英雄伝説~西風の絶剣~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第53話 グランセル城での戦い
前書き
閃の軌跡Ⅳクリアしました。やはり最終章だったので驚きの連続で大変満足できた作品でした。ちょっと寂しい気もしますがこのシリーズをやっていて良かったと思います。
side:??
クローゼを救出したリィン達は、クローゼの依頼でアリシア女王陛下の救出を頼まれそれを承諾した、そして作戦決行の翌朝になり、戦士たちがエルベ離宮の前に集まっていた。
「これよりグランセル城解放と、女王陛下の救出作戦を開始する。各員今一度自分が果たすべき役目をを話してもらおうか」
「はい、まず僕達のチームが地下水路よりグランセル城地下へと潜入する。そして親衛隊の詰所へと急行し城門の開閉装置を起動します」
「城門が開いたと同時に親衛隊と、我々遊撃士4名、そして助っ人のラウラ殿が市外から城内へと突入して敵の動きを城内へと引き付ける」
「そして城内に敵勢力が集中したら、私達が特務飛行艇で空中庭園に降りて、女王宮に突入してアリシア女王陛下を救出する……って流れね」
「うむ、その通りだ。問題は無い様だな」
指揮を執っていたユリアが、今回の作戦の流れを各員が把握しているか確認する。まずヨシュアが自分達のチームがすべきことを話し、その後にクルツ、そして最後にシェラザードが自分達のチームがするべき役割を話すと、ユリアは全員が作戦内容を理解していると判断して頷いた。
「作戦決行は正午の鐘と同時―――――それまでに待機位置に付くようにしてくれ。それでは各員、行動開始せよ!」
『了解ッ!!!』
ユリアの号令と共に、各々が行動を開始する。だがそんな中、エステルは不安そうな表情を浮かべていた。
「いよいよ始まるのね……」
「エステル、緊張しているのかい?」
「ヨシュア……」
そこにヨシュアがエステルに声をかけた。
「ごめんなさい、ちょっと緊張してきちゃって……情けないわよね」
「敵は精鋭ぞろいの特務隊だ、恐れを感じるのも無理はないよ。やっぱり僕が君と変わろうか?」
エステルは特務飛行艇での奇襲をかけるチームに入っており、女王陛下を奪還すると言う大きな重役を背負っていた。だが女王陛下の傍には敵の大将であるリシャール大佐やロランス少尉が待ち構えている可能性が最も高い。故に最初はヨシュアがエステルの代わりにそちらのチームに入ろうと提案したが、エステルはそれを拒否した。
「ううん、大丈夫。ちょっと怖いけどシェラ姉やフィルもいるし、それに潜入するなら隠密行動が得意なヨシュアがそっちにいたほうがいいわ」
「でも、君にもしもの事があったら……」
「そんなの遊撃士になった時から覚悟していた事よ。ヨシュアがいないとちょっと不安だけど、でもいつまでもヨシュアに頼り切っていたら、あたしは成長できなくなっちゃう。だから心配しないで」
「……エステル、強くなったね。分かった、僕は僕がするべきことを果たすよ。だから君も無茶はしないでね」
「ヨシュアもね」
互いの拳をコツンとぶつけて、二人は笑みを浮かべた。
「ヨシュアさん、こちらは準備できました……おや?」
「ふむ、邪魔だったようだな」
「若い男女が決戦を前に惹かれ合う姿は、実に美しい光景だね」
「お前さんは少し無粋だがな」
「あはは……」
そこに顔を赤くしたリィンとラウラ、ニヤニヤと二人を見るオリビエ、そんなオリビエにため息をつくジン、そしてちょっと複雑そうな表情を浮かべて苦笑いをするクローゼが現れた。
「うえェ!?皆、いつの間にそこにいたの?」
「すみません、お二人がいい感じで話されていたので、声をかけづらかったもので……」
「うぅ、恥ずかしいわ……」
自分達の話を聞かれていた驚くエステルに、リィンは頬をポリポリと掻いて謝った。
「でも本当に宜しいのでしょうか。皆さんに危険な事をさせてしまうというのに、私だけが安全な場所で待機してて……」
クローゼも作戦に参加したかったようだが、これから大規模な戦いが起こる場所に王族の人間を向かわせるのは危険すぎるとユリアに反対されてしまった。彼女はヨシュア達のチームと共にグランセル市街に向かい、帝国の大使館で保護してもらう算段になった。
