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オズのガラスの猫

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第八幕その九

「それでもね」
「羨むという感覚は」
「さて、どんなものかしらね」
 首を傾げさせて言うのでした。
「あたしは感じたことはないわ」
「それはあたしもだけれどね」
 くるくると踊りながら言うつぎはぎ娘でした。
「羨むってどんな感情かしらね」
「嫉妬とかいうけれどね」
「それがどういった感情かはね」
「想像もつかないわ」
 あくまで言葉だけのことだというのです。
「あたしにとっては」
「そうよね」
「別にね」
 これといってというのです。
「思わないわ」
「そうよね」
「どうもね」
「それは非常にいいことです」
 二人にこう言ったトミーでした。
「誰かを羨んだり妬むことは」
「よくないのね」
「そこから性格が歪むので」
 だからだというのです。
「よくありません、ただ」
「ただ?」
「他の人やものをいいと思いそうなろうと努力することは」
 こうしたことはというのです。
「いいことです」
「そうなのね」
「はい、そのよさを認めて近付くことは」
「いいことなのね」
「そうしたことは」
「あたしは誰かや何かをいいと認めることはするわ」
「あたしもよ」
 ガラスの猫もつぎはぎ娘もでした。
「あんたの奇麗な黄色のお肌もね」
「その恰好いい身体もね」
「ちゃんと認められるわ」
「しっかりとね」
「それはいいことですね」
 トミーは二人の返事ににこりと笑って返しました。
「お二方のいいところです」
「そうよね、じゃあね」
「あたし達はこのままでいくわね」
「是非共」
「まああたしはいいものを認めてもそうなろうとは思わないわ」
 ガラスの猫はそれはないというのでした。
「だってあたしは常に誰よりも何よりも最高なのよ」
「だからですか」
「これ以上いいものはないから」
 自分自身がというのです。
「だからね」
「よくなろうとはですか」
「思わないわ、今の最高の維持をすることはあっても」
「維持ですか」
「そうよ、この最高の状態を常に維持しようと思っているわ」
 現にそのガラスの身体をぺろぺろと舐めて奇麗にしています。
「それでもね」
「そうしたことはですね」
「ないわ」
「あたしもよ、あたしも最高だから」 
 つぎはぎ娘もこう言うのでした。
「だからね」
「他の誰かや何かみたいになろうとはですね」
「全く思わないわ、羨むことも妬むこともないけれど」
「なろうともですね」
「思わないわ、あたしも最高だから」
 ガラスの猫と同じ様にです。 
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