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オズのガラスの猫

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第十幕その十

「貴方はどうして不機嫌そうなお顔をしているの?」
「うん、実はね」
「実は?」
「人間の姿に戻れなくなってね」
「あら、そうなの」
「そうなんだ、僕は狼男だね」
 それでとナターシャに自分のことをお話します。
「だからこうして狼の姿になれるしね」
「人間の姿にもよね」
「なれるんだけれど」
「戻れなくなったの」
「うん、この前の満月の時にこの姿になってね」
 今の狼の姿にというのです。
「暫く遊んでいたら」
「そのままなの」
「この姿のままになってね」
 そうしてというのです。
「戻れなくなったんだ」
「どうして戻れなくなったのかしらね」
「うん、どうもその時間違えてね」
「間違えて?」
「自分の姿を今現在の姿のまま留める泉に入ってしまったみたいなんだ」
「今の姿のままに」
「うん、その時皆であんまり楽しいから物凄く飲んだけれど」
 お酒をというのです。
「水浴びをしたけれど」
「その泉に入って」
「狼の姿のままになってしまったんだよ」
「そうだったの」
「いや、そこには他にも泉があってね」
 さらにお話をする狼男でした。
「入ったら女の子になったり猫になったり豚とか家鴨とかね」
「色々な生きものになの」
「変わる泉があるんだ、ちなみにお水を浴びたら女の子や猫になってお湯を浴びたら人間の姿に戻れるよ」
「日本の漫画みたいなお話ね」
「オズの国にはそうした場所もあるんだ」
「それでなのね」
「そう、僕は間違えてね」
 そうしてというのです。
「酔ったあまりに」
「そのままの姿になる泉に入ったのね」
「それでこのままの姿なんだ」
「それじゃあ簡単じゃない」 
 ここで言ったのはオズマでした。
「お風呂に入るかお湯を浴びればいいのよ」
「実は僕そうしたお風呂は嫌いで」
「水風呂派なの?」
「サウナが好きで」
 それでというのです。
「お湯は」
「けれどそう言ってもずっとそのままの姿でいたくないでしょ」
「はい、確かに」
「これからはお水を浴びても狼男になるみたいね」
「あっ、そうですね」
 入ったら入った時の姿になる泉に狼男の姿で入ったからです。
「言われてみますと」
「満月の時以外にね」
「そしてですね」
「そう、そしてね」
「お湯を浴びると」
「確かに元の姿に戻れますね」
「人間のね、人間の姿に戻りたいなら」
 どうしてもそう思いたいならというのです。
「それならね」
「お湯が好きじゃないとか言わずに」
「そう、お湯を浴びるしかないわ」
「我慢してですね」
「入るべきよ、というかね」
「というかといいますと」
「何故お湯が嫌いなの?」
 オズマは狼男にこのことも尋ねました。
「どうしてなの?」
「熱いお風呂に入ったことがありまして」
「物凄く?」
「はい、それからです」
「それなら入る前に温度を確かめればいいの」
 こう狼男に言うオズマでした。 
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