だがクローゼは自分が依頼したことで、親衛隊や遊撃士達に危険が及ぶことになったのに、自分だけが安全な所で待つことに罪悪感を感じているようだ。
「クローゼさん、何も武器を持って戦う事だけが全てではありませんよ」
「リートさん……?」
そんなクローゼに対して、リィンが声をかけた。
「貴方は王族として、いずれこの国を治めていかなければならない方です。だからこそ貴方は生きなければならない、ここで危険な戦いをするのではなく未来の為に耐え忍んでください。大丈夫、貴方が大切に思う人は俺達が必ず助けますから」
「リートさん……」
リィンは武器を持って戦う事が全てではないとクローゼに話した。
「……そうですね、私は生きなければなりません。いずれこの国を背負っていく者として。皆さん、無力な私の代わりにどうかお婆様を……私の家族をお願いします」
リィンの言葉にクローゼは自分のするべきことを見出したのか、戦いに付いていくことを断念した。そしてエステル達にアリシア女王陛下を頼むと頭を下げた。
「任せて!あたし達が必ず女王陛下を救出してみせるわ!」
「約束するよ、僕達を含めた全員が生きて君の元に帰るってね」
「……はい!」
エステルとヨシュアの言葉に、クローゼは涙を流しながら笑みを浮かべた。
「エステル、飛行艇の準備は出来たわよ……ってあら、なんかいい雰囲気ね」
「ん、決戦前だけどこういうのは嫌いじゃないかな」
そこにシェラザードとフィーが現れた。二人は泣いてしまったクローゼをあやすエステルを見て、ほっこりと笑った。
「あっ、フィルにシェラ姉。もう準備は出来たの?」
「ええ、こっちはいつでも飛ぶことが出来るわ」
「ふむ、ならば俺達も急いで待機場所に向かった方がいいな」
シェラザードの言葉を聞いたジンは、そろそろ出発したほうがいいと発言した。
「よし、じゃあ僕達はクローゼを護衛しながらグランセルに向かおう」
「……ヨシュア、気を付けてよね。くれぐれも無茶なんてしちゃ駄目なんだからね」
「うん、気を付けるよ。君も気を付けてね、エステル」
互いに視線をかわして頷きあうエステルとヨシュア、二人は必ずまた無事な姿で会うという約束を胸に秘めてそれぞれがするべきことを果たすために歩き出した。
―――――――――
――――――
―――
エステル達と別れたヨシュア、リィン、オリビエ、ジン、クローゼは敵の見張りをかわしながらグランセルに潜入した。街には至る所に見張りが配置されており、重苦しい空気が立ち込めていた。
「殺伐としていますね、あちこちに見張りばかりで移動するのも一苦労です」
「離宮を落とされて敵さんも必死なんだろうな、しかし何とも物々しい雰囲気だぜ」
建物の物陰から辺りを見ていたリィンは、慌ただしく辺りを走る特務兵を見てため息をついた。
「それでオリビエさん、大使館からの使いはまだ来ないんですか?」
「いや、そろそろ来るする手筈なんだけどね。もしかしたら迷っているのかな?だったら僕のリュートで……」
「馬鹿か、そんなことをしたら目立つだろうが」
リィン達の背後から声が聞こえた、彼らが振り返るとそこにはミュラーが立っていた。
「やあミュラー君、君が来るのを心待ちにしていたよ」
「……もう俺はストレスで死んでしまうかもしれんな」
「ええっ!?それは大変だ!一体何が原因なんだろうか?」
「貴様が原因に決まっているだろうが!!」
何時ものようにとぼけた態度を取るオリビエに、ミュラーは目にも止まらぬ速さでアイアンクローを仕掛けた。
「オリビエ、貴様一体何を考えているんだ!ただでさえ貴様はマズい立場にあるというのに、クーデターを阻止する作戦に参加するだと!?そんなことが許されると思っているのか!?」
「でもミュラー君、僕は連中に顔を見られているから今から逃げ出してももう遅いと思うよ。それに今回の件が多事になればあの男は必ず動き出すはずだ、僕は帝国の未来を考えて今回の作戦に参加したんだ。君なら分かってくれるよね、ミュラー君」
怒りの表情でオリビエを問い詰めるミュラー、だがそんなミュラーにオリビエは真剣な表情で何か意味ありげな言葉を話す。するとミュラーは思い悩む表情を浮かべると、渋々とオリビエを離した。
