レーヴァティン
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第六十五話 志摩の海賊その九
「そうして実際に確かめるか」
「牡蠣を食うてか」
「美味いうえに安く量も多い」
「一杯あるんやな」
「そうか、採れるってことは養殖してるんやな」
「よく養殖ものはどうとかいう奴がいるか」
「それがし達はそんなん言わんわ」
笑ってだ、耕平は幸正に答えた。
「一切な」
「そうか、ではな」
「今からやな」
「牡蠣を食いに行こう」
こう言ってだ、幸正は魚拓を取ってその鯉を川の中に戻してからだった。一行をその牡蠣が食える店に案内した。
牡蠣は実際に山の様にあった、その牡蠣達をだ。
一行は店員に殻から外してもらい生で食べはじめた、醤油と酢で食べるそれは実に美味い。その牡蠣を食べつつだ。
耕平は唸ってだ、こんなことを言った。
「確かに美味い牡蠣やな」
「そうだな」
幸正も耕平に食べつつ応える。
「我が言った通りだな」
「ああ、やっぱり牡蠣はな」
「生か」
「それが一番かもな」
「いえ、フライもいいので」
ここで言ってきたのは紅葉だった。
「そちらも捨て難いかと」
「ああ、牡蠣フライな」
「あとバター焼きや天婦羅も」
「その二つもええな」
「そうですね」
「そうや、牡蠣はどれもや」
まさにとだ、耕平は牡蠣を食べつつ紅葉に答えた。
「めっちゃ美味いわ」
「そうですね」
「そうした料理も作ってもらうか」
幸正は二人の言葉を受けて言った。
「そうするか」
「フライ作られますか」
「この店でもな」
「バター焼きや天婦羅も」
「どれも出来る」
「そういえば」
ここでだ、紅葉は店の壁にある品書きを見た、日本の昔の居酒屋の趣のその店の品書きの文字も日本のものだ。
「色々書いていますね」
「フライもバター焼きもあるな」
「確かに」
「ではだ」
「そうした料理もですね」
「注文しよう」
生牡蠣を食べるだけでなくというのだ。
「既に酒は注文しているしな」
「この般若湯も」
謙二は僧侶なので酒をそう呼んでいる、この辺り戒律の関係でそうなることだ。
「美味しいですね」
「牡蠣によく合うな」
「はい」
実際にとだ、謙二は幸正に飲みつつ答えた。
「見事な清酒です」
「これがこの店の酒だ」
「海いえ水の幸に合う」
「そうした酒なんだよ」
「あえて選んだのですね」
「ああ、この酒だって店の親父がな」
「よい選び方です」
般若湯を飲みつつ言う謙二だった。
「これは」
「そうだよな」
「はい」
「じゃあ飲んでな」
「そのうえで」
「出発するか」
幸正は笑わないまま述べた。
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