レーヴァティン
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第六十六話 自分達の船その一
第六十六話 自分達の船
英雄は幸正の言葉に従い今度は船を買い船乗り達を雇うことにした、そうしてまずは造船所に行った。
そこに行くと見事な船が並んでいた、英雄はその中で一際大きく見事な欧州で言うガレオン船の様な船を観て言った。
「この船がいいか」
「おい、あんた正気か」
英雄のその言葉を聞いてすぐ傍にいた初老の男が言ってきた。
「この船は高いぞ」
「どれだけだ」
「五千両だ」
男は右手の五本の指を手の平ごと出して言った。
「それだけするんだぞ」
「三千両ではないか」
「この船は特別なんだよ」
「ここで一番高い船は五千両と聞いたがな」
「空船と同じ様な造りでな」
「それだけに大きいか」
「そして頑丈でどんな波にも耐えられるからな」
それ故にというのだ。
「この船は高いんだよ」
「五千両するのか」
「あんたそれだけ出せるのかよ」
男は英雄に眉を顰めさせて問うた。
「五千両なんて大金、人だってな」
「雇う必要があるな」
「それもあるんだぞ、それで出せるのかよ」
「十万両持っている」
平然としてだ、英雄は男に答えた。
「五千両位何でもない、船乗り達の分もな」
「十万っておい」
その額にだ、男は唖然として返した。
「あんた大金持ちかよ」
「大金持ちかどうか知らないがそれだけ持っている」
「それでそのうちの五千両でか」
「この船を買いたいがな」
「それで船乗りもか」
「雇いたいが」
「そうか、じゃあ俺も雇ってくれるか」
男はここで自分を指さして英雄に言った。
「実は俺は船大工なんだよ」
「船の修理の為にか」
「ああ、腕には自信があるからな」
それでというのだった。
「雇ってくれるか、この船で何処かに行くのならな」
「行くつもりだがな」
「それならいい、最近船で湖に出ることもなくてな」
「水の人間としてか」
「どうもな」
「出たくなったか」
「湖なり川にな、じゃあな」
船乗りの仕事をしたい、だからだというのだ。
「雇ってくれよ」
「わかった、では船はな」
「この船をか」
「五千両で買う、そしてあんた以外の船乗りもだ」
彼等もというのだ。
「雇いたいが」
「腕利きの連中を集めろっていうんだな」
「今仕事がない奴でな」
「それじゃあ集めてくるな」
「頼む」
こうしてだった、船と船乗りのことはあっさりと話が決まった。だがそれでも良太は話が決まったところで仲間達に言った。
「一万両もかからなかったが」
「思ったよりもか」
「高かったな」
そうなったとだ、英雄は幸正に述べた。話が決まってから今彼等は宿屋を借りてその近くで居酒屋で夕食を摂りつつ話しているのだ。幸正が言っていたその店だ。
そこで飲みつつだ、彼は言うのだった。
「九千両かかったからな」
「あの船なら仕方ないかと」
良太は幸正が言っていた牡蠣料理を食べつつ応えた。
「あれだけ見事な船なら」
「五千両出してか」
「はい、人もです」
「四千両で雇ってもだな」
船乗り達全員合わせてだ、それだけかかったのだ。
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