虹にのらなかった男
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P5
『高熱源体急速接近!』
ホワイトベースが回避行動を取るが、遅い。
「ミス・ヤシマ。そう慌てなさんなって」
接近中のミサイルをバルカンとビームキャノンで打ち落とすというのは言うだけなら簡単だがやるのは難しい。
対策をしてなければだが…
「ビームキャノン モード変更 拡散モード。
ビームシャワー 3…2…1…ファイア」
二門のビームキャノンからシャワーないしスプレーのようにビームが広がる。
それを三連計六発。
全てのミサイルがメガ粒子に触れて爆発を起こした。
そのタイミングでガンダムが射出された。
「アムロ君。敵のMSが直ぐにでも出てくるだろう。
宇宙でならどれだけ爆発させてもいい。
遠慮なくやりたまえ」
『わかりました』
そこでブリッジから通信が入る。
『ルセーブル中尉。宜しいですか』
『どうした、ノア少尉?』
『貴方のガンファイターならばムサイを沈める事ができますか?』
いや、無理だろ。
宇宙戦闘機一機で宇宙巡洋艦一隻とか。
でも、まぁ、ムサイに一撃当てる事はできる。
「たしかに、確かにアブルホールのスペックならばムサイに一撃入れる事もできる。
だが一撃当てる以上は厳禁だ」
『なぜです。ガンファイターの回避性能ならば直援のザクを振り切り弾幕を突破できるのでしょう!
そこでビームキャノンを叩き込めば…!』
「落とせ、と言うのか、ノア少尉。
仮にムサイを落としたとしよう。で?」
『で? とはどういう事でしょうか?』
「母艦を失った敵MS隊はどう出る?」
『撤退するのでは?』
「どこに? 母艦もないのに?
死に物狂いの敵を素人の集団でどう対処するのか聞かせてもらおうかブライト・ノア少尉?」
『…………失言でした』
さーてと、じゃぁムサイに一発入れるとするかね。
「アムロ…ちょっと耐えてくれよ」
機首を下に向け、全速力航行。
あまりデブリの無いサイド7宙域だからできる事だ。
ザーン、ハッテ、ルウム、ムーアではこうはいかない。
コロニーと艦の残骸でデブリだらけだ。
そんな所で戦いたくはない。
だがムーア…サイド4宙域は激戦区と聞く。
あそこはアバオアクーへの補給経路が近いため仕方ない事ではある。
噂によればジオンのスナイパーMSが脅威となっているらしい。
それさえ突破出来ればアバオアクーへの活路が開けるのだが…
「って…今は目の前のムサイに集中しねぇと」
落としてはいけない。
撤退するだけの力は残しつつ…撤退せざるを得ないダメージを与える。
モニターを見ると、ムサイまで始点から半分の位置だ。
ホワイトベースからムサイの下方10キロへ向かって飛んでいる。
「ビームキャノン モード変更 収束モード。
チャージ開始」
そうして、ムサイから見て正面マイナス70度。
機首を上げる。
ゆっくりと。
「ぐっ…これでもっ…Gがけっこう…!」
ムサイの真下に入る。
全速力航行のまま、ムサイの真下から近づき…
「ファイア!」
ムサイの左エンジンブロックを射抜く。
一瞬すれ違い様にメガ粒子砲がこちらを向いたが掠める事もなく離脱できた。
後方で爆発の光が瞬くのを見ながら、慣性飛行に切り替え、機首をホワイトベースの方へ向ける。
「ノア少尉。ムサイのエンジンを片方潰した。直ぐに撤退するだろう」
『了解。それまでガンダムの援護を頼みます』
「ラジャー」
戦域に機首を向けるとちょうど一つ大きな火球が見えた。
爆発の規模からザクだろう。
ガンダムは高出力ジェネレータと多量の燃料を積んでいる。
ガンダムが爆発すればあの1.5倍はいくだろう。
「加勢するぞガンダム!」
ガンダムから離れた所でバズーカを構えるザクに対してビームキャノンを射つ。
かなりの距離がある。が、あれだけガンダムから離れていれば誤射もあるまい。
五回トリガーを引き、ようやく当たる。
ザクが新たな火球と化した。
戦域と距離が縮まる。
次の目標はシャアザクを援護する奴だ。
原作では二機だがさっきコロニーから逃げるザクを見逃したので三機要るようだ。
とは言えザクが一機増えた所で、それがシャアやガトーのような熟練パイロットでない限りガンダムの敵ではない。
「アムロ君!聞こえるか!」
『はい!中尉さん!』
「ザクは俺がやる!君はシャアに集中しろ!」
『や、やってみます!』
ザクの直上に付き、スラスター全開。
コンソールを弄ってサブアームを起動する。
ビームサーベルを伸ばし……すれ違う。
遅れて爆発の光が見えた。
ガンダムとシャアザクの戦いの方は、シャアがガンダムに蹴りを入れ、その反動でムサイの方へ飛んでいくという結末だった。
『はぁ…! はぁ…! はぁ…!』
アムロの荒い息が通信機ごしに聞こえる。
「アムロ君。よくやった。シャアを追い払えたのはガンダムの性能だけじゃない。
性能を使いこなした君自身の腕と、シャアに向かって行った君の勇気だ。
誇りたまえ、少年」
『ありがとう…ございます』
「さぁ、ホワイトベースに帰ろう。
君の友達も、待ってくれているはずだ」
『はい!』
後書き
基本的に劇場版の流れでいきますが所々オリキャラやオリ展開やジオリジンが入ります。
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