「……全く、貴様は普段はおちゃらけている癖にここぞという時に真面目になりおってからに……分かった。もう止めはしない、貴様に何かあったら俺も腹を切ってやる」
「あはっ、やっぱりミュラー君は僕の事が好きなんだね。今回の作戦が終わったらベットでしっぽりと……」
「なるほど、今死にたいようだな。ならばお望みどおりにしてやろう」
「じょ、冗談です……」
頭に剣を突きつけられたオリビエは、両手を上げてミュラーに謝った。そんなオリビエに対しミュラーはため息をつくと、リィン達の方に振り向き話し出した。
「お初にお目にかかります、クローディア姫殿下。自分の名はミュラー・ヴァンダール、エレボニア大使館駐在武官を務めている者です」
「ご丁寧にありがとうございます、ミュラー様。本来なら他国の方々にこのような迷惑をかける訳にはいかないのですが……」
「いえ、お気になさらないでください。皇帝陛下をお守りするヴァンダールの剣を持って貴方様を守護させて頂きます」
ミュラーはクローゼに自己紹介すると、今度はリィンの方を振り返り声をかけた。
「リィンは数日ぶりだな。このバカに付き合わせてしまった事を謝罪させてもらおう、済まない」
「まあもう慣れちゃいましたよ、それにここにいるのは俺の意思なのでそんな謝ってもらわなくてもいいですよ」
「そう言って貰えると助かる。本当なら俺もコイツに付いていきたいのだが、大使館駐在武官である俺が迂闊な行動をすれば大きな問題になってしまう。故にこの程度の事しかできないんだ、本当に済まない」
「十分すぎるくらいですよ、貴方ならクローゼさんを安心して任せられます」
ミュラーは大使館駐在武官としての立場がある為に迂闊なことは出来ない。故にこれ以上の介入は無理だと彼は言うが、クローゼを保護してくれるだけでもリィン達からすれば有り難かった、これで後ろを気にせずに作戦に集中できるだろう。
「クローゼさん、後の事は俺達に任せてください」
「リートさん、皆さん……どうかご無事で」
クローゼはミュラーに連れられて帝国大使館の方に向かった、ミュラーなら敵に見つからずに無事に帝国大使館まで行けるだろうとリィンは考えてヨシュア達に声をかける。
「クローゼさんを保護してもらったので、俺達も地下水路に降りるとしましょう」
「ああ、地下水路なら西街区から入れたはずだ。武術大会の合間に修行で使っていたから間違いない」
「なら西街区に向かおう、でも敵の捜索には注意しないとね」
リィン達は敵の捜索をかいくぐりながら、西街区に向かい地下水路に降りる。
(へえ。ヘイムダルの地下水路にも入った事はあったけど、向こうと似たような構造だな……)
一度ヘイムダルの地下水路に入った事のあるリィンは、グランセルの地下水路も似たような作りなのに気が付いた。
「さて、例の隠し水路の場所まで急ぐとしようか」
「ええ、でももしかしたら地下水路にも見張りが周っているかもしれないので注意して進みましょう」
四人はクローゼから渡された地図を頼りに地下水路を進んで行く。途中で特務隊の見回りを発見するが、ヨシュアの指示でそれをかわして更に奥に進んで行く。
「やはり地下水路にも特務隊は配置されていたか、でもヨシュア君のお陰で難なく潜り抜けれたね」
「ええ、隠密行動は得意ですから。しかし地下水路に特務隊が回されているという事は敵は僕達の動きを把握しているという事でしょうか?」
「奴らが秘密の地下水路を知っているとは限らんからな、まずはそこに行って様子を確かめてみよう」
オリビエがヨシュアの指示の的確さを褒めるとヨシュアは半笑いで頬を掻く。そしてもしかしたら特務隊は秘密の地下水路の事に気が付いているのではないかと警戒するが、ジンがまずはそこに向かって様子を確かめようと言い全員が同意した。
「……付きましたね」
その後魔獣や特務隊をかわしながらヨシュア達は目的の場所に到着した。
「どうやらここには敵はいないようですね」
「ああ、なら奴らがここに来る前に隠し水路を開けてしまおう」
様子を伺ったリィンは辺りに敵がいないことを確認すると、ジンが素早く水路の壁の一部に近づいて注意深く探る。
「むっ、あった。こいつがスイッチだな」
