女の水虫
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第一章
女の水虫
泉カレンは花の女子高生だ、茶色に染めた黒髪は長く伸ばしていて奇麗にセットしている。長い睫毛の切れ長の目はきらきらとしていて肌は白くきめ細かい。唇は紅色で大きめでしかも薄い。顔も耳も形がいい。
背はすらりとしていてスタイル特に足が奇麗だ。渋谷を歩けばスカウトの声が何度もかかる程の美人だ。
だがその彼女を見てだ、友人達は最近怪訝な顔になっていた。
「あんた最近どうしたの?」
「何か隠してるの?」
「妙によそよそしいけれど」
「何かあったの?」
「いや、何もないわよ」
カレンは友人達に狼狽した声で応えるのが常だった。
「別にね」
「そうなの?」
「何か変にそわそわした時あるし」
「隠してるっぽいし」
「何か心配ごとでもある様な」
「そんな感じだけれど」
「心配ごとは学校の成績位よ」
カレンは友人達に笑顔を作って返した。
「それだけよ」
「まああんた大学行きたいって言ってるしね」
「明大ね」
明治大学のことだ。
「けれどこの前の試験で査定Cだったのよね」
「今一つよね」
「CじゃなくてAじゃないとね」
そこはどうしてもというのだ。
「安心出来ないでしょ」
「それはね」
「だからそのことで悩んでてなの」
「だからなの」
「悩んでるの」
「そうなの」
内心の焦りと狼狽を隠して友人達に答えた。
「それでなのよ」
「まあそれはね」
「結構皆抱えてる話よね」
「そうした悩みならね」
「私達もそうだしね」
進路、そのことはとだ。友人達も納得した。
「あるから」
「カレンちゃんも勉強しないと」
「そう思ってるのね」
「そうなの、もっと勉強して」
カレンもこう返した。
「査定Aにしないとね」
「そうそう」
「頑張ってね、勉強」
「CからAになるまで」
「そうしていくわね」
カレンは現実を出してそれであるものを隠した、そしてその隠しているものこそが問題であった。
家に帰るとだ、カレンはすぐに自分の部屋に入ったがここで中学生の妹のローラにむっとした顔で終われた。
「いい?ちゃんとよ」
「スリッパはよね」
「お姉ちゃん専用の履いてね」
「そうしてるわよ」
カレンは自分そっくりの妹にむっとした顔で応えた。
「もっと言えばあんたの靴もね」
「履いてないわよね」
「そこはしっかりしてるから」
「そうよ、何でなのよ」
ローラはカレンにさらに言った。
「お姉ちゃん水虫になったのよ」
「私にそう言われても」
「なったっていうのね」
「最近ずっとブーツ履いてて」
外出の時はいつも履いていたのだ。
「夏も冬もだったせいかしら」
「随分風通しの悪いブーツだったのね」
「それでかしら」
「多分そうよ、けれどね」
「なったからっていうのね」
「いい?家族にはうつさないでね」
その水虫をとだ、ローラは姉に厳しい声で言った。
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