空に星が輝く様に
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394部分:第二十九話 壊れてしまったものその十三
第二十九話 壊れてしまったものその十三
「だからそれも」
「何か冬みたいね」
「そう、冬は」
「冬は?」
「クリスマスがある」
椎名の目はもうそこに向かっていた。まさに先の先を見ていた。
「それも考えること」
「クリスマス。そうね」
「まさにカップルの為の時だから」
「じゃあ私もしっかりしないといけないわね」
「そういうこと。後ろには私がいるから」
椎名がだとだ。いるというのであった。
「それは安心して」
「うん、有り難う」
「そういうことだから」
こう話してだった。二人は港町を見ていた。そしてこれからのことを考えていた。そしてさらにであった。見るものを見ていた。
夜の中にだ。星達がある。それを見て椎名が呟いた。
「ねえつきぴー」
「星ね」
「そう、あれ」
椎名がその星を見上げながら月美に話してきた。月美も同じく夜空を見上げてそのうえでその星達を見ているのである。
「あの星は」
「オリオン座ね」
「そう、オリオンがあそこにいる」
「中学の時から見てるわよね」
月美はその星が三つ連なっている星座を見て話す。冷たい空に浮かび上がっているそれはまるで幻想の中にあるようであった。
「塾の帰りにいつも」
「見ていたね」
「そして今もね」
「私、子供の頃からだった」
「子供の頃からって?」
「星座見ていた」
そうだったというのである。
「それで天文部にも入った」
「そうだったの」
「とにかく星は好き」
椎名はまた言った。
「見ているだけで幸せ。けれど」
「けれど?」
「一人で見るより二人で見るともっといい」
そうだというのであった。
「するともっと幸せになれる」
「じゃあ今は」
「つきぴーと見られてもっろ幸せ」
「そう。有り難う」
「オリオンはね」
「ギリシア神話の英雄よね」
今度はその折音の話になっていた。ギリシア神話に残る英雄の一人だ。海神ポセイドンの息子の一人であり美貌と巨大な身体で知られている。
「恋をしたけれどそれは適わなかった」
「アルテミスとだったわね」
「お互いに好きだけれど結ばれなかった」
アルテミスの兄であるアポロンが二人の仲を邪魔したからだ。彼は策謀によってオリオンを死なせ妹神の愛を妨げたのである。
その策謀の種類は様々なことが言われている。だが彼が妹神とオリオンの仲を嫉妬しそうしたことは神話にある通りである。
「けれどつきぴーは」
「幸せになっていいのね」
「ならないと駄目」
こう言い切るのだった。
「ほら、お月様」
「あっ、あるわね」
「あれがアルテミス」
椎名が指差した夜空のところに白い満月があった。それは優しい光を放ってそこにあった。白く穏やかな光を放っていたのだ。
アルテミスは月の女神だ。そこからも話すのだった。
「そしてつきぴーも」
「月ね」
自分の名前にある。だから言えることだった。
「つまりは」
「そう、月の女神は幸せになれなかった」
「想っていても」
「それでオリオンをそこに置いた」
オリオン座は月のすぐ傍にあった。愛し合っていた二人は夜空の中で一緒になっていると。そう椎名は話をしているのだった。
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