世界に痛みを(嘘) ー修正中ー
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突き上げる海流
メリー号は荒れ狂う大海を進み、舵を切る。
突き上げる海流の兆候により、波は荒れ、天候は荒れ狂う。
太陽は隠れ、"積帝雲"が姿を現し、周囲は不自然な程に暗闇が支配していた。
ルフィ達は空島へ向け、船の舵を切る。
船上には突き上げる海流が発生する地点までの案内を終えたマシラとショウジョウも乗り込んでいた。
マシラはアキトが、ショウジョウはルフィがそれぞれメリー号へと運び込んだ次第である。
「それではお頭達、ご武運を祈ります!」
「どうか、無事、空島へ!」
「お前らも毎日欠かさずバナナを食うんだぞ!」
「歯磨きも忘れるなよ!」
「待てや、コラー!?」
マシラとショウジョウは己の部下達に暫しの別れを告げる。
彼らは此処でお役御免だ。
「すまねェな、坊主。世話になっちまって」
「気にすんなって、ひし形のおっさん!」
デッキ上ではルフィとクリケットさんが会話に花を咲かせる。
10年も追い求めていた夢が叶う時だ。
「待てや、麦わらのルフィ──!」
だが、そこで横槍が入る。
巨大な丸太で作られた船に乗った奴らが迫ってきた。
「ゼハハハハ!お前の1億の首をもらいに来た!往生せェや──!」
「1億の首?何のことだ?」
「やっぱり知らねェのか……。ん、何だあの大渦は?」
ルフィ達がモックタウンで出会った男、マーシャル・D・ティーチは不敵に笑う。
「麦わらのルフィ、1億ベリー!海賊狩りのゾロ、6千万ベリー!お前らの首にこれだけの懸賞金がかけられているんだよ!」
「何ィ!?あの糞マリモに6千万だと──!」
ルフィの懸賞金はアラバスタ王国の件で遂に億まで跳ね上がっていた。
「おい、俺の手配書はないのか!?」
「無ェ」
「本当の、本当にか!?」
「おお、無ェよ」
サンジが吠え、手配書を覗き込むウソップが一蹴する。
今回、麦わら海賊団で懸賞金がかけれられたのはルフィとゾロの二人のみ
戦闘員であるサンジとアキトには懸賞金は0であった。
「以外ね、アキトに懸賞金がかけられていないなんて……」
「おお、確かに」
ナミとウソップが怪訝な顔を浮かべる。
アキトの実力を考慮すれば懸賞金がかけられていても不思議ではない。
アキトは何と無しにこれまでの戦闘を回顧する。
自称、東の海の覇者、アーロン含める魚人海賊団の壊滅
B・WのオフィサーエージェントであるMr.5、Ms.バレンタインペアの撃破
自称、ドラム王国の国王、ワポル含め、その兄ムッシュールの殺害
B・WのボスであるMr.0、七武海クロコダイルとの戦闘
先程、血に沈めたサーキース含むべラミー一味の駆逐
予想以上に殺伐とした経歴だ。
海軍にこの血で濡れた戦歴が露見すれば、懸賞金が軽く億を超えてしまうような気がしてきた。
「まあ、懸賞金が0の方が色々と都合が良いし、傍でビビのことを安心して守ることが出来ると思えば……」
「そんなアキトさん……」
私のことを傍で守ってくれるなんて……
ビビは頬を染め、恥ずかし気に顔を手で隠す。
「こら、そこ!何ラブコメ繰り広げているの!?」
その状況に我慢ならないナミがアキトの服の襟を掴み、力の限りに揺らすに揺らす。
アキトの顔が揺れに、揺れる。
すみません、ちょっとくさいせリフを吐きました
許してください
今、首から鳴ってはいけない音が鳴っています
前方では荒れ狂う波の激流に流され、海王類が大海に沈んでいく。
あれほどの巨体を誇る生物が為す術無く流されていることから、途轍もない海流だ。
