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謎の古文書

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第二章

「安心してね」
「読めるの」
「そうなの」
「うん、ただ読み慣れない文字だから」
 だからだとだ、種羅は二人に真面目な顔で話した。
「解読するには時間がかかるよ」
「そうなんだ、実はある国立大学の図書館の奥にあって」
「何でも明治時代に手に入れたまま保管されて忘れられたものらしいの」
「僕達仕事でたまたまその大学の図書館に入って見付けて」
「お借りしたものだけれど」
「よくこんな書があったね」
 種羅にとってはその大学がどうしてこの書を手に入れたのかも気になることだった。何しろ伝説の文字で書かれているからだ。
「その大学に」
「奈良県か何処かにあったのかな」
「あそこの神社にでもね」
「古代の日本っていうと奈良県だし」
「飛鳥とかね」
「そうにしてもよくあったよ」
 本当にそのことが気になる種羅だった、それで彼も言うのだった。
「だからそれだけに若しかしたら」
「凄いことが書かれているかも知れない」
「そうなのね」
「うん、解読しがいがあるよ」
 解読する方にもと言ってだ、そしてだった。
 種羅は時間をかけての解読にかかった、二人は今はその解読を待つだけだった。種羅はその文章の解読を進めていったが。
 数日後解読し終えてだ、二人にその解読した文章を現代の日本語にしたものを見せたが二人はその文章を見て拍子抜けした。
「これ只の愚痴じゃない」
「今時の若い者や嫁はなっていないとか」
「天気が悪いとか奥さんがどうとか」
「そんなことばかり書いているじゃない」
「そうだね、僕も解読してね」
 解読した種羅も言うのだった。
「拍子抜けしたよ」
「そうだよね」
「これじゃあね」
「折角の伝説の文字なのに」
「愚痴ばかり書いていたら」
「まああれだね」
 ここでこうも言った種羅だった、今度はやれやれといった顔になっている。
「今も昔もね」
「人の言うことや考えることは同じ?」
「そういうことかしら」
「ネットの掲示板に書き込む様なことだけれど」
「何時でも思うことなのかしら」
「そうだろうね、しかし神代文字のことは知っていたけれど」
 その文字のことも言う種羅だった。
「はじめて読めたことは嬉しいよ」
「そのこと自体はよかった」
「種羅君にとってはそうなの」
「うん、確かに書かれていることはあれだったけれど」
 どうにもといってもというのだ。
「それでもね」
「じゃあこのことはよしとして」
「喜んでいるのね」
「うん、いいものを読ませてもらったよ」
 神代文字を読めたこと自体はとだ、種羅はこのこと自体は喜んでいた。だが彼はこの時知らなかった。
 神代文字には不思議な力があり解読する度に何と彼の種族には一文字ごとに寿命を一年延ばしてくれていることを。そして文章を読み終わった時奇跡が起こることを。その奇跡で彼は生き返った姉と再び共に生きられる様になった。そうした意味でも彼にとって素晴らしいことだったがこの時の彼はまだこのことは知らなかった。


謎の古文書   完


                2018・8・19 
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