オズのガラスの猫
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第九幕その十
「言われてみると」
「まあそれぞれ不思議ってことよ」
「そうなるのね」
「誰でもね、まあそれでもね」
「貴女はなのね」
「あたしはオズの国で一番不思議で特別で奇麗なのよ」
ガラスの猫のいつもの言葉でした。
「見ての通りね」
「そこでそう言うのがあんたね」
「だから誰も羨まないしね」
「妬むこともないのね」
「絶対にね」
それこそというのです。
「それはないのよ」
「まあ他に羨むことがないのは」
「いいことよね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「あんたと同じことを思っている猫は多いみたいよ」
「エリカもそうね」
この猫の性格もかなり有名です、エリカもまたとても猫らしい性格をしています。
「自分が一番よね」
「そう思ってるわよ」
「それはどうでもいいわ」
「エリカが自分を一番って思っていても」
「エリカがそう思うのを誰か止められるの?」
ガラスの猫はナターシャに尋ねました。
「そもそも」
「そう言われると」
「出来ないでしょ」
「ええ」
その通りだとです、ナターシャも答えました。
「言われると」
「そうでしょ、誰にもね」
「その人の考えを止めることはね」
「出来ないわ、言葉を塞ぐことは出来ても」
例えそれが出来てもです、尚オズの国では言論の自由も保障されています。勿論悪口や誹謗中傷はいけないですが。
「それでもね」
「考えは止められないから」
「そうよ、それにね」
さらに言うガラスの猫でした。
「あたしの考えは誰が言っても揺るがないのよ」
「自分が一番ということは」
「絶対に揺るがないから」
それでというのです。
「いいのよ」
「そうなのね」
「エリカが自分を一番って思ってもね」
「成程ね」
「あたしがそう思ってるならね」
「あんたのその考えは立派ね、少なくとも羨んだり妬んだりしないから」
そうした感情が絶対にないからです。
「いいと思うわ、問題があってもね」
「問題あるの」
「やっぱりあると思うわ、猫のそれがね」
「猫はこの世で一番素晴らしい生きものなのに」
「そう思っていてもね」
ガラスの猫は想像もしないことです、けれどガラスの猫以外の人にはよくわかることなのです。ガラスの猫の困ったところは。
「仏教の言葉で言うと唯我独尊ね」
「それって悪い意味なの」
「悪い意味で使われる場合もあってね」
「今がそうなの」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「貴女はね」
「唯我独尊なところが」
「問題よ、エリカもそうだけれどね」
「猫のそうしたところは」
「本当に問題よ」
「成程ね、けれどね」
ナターシャの言葉は聞きました、ですが。
ここで、です。こうも言ったガラスの猫でした。
「あたしの考えはね」
「誰が言ってもよね」
「変わらないわ、あたしは自分にまず一番でね」
「そう思っていて」
「それで充分だからね」
満足しているのです、それも完全に。
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