空に星が輝く様に
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45部分:第四話 桜の木の下でその八
第四話 桜の木の下でその八
しかしだ。その彼女のところにクラスの男連中が来てだ。親しげに声をかけてきた。
「頑張ってね、西堀さん」
「クラス委員頑張ってね」
「期待してるからね」
「あっ、はい」
月美は本から顔を離してそのうえでにこりと笑って応える。三人はその彼女を見てその苦々しい顔をさらに苦くさせるのであった。
そしてその顔でだ。さらに話すのであった。
「何よ、あれ」
「男には表情変えて嫌な感じ」
「媚びてるんじゃないわよ」
完全に先入観だけで話している。しかし彼女達はそれには気付いていない。
「嫌な感じ」
「何さ、ちょっと顔がよくて胸が大きいだけで」
「お金持ちの家なのがどうしたのよ」
「そうよね」
それに星華も頷く。
「あいつ、全然反省してないわよね」
「星華ちゃん、やっちゃおうよ」
「あんな奴許したら駄目よ」
「そうそう」
「そうね」
星華も三人の言葉に頷く。そのうえでの言葉だった。
「あいつ、そもそも」
ここで無意識の中に陽太郎の顔を思い出した。言葉にも出ていたがそれには気付かなかった。あくまで無意識の中での話だ。
だがそれでも心の中にサブリミナルの様に刻み込まれ。そのうえで言うのだった。
「やっぱり。もっと痛い目に逢わせてやらないとね」
「そうよ、そうしないと」
「何か嫌な奴だし」
「お姫様のつもり?」
口々に忌々しげに言い続ける。
「もっともっとね」
「やってやろうよ」
「そうよね」
「ええ。本当にね」
彼女を一番そうした目で見ているのは他ならない星華だった。6
「これからはもっとね」
「そうよね。あとさ」
「あと?」
ここで三人の言葉を聞く星華だった。
「どうしたの?」
「星華ちゃん部活入ってたっけ」
このことを尋ねてきたのである。
「部活。何処だったっけ」
「バスケ部よ」
星華は少し自慢げにその問いに答えた。
「そこよ」
「そう、バスケ部ね」
「うちのバスケ部って強いのよね」
「それこそインターハイの常連だしね」
「強いのよ」
「そんなに強かったの」
星華は三人のその話を聞いて少し意外な顔になった。
「うちの女子バスケって」
「八条高校女子バスケ部っていったら結構有名じゃない」
「何でそれ知らないのよ」
「星華ちゃんって中学の時もバスケやってたの?」
「ええ、そうだけれど」
この問いには少し弱く返したのだった。
「それはね」
「じゃあ何で知らなかったのよ」
「うちの学校の女子バスケ部のこと」
「どうしてなの?」
「ここに入る時は勉強のことだけを考えていたのよ」
その事情を話すのだった。
「もう偏差値が高いっていうことだけ頭にあって」
「他のことは知らなかったのね」
「見なかったの」
「とにかく合格することを考えていたのよ」
右手の人差し指を振りながらの言葉だった。
「それで。他のことはね」
「そうなの。とにかく受かろうって思って」
「それ以外はだったの」
「そうなのよ。まさかバスケ部まで強いなんて」
今はじめて知ったことが明らかだった。そしてそのうえだった。
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