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戦国異伝供書

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第六話 都への道その四

「だからわしも用いておる」
「そうですか、しかし」
「あの御仁のこれまでのことを思えば」
「あの者自身が言っておろう」
「若しですか」
「何かあれば」
「その時に切ればよい。しかしわしは思うのじゃ」
 考える顔でだ、信長は山内と堀尾に話した。
「あ奴は実はな」
「悪い御仁ではない」
「そうだとですか」
「そう思うのじゃ」
 実際にというのだ。
「はじめて会った時からな」
「そうでしょうか」
「どうにも信じられませぬが」
 二人はこう言うばかりだった、それは平手も同じでその場で信長に言った。
「殿、若しもです」
「弾正が何かすればか」
「その素振りを見せれば」
 その時はというのだ。
「それがし自身がです」
「切るか」
「そうしますので」
「爺が一番そうしそうじゃな」
 頑固と忠義の塊の様な平手こそがとだ、信長は彼にも笑って話した。
「やはりな」
「否定しませぬ」
 平手自身もだった。
「ですから」
「それでじゃな」
「それがし自身がです」
 まさにというのだ。
「容赦しませぬ」
「では爺にも言うぞ」
「はい、何か素振りでも見せれば」
「その時にな」
「そうさせて頂きます」
「しかしわしは何度も言うが」
 どうしてもというのだ。
「あ奴が悪人には思えぬ」
「それは猿と慶次も言っておりまするが」
「わしも同じじゃ」
「悪人には見えぬと」
「そうじゃ」
「左様ですか」
「うむ、ではな」
 信長はここで話を終えて二人も平手も下がらせて別の政の話に入った、彼もまた忙しい日々を過ごしていた。
 羽柴も同じだったが彼は加藤や福島を己の屋敷に呼んでそうして酒を飲みつつ彼等に対して言うのだった。
「わしもまだまだ若いつもりじゃが」
「もうご家老ではないですか」
「そのお一人になられましたし」
「その家老という言葉じゃ」
 それがというのだ。
「実はなれれば夢だと思っておったが」
「いざなってみると」
「それで、ですな」
「そうじゃ、なってみると嬉しいが」
「それと共にですな」
「歳を取った様にですか」
「思えるわ。不思議なことじゃ」
「しかしですぞ」
 加藤義明が羽柴にここで言った。
「家老になったことは」
「そのことはじゃな」
「とてもよいものなので」
 それでというのだ。
「素直に喜ばれるべきかと」
「そうじゃな。しかしな」
「しかしですか」
「わしはまだまだ若いぞ」
 このことを言うのだった。
「それは言うぞ」
「左様でありますか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「酒もどんどん飲めるしな」
「頭もですか」
「馬や槍や刀や弓矢はな」
 こうしたものはというのだ。 
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