真田十勇士
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巻ノ百四十八 適わなかった夢その九
「何の問題もありませぬぞ」
「深刻に暗く考えるなぞ我等はしませぬ」
筧もあえてこう言った。
「勝って帰るまでです」
「では殿、これより」
最後に言ったのは海野だった。
「駿府に向かいますな」
「そうする、そして駿府に入る時はな」
この時のことも話した幸村だった。
「夜としたい」
「夜ですか」
「その時にですか」
「駿府に着いて城に攻め込む」
「そうしますか」
「うむ、その時にこうも考えておる」
幸村は忍者としてこうも話した。
「空からむささびの術を使うか」
「むささびの術、あの術か」
その術を聞いてだ、後藤は思わず言った。
「忍の大きな布を使って空を飛ぶ」
「はい、あの術や大凧の術はです」
「貴殿達は使えるか」
「そうなのです」
こう後藤に答えた幸村だった。
「それでと思いました、使える者はそうしてです」
「空から城に入り込むか」
「夜に」
「そうしたことも考えておるか」
「この場合大凧の術からさらにです」
それでそれで一旦空に上がってというのだ。
「そしてです」
「大凧からじゃな」
「むささびの術を使って」
そしてというのだ。
「城に入ろうかともです」
「ううむ、また独特の考えじゃな」
「はい、どうでしょうか」
「わしは忍術は使えぬからな」
後藤は幸村にどうかという顔で答えた。
「だからな」
「こうしたことはですか」
「よく言えぬ、しかしな」
「こうして城に入れば」
「うむ」
まさにというのだ。
「面白いやもな」
「武士には武士の城の入り方があり」
「忍には忍のじゃな」
「ですから」
それ故にというのだ。
「今の様に考えてもいます」
「左様か」
「はい、それがしと十勇士達が入り」
そしてというのだ。
「その術で、そして」
「動きを合わせてじゃな」
「後藤殿と長曾我部殿、明石殿はです」
「普通にか」
「城に入るべきかと」
「空と陸からか」
「若しくは堀から」
水堀、そこをというのだ。
「渡り」
「堀を渡るのは出来る」
後藤は幸村にあっさりと答えた。
「それはな」
「出来ますか」
「うむ、堀を渡って城壁や石垣を渡るのもな」
そうしたこともというのだ。
「得意じゃ」
「わしもじゃ」
「それがしもです」
長曾我部と明石も言ってきた。
「それ位出来まする」
「普通にな」
「無論それがしもです」
大助も言ってきた。
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