東方刑務所の人狼ゲーム
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真実と嘘と死のゲーム~三風一鶴side~
「じゃ、まず人狼ゲーム経験者っている?」
会議が始まり、早速陽くんがこの発言。まずは経験のある人を頼れるように経験者を聞き出しておこうっている感じかな。
「私は一回。今の主任看守達と一緒にやったことがある……」
「懐かしいな~」と、その時の人狼ゲームを思い出す。確か、その時聖月は占い師だった気がする。俺は狩人。もしかして、その時と役職変わってないかも。
その人狼ゲームには看守長も参加していた。今回の人狼ゲームを開催したのが本当に看守長だったら、俺達の役職をあの時の人狼ゲームと同じにしてもおかしくない。
「あ、俺もその一回だけね。その時はホントに聖月に助けられたよ~。バンバン疑いを晴らして行って、すぐに人狼側を全滅させちゃって大変だったんだよ?」
これでちょっと怖いかもしれないけど、上手く聖月に人狼のターゲットを向けられたら村人側の犠牲を減らすことができ、そして聖月を守り続けることができる。
「俺も一回だな」
猿也ちゃん、それでいいよ‼その返し方でおっけー‼
「俺は何回も」
予想通り。学校とかで何回もやってそうなんだもの。
「俺達囚人組は全員初心者ー。吸血鬼組は?」
セブンくんもそれでいいよ!ありがとう!
「本物の人狼が居る向こうの世界で人狼ゲームが始まったら、種族同士の戦争が勃発して楽しそうだね」
さすが魔族って言うくらい半端じゃないよね。向こうの世界は。
「ってことは、看守組がそれぞれ一回ずつ経験と。……ほぼ未経験者だなー」
残念そうに陽くんが溜息を吐くが、そんなこと気にしない気にしない。
少しの間沈黙が続いたが、猿也がいきなり沈黙を破った。
「……自分の役職言えるヤツ、居るか?」
もちろん誰の手も上がらない。きっとみんなが察しているのだろう。この人狼ゲームは普通の人狼ゲームではないと。
普通の人狼ゲームであったら、みんなで自分の役職をカミングアウトして、積極的に話し合いに参加するはずなのだが、今回はそんなことしない。何故なら、役職をカミングアウトしてしまったら人狼に殺されてしまうからだ。
数分経った後、猿也は「居ないよな」と呟いた。
だが、その声に重ねるように――――――聖月が口を開いた。
「私……が占い師、です。今日は一鶴を占って……白、でした」
ぼそぼそと言う聖月。いつもとは違って弱腰な彼女に、囚人達は困惑しているようだったが、前に普通の人狼ゲームでも聖月は結構怖がっていたので、今回は本当に怖いのだろう。
「ありがとう、聖月。よく言えたね」
俯く聖月に少しでも元気を与えるべく、その頭を軽く撫でてあげると、聖月は頬を軽く膨らませて顔を上げる。
「こ、子ども扱いしないでよ……」
その頬は少し赤みを帯びていて、照れていることが丸わかりだ。
もちろん周りから視線がグサグサ頭に刺さっているが、聖月をこうやって扱えることはあまりないので、今はひたすらこの状況を楽しんでいる。
「あ、他の役職はー?ほら、共有者とかは重要なんでしょ?」
セブンくんの発言。少し危ない気もしたが、きっとそれに気付く人は居ないと思う。まぁ、猿也や聖月にはわかると思うけど。
「共有者は占い師ほど重要な役割ではないから、まだ名乗り出ることができないんだよ。会議を進めるうえでは重要だけどね」
「へー」と言うセブンくん。
セブンくんはきっと他の役職、つまり狩人や霊媒師などもカミングアウトして欲しいと願って言ったのだろう。普通の人狼ゲームならみんなが役職をカミングアウトしてから進めるのが基本的だから。
だけど、さっきの言葉は他の意味にもとることができる。
「そういうことだね。それにしてもセブン君。他の役職持ちを探しているようだけど、俺には人狼が他の役職持ちを狩るために聞いた質問のようにも聞こえたけどもしかして……君が人狼じゃないのかい?」
「ちょっと、お兄ちゃん!?」
急に何か言い始めたと思ったら、流石輝にぃ。気付いていたね。
そう、人狼だったら役職持ちを早めに消しておく方が良いのだ。早めに役職持ちを消すことで、村人側が不利になり、ゲームに勝ちやすくなる。
だから、人狼が有利にゲームを進めるための質問として輝にぃは捉えているのだろう。
「セブンは違うと思うよ?嘘ついてそうな感じじゃないし……」
聖月が必死に「違う」と言っているが、輝にぃは絶対に聞かないと思う。
「そうだ‼俺は市民だっての!」
セブンくんも必死に「違う」と主張するが、輝にぃは冷ややかな声で言った。
「もうわかったよ。
セブンくんは嘘をついている」
「っ!……ワケわかんないことばっか言うな。俺がいつ嘘を吐いたんだよ!さっきの発言の中に俺を疑うことあったか!?場を混乱させて……アンタ、人狼だろ!それか狂人か?」
焦って反論するセブンくん。だが、皆は目を見開いて彼を見ている。最初は輝にぃに反論していた聖月でさえ。
きっと、このゲームが初めての人でも分かると思う。セブンくんが嘘を吐いていることが。
「ははは、まぁ落ち着いてよ。またボロがでちゃうよ?さっき、君は村人の事を市民と言ったよね。人狼ゲームでは村人を市民と言ったり、狩人のことを騎士と言ったりすることがあるんだよ。けど、君は陽くんが経験者はいないかって聞いたときに、初心者って言っていたよね?それって、人狼経験者が油断させるためについた嘘だと言わないかい?」
聖月がそろそろ何かを言うと思っていたが、それは無理そうだった。ただただ、自分の兄の言葉を信じるか、自分が管理する囚人の言葉を信じるかを迷っていた。
「……確かに、俺は経験者だ。別のムショで一度やったことがある。その時に言いだせなくて本当に悪い‼でも俺は人狼じゃ……」
「セブンくん。これは皆の命がかかっているんだ。仮に君が人狼じゃなかったとしても、議論で嘘をつくような人は、この村に必要ないよ。悪いけど、ただ邪魔なだけだよ。だから、今日はセブンくんに投票した方がいいと思う」
投票の時間となった。
皆、静かに投票する人を決めて――――――投票した。
投票結果
聖月 → 輝
レン → セブン
達也 → セブン
ダイヤ → セブン
沙耶香 → セブン
セブン → 輝
零 → セブン
陽 → セブン
雷 → セブン
一鶴 → セブン
猿也 → セブン
輝 → セブン
――――部屋に戻ると机の上に薬が置いてあるよ。
――――調べたんだけどあれは毒で、飲むと苦しむことも無く、ゆっくりと……
――――ごめんね……ごめんねセブン‼
――――謝らないでよ、聖月。……じゃあね。
この日、セブンくんは苦しむことなく、ゆっくりと――――――
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