「やっぱり、空島なんて絵空事だったのよ!?」
「おいおい、ヤベェんじゃねーか!?」
「大丈夫だ、ナミ、ウソップ。例え、メリー号が沈んだとしても俺は生き続ける」
アキトは得意げな顔を浮かべる。
ジカジカの実の力を遣えばこの荒れ狂う激流から生還することが可能だ。
「いやいや、何言ってんの、アキト!?」
「全然、安心出来ないわよ!?」
「アキトだけ生き残るつもりか!?俺はそんな現実受け入れねェぞ!?」
涙を流し、絶叫したウソップとチョッパーが抱き付いてくる。
チョッパーが顔面に、ウソップが力の限り右腕に抱き付く。
ナミは上半身、ビビは見れば背後から背中に抱き付いていた。
力の限り抱きしめられているため少々、身体が軋む。
見ればロビンの能力によって生み出された手がアキトの左足を掴み、安全を確保していた。
ロビン、侮れない女性である。
こやつ、やりおるわ
「今更だが、空島が空にあるのかをアキトが事前に確認したら良かったんじゃないか?」
「幻想も糞も無ェじゃねーだろ、それじゃあ!」
夢も糞も無いウソップの一言にルフィが絶叫する。
「おいおい、もう落ちちまうな、俺達」
「いや、もう落ちてるわ」
「アキト、上舵一杯だ!」
「すまない、ウソップ。俺が抱えることが出来るのは1人だけなんだ」
「嘘付くんじゃねェ、アキト!」
「アキト、頼む!俺達、全員を抱え上げて跳んでくれよ──!」
「前が見えないんだが、チョッパー」
「さあ、ナミさん、俺の胸の中に!」
「もうアキトの胸の中に飛び込んでいるわよ!」
「何……だと……!?」
「さあ、上舵一杯ィ──!」
「お前ェは黙ってろ、ルフィ!」
遂に、大渦へとメリー号はその身を投げ出し、浮遊感がルフィ達を襲う。
皆の悲鳴を他所に、メリー号は底が見えない大海へと落ちていった。
「イヤー、落ちる──!」
「アキトさん──!」
「落ち、落ち……いや、落ちてねェ!?」
大渦が突如として消失し、静寂がその場を支配する。
先程までの波の荒れ様が噓のように消え、メリー号が静けさを取り戻した海に漂っていた。
「いや、違う……!」
「お前ェら、来るぞ……!」
「余所見すんな、小僧共!突き上げる海流に備えろ!」
突き上げる海流、天空へと突き上げる海流
メリー号が浮遊し、否、突き上げる海流の前兆だ。
ルフィ達は船上で走り回る。
「皆、船室に逃げ込むか、船体にしがみついて!私はアキトにしがみつくから!」
「おい、アキト、そこ変われ!いや、変わってください!」
「あん、何だ……!?」
海底より爆発的な勢いで海流が突き上がり、遂に突き上げる海流が天へと立ち昇った。
眼下では黒ひげ達の船が無残にもバラバラになっている。
メリー号は突き上げる海流の海流を突き進む。
驚くことにメリー号は上舵を切り、天へと途轍もない速度で突き進んでいた。
「嘘だろ!?メリー号が水柱を垂直に走っているぞ!」
「良いね、良いね、最高だねェ!どういう原理だァ!?」
「マジでお前ェは黙ってろ、ルフィ!」
「いや、驚くのはまだ早いぞ……」
「どうした、サンジ?」
「船体が浮き上がり始めてる……!」
「何ィィ──!?」
「アキト、お前が船を持ち上げるんだ!」
「ウソップ、お前は俺を過労死させたいのか?」
「いや、逆に出来るのか!?凄ェな!?」
ルフィ達の悲鳴を他所に、先程の海王類と突き上げる海流の犠牲者が落ちていく。
「帆をはるのよ、今すぐ!」
突き上げる海流とはただの水柱ではない。
空へと立ち昇る海流だ。
大海から吹き荒れる風は地熱と蒸気の爆発によって生じた上昇気流
「相手が風と海なら、私が必ず航海してみせる!」
