歌集「冬寂月」
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五十七
あかね空
浮きて黄昏る
夕月夜
幽かに洩るゝ
影そ侘びしき
夕の朱く燃えるような空…その中に、気の早い月が淡く輝く…。
まるで憂うような…そんな寂しげな片割れの月に、ここにはいない誰かが重なる…。
もう…あの月のように、記憶さえ遥か遠く…。
侘しさだけが…影のようにまとわりつく…。
朝空に
涙とまごふ
雨降らば
夜半に陰りし
月ぞ戀しや
朝の空を淡い雲が覆っていたかと思えば、ポツリポツリと雨が降り出した。
大した雨ではない…まるで密やかに涙を流しているように見えた…。
昨夜、月が早々と陰ったため、月を恋しがっているのかも知れないな…。
空よ、私も恋しい人がいるのだよ…。
もう…会えはすまいが…。
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