壁に隠された僅かな凹むを押すと、壁の一部が横に動いて通路が現れた。
「よし、この隠し水路を通ってグランセル城に潜入するぞ」
「はい、でも何がいるか分かりませんから最大限の注意はしていきましょう」
四人は隠し水路を通り奥を進んで行く、すると先ほどのようにスイッチのある壁を発見した。
「ここが終点のようですね」
「ああ、後は正午までここで待機していればいいだろう」
リィンはここが終点だと言い、四人は作戦開始まで身を潜めておく事にした。
――――――――
――――――
―――
一方その頃、王都グランセルの前にある広場にラウラと遊撃士チーム、親衛隊が集まっていた。そしてエステルとシェラザード、フィーは特務艇の中で待機していた。
「でもまさかフィルが飛行船の操縦が出来るなんて思わなかったわ」
「ん、仕事で使う事もあるから操縦はできる」
「一体どんな仕事をしているのよ?」
「……運搬業?」
エステルはフィーがまさか飛行船の操縦が出来るとは思っておらず凄いと褒める。フィーは前に飛行船を使う仕事を受けた事があり、その時に西風の旅団で元飛行船の操縦士をしていたカイトに操縦の仕方を習っていたため大きな飛行船でなければ操縦はできるようだ。
それにこの場には中央工房から出張していたペイトンという整備士もいた。彼は『アルセイユ』というリベールが開発している高速飛行戦艦の試運転のデータを取っていたのだが、特務隊にアルセイユを奪われてしまい途方に暮れていた所をユリアに呼ばれたそうだ。そして今回の作戦で飛行船の操縦をサポートしてくれる事になった。
褒められてちょっと胸を張るフィーにシェラザードが一体何の仕事をしているのかと聞くと、彼女は可愛らしく首を傾けて疑問形で運搬業と話した。
「まあ今はそんな事は置いておきましょうか。それよりもそろそろ正午になるわ、あんた達準備はいいかしら?」
「あたしはバッチリよ!」
「わたしも大丈夫」
「自分は異常ないです」
「我々も問題ありません」
シェラザードの言葉にエステルとフィル、整備士のペイトン、そして親衛隊の一員である3人の男性が返事をした。彼らはエステル達がアリシア女王陛下を救助する際に特務艇を守る役割をかって出てくれた人達だ。
万が一敵の制圧が不可能な場合、アリシア女王陛下を連れて逃げ出すために特務艇は重要な存在になる。敵もそれを見据えて特務艇を狙って来るだろう、彼らはその際の防衛に当たる存在だ。
「でも良かったの?ただでさえ人数が足りないのにこっちに来て」
「向こうにはユリア隊長もおられますし我々は仲間を信頼しています。ですので気になさらないでください」
「そういう事なら特務艇をお願いするわね。フィルもサポートをするのはいいけど無茶だけはしちゃ駄目よ」
「ん、了解」
女王陛下を救出するのはエステルとシェラザードで、フィーは特務艇に残って親衛隊のサポートをすることになった。本来なら彼女も一緒に行きたいだろうがエステル達に正体を隠しているためそれは出来ない。故にアーツでのサポートのみを許可されていた。
(歯がゆいけど仕方ないよね。わたしは自分に与えられた仕事をこなすだけ)
一緒に戦えないことに歯がゆい気持ちがあるが、彼女は猟兵として自分が与えられた使命を全うしようと気持ちを切り替えた。
―――――――――
――――――
―――
作戦開始の合図である正午の鐘が鳴り、リィン達はグランセル城の地下内部に潜入した。
「城門の開閉装置は親衛隊の詰所にあります、まずはそこを制圧しましょう!」
「応っ!」
「では行くとしようか」
「はい!」
リィン達は南側の階段から一階に上がり、親衛隊の詰所に乗り込んだ。中には数人の特務兵がおりリィン達の姿を見て目を丸くしていた。
「え……」
「遅い!」
ヨシュアとリィンは驚く特務兵達を自らのクラフト『漆黒の牙』と『疾風』で奇襲をかけた。彼らはなすすべもなく意識を刈り取られて地面に倒れていく。
「ひゅ~、鮮やかだねぇ」
「じゃあ手筈通りに城門を開けましょう」
「敵の迎撃は俺達に任せろ!」
「ヨシュアさん、お願いします!」
城門の開閉をヨシュアに任せ、残った三人は敵の迎撃に備える。
「よし、これで……!」
