かった。


「…………矢っ張り、君は拷問班に渡すしか無い、か」
「いや………やだ、止めて…………」
「君に拒否権は無い。此処で言わなかったのが悪いのだからね。構成員を呼ぶから、此処で待っていろ。直ぐに本当の事を言って貰う」
「………やだ、駄目。止めて………ッ!!」
「安心しろ。君が育てた拷問班だ。怖がることは無い」
「…………やだ、お願い……止めて」
「さっきからずっと拒否してるけど、私言ったよね? 君に拒否権は無い」
「や………んんっ!?」

 急にフランは琴葉と顔を近付け、そのまま接吻をする。手を離し、次は後頭部に当てる。

「はっ………さっきから『やだ』ばっかり。子供じゃ無いんだから、もっと違う言葉を遣わないかな?」
「止めて……拷問はいや………っ」
「例え、君が白猫に居たときに受けた拷問の所為で、拷問系を受ける事がトラウマになってるとしても、そう言うの関係ないから。容赦なくさせて貰う」
「………離して…………退いて!」

 そこで、がちゃりと扉が開く。特に挨拶の様な物が無いと言うことは、聖月達八人の誰かだ。
 一瞬フランの気が逸れた隙に、琴葉はフランを突き飛ばして扉へ向かって走る。扉の前には、驚いた表情を浮かべる聖月が立っていたが、琴葉はその横を無言で駆け抜ける。
 後ろで「やり過ぎた、かな」と声が聞こえたが、それも気にせず、琴葉は長い廊下を走った。
 
 

 
後書き
オチが付かないなと思ったので、事件的なものを入れようと思ったらこうなりましたすいません。事故にならないように気をつけます。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