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戦国異伝供書

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第六話 都への道その六

「それでどうして出来ぬのか」
「ううむ、それはあれであるぞ」
 蜂須賀も羽柴に言ってきた。
「神父がどうかじゃ」
「子宝を下さいとお願いしてか」
「聞いてくれるかじゃ」
「それ次第だからか」
「祈り願い続けるだけか」
「そうかもな」
「それで子が出来ることを願っておる」
 ここでも切実に言う羽柴だった。
「わしはな」
「それも何人もか」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「息子も娘もな」
「何人もか」
「そうじゃが」
「これはどうしたものだろうね」
 ねねもぼやくことしきりだった。
「まことにね」
「そうじゃな」
「折角万石取りになって」
「そして母上も楽になったが」
 それでもと言うのだった。
「それがじゃ」
「子供は出来ないんだからね」
「何でも欲しいものが得られるというと」
「そうでもないな」
「そうだね」
「これが世の中かのう」
 こうも言う羽柴だった。
「余の中何でも思い通りになるか」
「そうじゃないね」
「そうじゃな、適わぬものもある」
「全部が全部とはいかないね」
「万石取りになったのはいいが」
 しかしというのだ。
「それがな」
「子供は出来ないからね」
「何とかしたいのう」
「またお願いしようね」
「うむ、神仏にな」
「わしのところはな」
 蜂須賀の場合はというと。
「もうおるが」
「そのことは羨ましく思うが」
「そうか」
「うむ、しかしどうしてもな」
 子供のことはというのだ。
「中々じゃ」
「全くだね」 
 ねねもぼやくのだった。
「本当に」
「このことについてはのう」
「そのうち出来るかと」
「そう思えばよいのでは」
 加藤清正と福島が言ってきた。
「そしてそのうえで」
「待っておればいいかと」
「焦っても出来るものではないし」
「ですから」
 それでというのだ。
「ううむ、そういうものかのう」
「そうだといいけれどね」
 羽柴もねねもこのことはかなり不安に感じていた、この時はそれで終わって後は楽しく飲んで食って終わったが。
 後日彼はその話を聞いた柴田からこんなことを言われた。
「それはわしも同じじゃ」
「子が出来ぬことは」
「わしも子がおらぬな」
「はい、それは」
「欲しいと常に思っておるが」
 しかしというのだ。
「それでもな」
「出来ませぬか」
「わしはこう考えておる」
 羽柴を己の屋敷に呼び腕を組んで言うのだった、彼に最近信長に言われて嗜みはじめた茶を勧めながら。 
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