「この船の"航海士"は誰!?」
ナミの指示を受け、メリー号は舵を切り、帆をはる。
上昇気流を背に受け、メリー号は突き進む。
そして遂に、メリー号の船体が水柱から離れ、絶体絶命の危機を迎えた。
「おい、ヤバイぞ!船が水から離れそうだ!」
「アキト、船を持ち上げろ!」
この土壇場で無茶言うな
「ナミ、何とかしろ──!?」
「ううん、いける……!」
ナミの言葉を皮切りにメリー号は空を飛んだ。
上昇気流と海流の流れをつかみ、何処までも飛んでいく。
「おやっさん!」
「ああ、ロマンじゃねェか……」
「凄ェ、船が飛んだ!」
「良かった……!」
「あの雲の向こうに"空島"があるのか!」
彼らの道を阻む者は何処にもいない。
メリー号は大気を飛翔し、ルフィ達を乗せ、"空島"へと飛び立っていった。
▽▲▽▲
積帝雲を越え、メリー号の翼が壊れながらも、メリー号は空へと突き進む。
呼吸が困難になる程の雲の密度
船の誰もが苦し気に、表情を曇らせる。
ただ一人、アキトを除いて
アキトの周囲は一種の不可侵エリアと化し、雲の中でも呼吸を可能としていた。
アキトの傍のナミとビビ、ウソップとチョッパーも同様だ。
そして遂に、メリー号は積帝雲を抜け、雲の上へと降り立った。
此処が"空島"
ルフィ達が夢見た空に浮かぶ島、"空島"だ。
辺り一面には雲が溢れ、神秘的な風景を作り出している。
「おやっさん……」
「ああ、間違いない。"空島"は実在したんだ」
クリケットさん達は感動の余り、咳き込むのも忘れ、"空島"を見渡している。
この"空島"に先祖である"うそつきノーランド"が見たとされる"黄金郷"が存在するのかもしれないのだ。
心が躍るのは仕方がなかった。
「おい、皆、見てみろよ!俺達は遂に辿り着いたぞ!」
甲板ではルフィの声が響いていた。
「"空の海"に!」
ルフィは歓喜する。
好奇心を隠し切れず、終始、辺りを見渡す。
「それではキャプテン・ウソップ、泳ぎまーす!」
復活したウソップが意気揚々と水着に着替え、"空の海"へと飛び込む。
「はい、ストップ」
「ほげ──っ!?」
だが、その試みはアキトに止められる。
ウソップはメリー号に顔面をぶつけ、情けない声を上げた。
「な、何すんだよ、アキト!?」
「忘れていないか、ウソップ?此処は雲の上、つまり海底そのものが存在していない可能性が高い」
メリー号は雲を突き抜けて"空の海"に辿り着いたのだ。
海底など存在していないだろう。
「空を飛べる俺ならまだしも、何の浮遊能力も持たないウソップがこの海に飛び込めば無残に死ぬだけだぞ」
空島からの転落自殺
大海にて汚い花火となり爆発四散と化すか、大地に衝突し血の池を作り出すか。
そのどちらかだ。
ウソップは自身の愚行に顔を青ざめ、甲板に倒れ込む。
どうやらショックで意識を飛ばしてしまったようだ。
ウソップがダウンした後も、航海は続く。
突如、上空から強襲してきた仮面の男の存在
大気に満ちる酸素濃度の影響により、戦闘能力が低下するルフィ達
ピンチに陥ったルフィ達の助太刀に参上した甲冑の老人、自称"空の騎士"
その後、だせぇペガサス、ピエールの主であるガン・フォールを見送り、ルフィ達は舵を切る。
雲の上を進み、メリー号は"HEAVEN'S GATE"へと辿り着いた。
「上層に行きたいのなら一人、10億エクストル払うことだね」
自称、"天国の門"から姿を現すはカメラを手に有した婆さん
珍妙な服装をしている。
「それに通らなくても良いよ……。私は門番でも、衛兵というわけでもないからね」
何とも意味深なことを言う婆さんだ
