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454部分:第三十五話 プラネタリウムその七


第三十五話 プラネタリウムその七

「あの人達は食べるのも仕事だから」
「よくそう言われるね」
「気にはしても負けたと思ったら駄目」
 それはだというのである。
「そもそもが違うから」
「仕事だからなんだね」
「プロだから」
 つまり食べることのプロでもあるというのだ。
「だから負けたとかは思わないこと」
「そういうことだね」
「その通り。けれど赤瀬は」
「うん、僕は?」
「そうなる?」
 こう彼に問うてきたのだった。
「そのプロに。なるの?」
「そうだね。柔道家になりたいね」
 それにだというのだ。実に彼らしい言葉だった。
「やっぱり。柔道やってるしね」
「そう。だからなの」
「やっぱり柔道家も食べないと駄目だよね」
「階級によるかも」
「階級ね」
「そう、それによる」
 つまりダイエットが必要な場合もあるというのである。これが現代柔道だ。
「階級がいいかどうかは別にして」
「柔道に階級だね」
「柔よく剛を制す」
 椎名はこの言葉も知っていた。
「それを考えると。少し」
「問題があるよね」
「そう。柔道は武道」
 言うまでもないことだがあえて言う椎名だった。そう言うべきだからだ。
「どんな相手とも戦う場合がある」
「そうだよね。僕も色々な相手とね」
「だから。柔道に階級は」
「実は僕もそう思うよ」
 彼もまた同じ考えだった。そのことではだ。
「武道だから。どんな相手ともね」
「体格に関係なくね」
「そうしないと駄目だと思うよ。まあ競技として考えたら」
「仕方ない」
「その辺りは難しいね」
「だからこうなる」
 椎名はここで合理的に述べてきたのだった。
「武道としての柔道と競技としての柔道」
「二つあるんだ」
「そう。二つの柔道がある」
「そうなっているんだね」
「どっちがいいかはわからないけれど」
「それでも二つあるんだね」
「赤瀬はどっち」
 赤瀬自身にそれを問うのだった。
「どっちの柔道がいい」
「そう言われると」
「赤瀬の柔道は武道家の柔道だけれど」
「ああ、それだね」
 赤瀬も椎名の今の言葉に応える。
「それだよね」
「当て身とかも使うし」
「柔道だけじゃなくて柔術も勉強してるよ」
「じゃあやっぱり」
「うん、武道家の柔道だね」
 そちらだというのだ。自分でも分析したうえでの返事だった。
「僕の柔道はね」
「そうなる。だから」
「うん、武道としての柔道をやっていくんだね」
「それでいいと思う。ただし」
「ただし?」
「競技として、スポーツの柔道もやっていくべき」
 そちらもだとだ。椎名は話すのだった。
「最初はそうは思ってなかったけれど」
「そっちもなんだ」
「そっちもまた柔道だから」
 それでだというのだ。
 
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