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戦国異伝供書

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第六話 都への道その十一

「まだそう言われるにはです」
「早いか」
「果報と言われるにはです」
「当家がじゃな」
「天下を統一してからです」
 その時にというのだ。
「言われるべきです」
「その時にか」
「天下が統一され泰平になってから」
「その時にか」
「言われるべきです、今は果報を得ている最中です」
 まさにというのだ。
「ですから」
「それでか」
「はい、今はです」
「まだ言うべきではないか」
「果報を仕込んでいきましょう」
「そうか、ではな」
「はい、その言葉は取っておきましょう」
 蘭丸は父に礼儀正しく述べた。
「そしてです」
「統一されればか」
「思う存分思い言いましょう」
「そうしたものか。ではな」
「その様にですな」
「しよう、そしてじゃ」
 森は蘭丸に応えてさらに言った。
「今は槍の鍛錬を再開しようぞ」
「それでは」
「それで勝三よ」
 森は長男である長可に顔を向けて言った。
「お主また槍の腕を上げたのう」
「左様でありますか」
「しかも強い、しかしな」
「それでもですか」
「どうにも動きが荒すぎる」
「何かとですな」
「すぐに刀を抜くであろう」
 長可はそれで騒動をよく起こす、人を切り捨てたことも一度や二度ではない。
「それがよくない」
「では」
「そうじゃ、自重することじゃ」
 それが大事だというのだ。
「まことにな」
「ううむ、それですか」
「お主は血の気が多過ぎる」
「その血の気をですな」
「抑えるのじゃ、鬼と呼ばれておるが」
 戦の場でのあまりもの恐ろしさ故にだ。
「それはじゃ」
「これからはですか」
「抑えよ、それでは戦ではよくともな」
「それ以外の場では」
「人が集まらぬわ」
「そういえば父上はいつも人に慕われていますな」
 森はそうした男だ、織田家の家臣達の中でも人望が高く平手や柴田の様なうるさ方よりも遥かに慕われている。 
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