これでは"入国料"が今後の空島人生を左右していると言っている様なものだ。
恐らくこの場で"入国料"とやらを払わなければ罰せられることになるだろう。
ビビとロビンも事の重要性を理解していると見える。
「ナミさん、現状のウチの持ち金で払えるか?」
「無理ね。流石に入国料を支払う程、お金を持ってないわ」
「なら俺が払うしかないな」
入国料、一人10億エクストル
現状、クリケットさん達を含め、メリー号には12人が乗っている。
つまり、計120億エクストル
1万エクストルで1ベリー、つまり計120万ベリーだ。
「おい、お前ら。船長として言っておくが、お前達金の使い方粗過ぎるぞ」
ルフィの信じられない言葉を受け、ナミ達が一瞬固まり、ルフィをボコボコにする。
「誰のせいで金欠になっていると思ってるんだ、手前ェは!?」
「お前の食費のせいだぞ!」
「金欠な私達の状況を顧みて、アキトがお金を出そうとしてくれているんでしょうが!」
「それを分かってんのか!?」
「ご、ごべんなさい……!もう言いまぜん……!」
蹴られ、殴られ、踏みつぶされたルフィが懺悔する。
船長に対してのこの扱い、散々である。
「あの婆さんも払わなくてもいいって言ってるんだし、別にアキトが入国料を払う必要はないのよ?」
「良いのか?この場で入国料を払わなければ、不法入国になるぞ?」
先ず、間違いなく罰せられてしまうだろう。
不法入国とはそういうものだ。
先程、あの婆さんは写真を撮っていた。
あれは不法侵入者リストを作っていたに違いない。
「不法入国してしまうとどうなるんだ?」
「そうね、トナカイさん。仮に不法入国をしてしまった場合、まず間違いなく私達は捕縛されてしまうわね。その後は、運が悪ければ処刑ね」
「だから、いちいち例えが怖ェよ、ロビン!?」
「いちいちリアクションが大袈裟よ、長鼻君」
「そうだぞ、ウソップ」
平常運転のアキトとロビン
「でもやっぱり、気が合いそうね、私達。今、確信したわ」
やはりロビンもそう感じていたようだ。
アキトは精神年齢、ロビンは実年齢との関係で嚙み合っているのではないだろうか。
「あら、アキトは今、何を考えていたのかしら?」
「いやぁ、まあ。別に何も?」
顔が近い。
とてもロビンの顔が近い。
あと一歩踏み出せば、顔と顔がくっ付いてしまいそうだ。
怖い。
普通に怖い。
ロビンの顔は笑っているが、目は笑っていない。
「私の思い違いでなければ、アキトは何か失礼なことを考えていた気がするんだけど」
「いや、あの、恐らくロビンの思い違いではないかと……」
既に身体は両腕、両足、上半身、下半身の全てがハナハナの実の力で拘束されている。
何という早業であろうか。
斥力の力を放出すれば、容易に拘束を解くことは可能だが、今は駄目だ。
今、このタイミングで能力を使用すれば取り返しのつかないことをしてしまう。
アキトは唯一動かすことが出来る顔を動かし、ロビンの拘束から逃れようとしていた。
「モテモテじゃねェか、あの兄ちゃん」
「羨ましい限りだな、おやっさん」
「いや、あれは少し違うだろ」
クリケットさん達はアキトの身を案じながらも、上層に位置する空島に目が釘付けだ。
その後、ロビンに拘束されたアキトが全員分の入国料を支払い、天国の門を通り抜ける。
白海名物"特急エビ"がメリー号を軽々と持ち上げ、"空島"へと誘っていく。
次なる目的地、神の国"スカイピア"
ルフィ達を待つのは光か、それとも闇か
それは誰にも分からない。
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