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空に星が輝く様に

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44部分:第四話 桜の木の下でその七


第四話 桜の木の下でその七

「私じゃないです」
「じゃあ何で手を挙げたんだ?」
「一人是非やりたいって人がいます」
 これは嘘だった。横目でちらりと月美を見る。彼女は皆と同じく星華に顔を向けて驚いた顔になっていた。誰がやるのかといった顔だった。
 一瞥してから微笑んでだ。また言うのだった。
「その人のことです」
「ああ、そんな人がいるのか」
 先生はそれを聞いてまずは頷いたのだった。
「それはいいな。おかげでこっちから選ばなくて済む」
「はい、そう思います」
「それで誰なんだ、それは」
 先生はそれが誰かも尋ねた。
「誰がやってくれるんだ?それで」
「西堀さんです」
 そして月美の名前を出すのだった。
「西堀さんがやってくれます」
「えっ・・・・・・」
 それを聞いた月美は思わず声をあげた。まさか自分が言われるとは思ってもいなかった。だから余計に驚いていた。
 そしてだ。ここで三人も言うのだった。
「西堀さんって偉いよね」
「そうよね」
「自分からやってくれるなんてね」
 自分達が言うことで月美を逃げられなくし周りの賛成も掴もうというのだ。こうして彼女を追い込んで無理にでも決めさせるのであった。
「凄いよね」
「クラス委員ってとても大変なのに」
「立派よね」
「じゃあ西堀さん」
 星華もわざと笑みを作って月美に顔を向けて言ってきた。
「それで御願いするわね」
「私が、ですか」
「皆もそれでどうかしら」
 星華は今度は周りに問うた。周りも巻き込もうというのだ。完全に三人と協同して月美を逃げられなくしてさらに追い込むのであった。
「それで」
「何かよくわからないけれど」
「それでもね」
「クラス委員してくれるのなら」
「いいわよね」
「じゃあ決まりね」
 ここでまた言う星華だった。
「クラス委員は西堀さんね」
「私は」
「まあ西堀」
 先生も言ってきた。月美は俯きながら何とか言おうとしたその時にだ。彼女に対して言うのだった。
「じゃあ頼むな」
「は、はい」
「クラス委員はこれで決まりね」
 微笑んでまた言う星華だった。
「女の子のはね」
「そうね。決まり決まり」
「西堀さん宜しく」
「頑張ってね」 
 三人もわざとらしく拍手さえしてみせる。こうして月美を無理矢理クラス委員にしたのだった。星華はことが上手くいって楽しそうに笑った。
 そしてホームルームの後の休み時間でだ。四人は今度は教壇のところに立ってだ、そのうえで楽しそうに話をするのだった。
「上手くいったわね」
「そうね。クラス委員押し付けられたし」
「いい感じよね」
 まずは三人が楽しそうに話す。
「あいつの顔見た?」
「もう泣きそうな顔になってたわよね」
「いい気味」
「そうよね。いい気味よ」 
 四人の中心にいる星華も楽しそうに笑っている。
「ああいう奴は痛い目に逢わせないとわからないからね」
「そうよね。何か生意気な感じ」
「一人だけお高く止まってね」
「ほら、今だって」
 三人はここでまた忌々しげに月美の方を見る。彼女は相変わらず自分の席に座って暗い顔になっている。その顔で本を読んでいる。
 
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