真田十勇士
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巻ノ百五十 本丸の死闘その二
「気を放ったか」
「刀からな」
「そうしてきたか」
「これならば間合いが離れていてもな」
「攻められるからか」
「如何にも、この刃かわせるか」
「拙者ならかわせる」
これが氷刃の返事だった。
「生憎だがな、そしてな」
「お主もだな」
「そこだな」
氷刃は己の左斜め後ろの方を見た、そうして。
その刃を一閃させて氷の刃を飛ばしてだ、その刃でだった。
霧隠を攻めた、霧隠はその刃をかわして言った。
「わしの居場所はわかるか」
「気配でな」
まさにそれでというのだ。
「わかる、しかしな」
「それでもか」
「かわすとはな」
「拙者だからこそだ」
「それ故にか」
「左様、十勇士でもないとな」
天下の豪傑である彼等でもないと、というのだ。
「かわせなかったわ」
「そうか、しかしな」
「それでもか」
「お主は拙者が倒す」
「そう言うか、あくまで」
「そうだ、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「半蔵様にその首献上しよう」
「言うものだな、しかしわしの首安くはないぞ」
これが霧隠の返事だった。
「そしてわしもだ」
「拙者の首を取るか」
「そのつもり、ではな」
「お互いに死力を尽くすとしよう」
「存分にな」
二人で話してだ。そのうえでだった。
二人は氷と霧、刃と刃の闘いを続けた。そうしてお互いに譲らなかった。
幸村達は天守閣に入った、しかし。
入ってすぐにだった、雷獣がいて幸村に告げた。
「申し訳ありませぬが」
「ここはか」
「お通しする訳にはいきませぬ」
「どうしてもというのならじゃな」
「はい」
その通りという返事だった。
「ここは」
「そうか、では仕方ない」
「いえいえ殿、それには及びませぬ」
十勇士最後の者が出た、それは猿飛だった。
猿飛は陽気に笑ってだ、幸村に言った。
「ここはそれがしが」
「引き受けてくれるというのか」
「ささ、殿は早くです」
「大御所殿のところにか」
「行かれて下さい、ここはそれがしにお任せを」
「そうか、ではな」
「はい、それでは」
猿飛は明るく笑って幸村達を行かせた、そうしてだった。
雷獣と向かい合ったところでだ、彼にも陽気な笑みを向けてそのうえで彼にこうも言ったのだった。
「ここは暗い、闘うにしてもな」
「辛気臭いと」
「そう思わぬか」
「言われてみれば確かに。では」
「折角天守閣におるからな」
「それではな」
「一番上に行きますか」
「そしてな」
猿飛は雷獣の申し出に応えて述べた。
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