空に星が輝く様に
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401部分:第三十話 光と影その六
第三十話 光と影その六
「誰が行くかよ」
「だからいいじゃない」
また話す津島だった。
「中日だとまだね」
「最近結構以上に中日にやられてるけれどな」
「まあここんとこ数年はね」
それは否定できなかった。事実は否定できるものではない。
「けれど中日はまだね」
「ああ、巨人よりはずっと許せるな」
「確かに負けるのは悔しいけれど」
それでも巨人以外には極めて寛容である、これこそまさに阪神ファンだった。二人はそうした意味で正しい阪神ファンであった。
そしてだ。津島はこう結論付けた。
「巨人の服着て作ったシュークリームじゃないからいいじゃない」
「そうか。じゃあそれ食うか」
「シュークリームもね」
「あそこケーキもいいんだよな」
狭山はケーキについても話した。
「和菓子屋だけれど洋菓子もいいんだよな」
「そうよね。確かにね」
「最近和菓子屋でも洋菓子作るんだな」
「パン屋がケーキ作るのはよくあるけれど」
実際に彼女の家がそうしているから言えることだった。
「和菓子屋さんもね」
「あそこ八条百貨店にもお店出してるしな」
「実はね」
津島はここであることを話すのだった。
「うちも元々は」
「御前の家のお店かよ」
「あそこから暖簾分けしてもらったのよ」
そうした経緯があったというのである。
「最初は和菓子やってたけれど変わったのよ」
「パン屋にか」
「そうなのよ、実はね」
「和菓子からパンかよ」
「蒸しパンからはじめたのよ」
こう話すのだった。
「それで叔父さんは元に戻った形でケーキやってて」
「そうか。暖簾分けだったのかよ」
「その頃は戦前でね」
「おい、古いな」
「そうよ。私の家って戦前からパン屋なの」
今話す衝撃の事実だった。中々老舗なのだ。
「海軍さんにも入れてたのよ」
「歴史感じるな」
「今はその流れで海自さんにも入れてるし」
そのまま続いている形であった。
「そうしてるの」
「海軍なあ」
「叔父さんのケーキもよ」
そちらもだった。
「神戸にも海自さんの基地あるからね」
「あまり大きくない基地だよな」
「まあそれはね」
一応神戸にも基地はあるのだ。やはり海上自衛隊の基地は横須賀に呉、舞鶴、佐世保、そして大湊の五つがメインなのだ。
「でも入れさせてもらってるから」
「安定した収入はあるってことか」
「そういうこと」
こう狭山に話すのだった。
「それはしっかりしてるから」
「そうか」
「そうよ。それでね」
「ああ、それで?」
「まあとにかく。叔父さんの為の偵察と勉強も兼ねて」
「お師匠さんのお家の味を食いに行くか」
「そういうこと」
こうした理由をつけてだった。津島は狭山をそこに誘うのであった。そうしてなのだった。
椎名は椎名でだ。赤瀬に話す。
「じゃあ」
「僕達も?」
「バイキング行こう」
巨大な弁当を食べている彼への言葉だ。無論彼女の手作りだ。
「今度の休み」
「バイキングだね」
「そう、それ」
こう返す椎名だった。
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