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戦国異伝供書

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第六話 都への道その五

「不得手じゃが」
「頭ははっきりしておると」
「そうじゃ、まだまだ若いぞ。そしておなごもな」
「何か言ったかい?」
 ここで後ろで女の声がした、それでそこにいた一同が後ろを振り向くとねねがいて羽柴に少し怒った顔で言った。
「おなごがどうとか」
「おったのか」
「さっきからずっといるよ」
 これがねねの返事だった。
「私はね」
「そうであったか」
「そうだよ、言っておくけれどね」
「浮気はか」
「駄目だよ」
「ううむ、厳しいのう」
「夫婦になる時に何て言ったか覚えてるね」
 こう言うねねだった。
「御前さんなら」
「お主だけだとな」
「そうだよ、だからね」
「浮気は許さんか」
「そこまでは言わないよ、ただね」
「わかっておる、お主は女房じゃ」
 羽柴はそのねねに言った。
「それは変わらぬ」
「色々遊んでもだね」
「当たり前じゃ、そうした意味でお主だけじゃ」
 あくまでというのだ。
「お主が一番じゃ」
「そこはちゃんとしてもらうよ」
「うむ、しかし何故かのう」
 羽柴は腕を組みこんなことも言った。
「わしはどうしてもな」
「子供はねえ」 
 ねねもこのことにはぼやいって言う。
「出来ないね」
「どうしたものじゃ」
「そうだよね」
「うむ、早く子が欲しいわ」
「そうだよね」
「子はあれですぞ」
 片桐が言ってきた。
「もう神仏からの授かりもので」
「頼んでやっとか」
「貰えるものであり」
「貰えない場合もか」
「あるものです」 
 そうだというのだ。
「欲しくない家に生まれたりしますしのう」
「そんな家に生まれるよりはじゃ」
「羽柴殿とねね殿にですか」
「是非じゃ」
 このことはというのだ。
「生まれて欲しいわ」
「ううむ、そうなりますと」
「神仏にか」
「はい、お願いしてみては」
「そんなこととっくにしておるわ」
「私だってだよ」
 ねねも片桐に話した。
「子供が欲しくて仕方ないんだから」
「我が家に授けてくれと思っておるわ」
「全くだよ」
「小竹もそう思うな」
「はい、それがしの家もです」
 秀長もここで兄に応えて言った。
「子がおりませぬので」
「それでじゃな」
「是非にと願っておりますが」
 それがというのだ。
「これが」
「おらぬな」
「左様であります」
「全く、何人でも欲しいが」
 子はとだ、実際にかなり望んで言う羽柴だった。 
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