ヨシュアが開閉装置を動かすとグランセル城の城門が開き始めた。
「な、なんだ?」
「おかしいな、完全封鎖だと聞いていたのに……」
門の前にいた特務兵は、何の前触れもなく開いた城門を見て首を傾げていた。
「とにかく何があったのか確認を……な、なんだ、あれは!?」
特務兵が前方を見ると親衛隊の隊長であるユリアを筆頭に、大勢の集団が攻め込んできていた。
「突撃――――ッ!!」
突然の出来事に動揺する特務兵、だがそんな彼らなどお構いなしにユリア達は城内に潜入する。
「そんな、どうして城門を開けたりしたのですか!」
「どうやら敵が内部に侵入したようで……」
「侵入ですって!?あなた達は何をしていたの!!」
「も、申し訳ございません!」
グランセル城の警護を担当していたカノーネ大尉は部下を叱るが、直に思考を切り替えて指示を出した。特務兵達が侵入者達の排除に向かうと彼女は忌々しいという表情を浮かべて爪を噛む。
「くっ、何たる失態……何としても撃退せねば」
「た、大尉殿!?」
「あ、あれを!」
「あれは……特務艇!?」
上空からこちらに向かってくる特務艇、カノーネは敵の狙いがそちらだと気づいて一杯食わされたことに腹を立てた。
「よっと!」
「エ、エステル・ブライト!?」
庭園に着陸した特務艇から現れたエステルを見て、カノーネは驚きの声を上げた。
「カノーネ大尉、またお邪魔するわね」
「女王陛下は解放させてもらうわよ」
「な、舐めるなァ!小娘ども!」
武器を構えるエステルとシェラザードに、カノーネは激昂して叫び武器を構えた。
「このっ!」
導力銃をエステルに放つが、彼女はそれをかわしてスタッフで銃を弾き飛ばした。
「カノーネ大尉!」
「今援護を……ぐわぁ!?」
カノーネを援護しようとした特務兵の二人、だが突然落ちてきた雷と現れた爆炎に吹き飛ばされてしまった。
「ナイスよ、フィル」
「ん、タイミングバッチリ」
それはシェラザードとフィーが放ったアーツだった。部下を戦闘不能にされたカノーネはアーツを繰り出そうとする。
「あんた達に、閣下の邪魔は……!」
「金剛撃!!」
エステルの放った一撃に、カノーネは庭園の壁に叩きつけられて気絶した。
「よし、後は女王陛下を救出するだけね」
「ええ、それにどうやらリシャール大佐は不在のようね。今の内に女王陛下を奪還してしまいましょう」
「それじゃあ行くわよ!」
エステルとシェラザードがアリシア女王陛下を救出に向かう。フィーは親衛隊の人達と特務艇の守備に当たり二人を見送った。少しすると騒ぎを嗅ぎつけた特務兵達が庭園に現れて戦闘が開始される。
「死ねぇ!」
「よっと」
繰り出された刃を素早い身のこなしでからすフィー、そしてお返しに蹴りを放ち怯んだ隙にアーツを発動して氷の刃で敵を攻撃する。
「ん、でもこっちが不利なのは変わりないか……」
こちらは戦えないペイトンを除けば四人しかいない。だが敵は次々と現れてくるので流石に面倒だとフィーは感じたようだ。
「おっと」
背後から撃たれた銃弾を跳躍してかわす、だが着地の隙を狙った重装備の特務兵が巨大なハルバートを振るってフィーに襲い掛かった。
「孤影斬!!」
だが突然放たれた斬撃が特務兵を吹き飛ばした。フィーはそれが誰が放ったものなのか既に理解しており、駆け寄ってきた人物にハイタッチする。
「リィン、ナイスタイミング」
「はは、いらないお節介だったか?」
「ううん、ちょっとかわすの面倒だったし有り難い。サンクス」
かわせないことはなかったが、体に無茶な負担がかかる動きをしないといけなかったのでフィーはリィンにお礼を言う。
「下はどうなったの?」
「ラウラ達も合流してくれたから大体は制圧できた、俺は残りの奴らを片付ける為に先行してきたんだ」
リィンは太刀を構えると、こちらに向かってくる特務兵や軍用魔獣に向かっていった。
「片付けるぞ、フィー!」
「ん、援護は任せて」
その後、庭園にいた特務兵達は全員拘束されてエステル達の手によってアリシア女王陛下は無事に解放された。だが敵の大将であるリシャール大佐に特務隊の隊長であるロランス少尉、そして気を失っていたはずのカノーネ大尉の姿が消えており事件は解決されたとは言えなかった。
ページ上へ戻る